新型コロナウイルスの感染が世界規模で拡大するいま、「パニック」という言葉をよく聞く。
国内ではマスクが入手困難なレアアイテムになって、それをめぐっての殴り合いが起きたし、海外に目を向けると、チュニジアでは予防にニンニクが効くというデマが広り、「パニック買い」が起きてニンニク価格が急上昇している。
いはでは「コロナパニック」という言葉があって、そのせいでハリウッドでは映画の公開延期や撮影中止が相次いで関係者が頭をかかえているとか。
そうなると一方で、沈静化の動きもでてくる。
例えばテスラのCEOを務めるイーロン・マスクさんがツイッターで「コロナウイルスによるパニックは、バカげている」とメッセージを投稿すると、共感が殺到してすぐに200万件の「いいね」が集まった。
そういえば女優の石田ゆり子さんもインスタグラムで「報道の皆さんマスコミの皆さん みずから国民をパニックにしないでほしいと思うしこれはやはり日本という国の全体の課題なのでしょうか」を発信して共感や関心を集めている。
ここでボクも人々の琴線に触れる深いメッセージを表明するのもやぶさかではないけど、その才能を披露するのは別に機会にしようとおもう。
この記事では豆知識として、パニックという言葉の語源について書いていこう。
こういうのを「不思議ちゃん」というのかもしれないけど、ちょっと変わった発想をする女の子が大学時代にいた。
例えば猫が路上に座っていて、顔を上げて宙の一点を見つめている様子を見ると、「あの子にはわたしたち人間には見えないものが見えている。きっと死霊かなにか」と言って特異空間をつくってしまう。
京都だったからそういう発想が出てきたかもしれないけど、とにかく変わった見方や理解をする女子だった。
動物の習性や考え方は人間の理解を超えることがある。
ヤギなどの家畜は突然、いっせいに暴れだしたり走り出したりすることがある。
ボクは見たことないからよく分からないけど、とにかく実際そういうことが起こるという。
もし多くの動物が何の前触れもなく半狂乱状態になるのを見たら、人々はそれをどう思ったか?
古代ギリシャでは、この現象をヤギの角と脚をもった半獣神「パン(パーン)」のしわざと考えられていた。
左側がパン
ギリシャ神話にでてくる牧羊神のパンが家畜の心に働きかけることで集団暴走がはじまる。
そういう考え方が「パニック」(panic)の語源となった。
毎日新聞のコラム「余禄」(2020年3月14日)
「パニック」とは、このパンが出す恐ろしい声でもたらされる人間や家畜の群れの狂乱をいう。昔の人々は突然の家畜の暴走をパンのしわざと見たらしい
ゼウスはじめオリンポスの神々が…
いまでは人間の恐慌状態を「パニック」というけど、これには心拍数120を超えるといった客観的な基準もある。
人は理解できない現象には本能的な不安や恐怖を感じるから、古代ギリシャ人たちは突然の家畜の暴走をパンの出す恐ろしい声のせいと考えたのだろう。
現代では病気の原因はウイルスとわかっているけど、中世のヨーロッパでペストが流行したとき、パニック状態におちいった人々は関係ないユダヤ人を虐殺する蛮行をおこなった。
正しく怖れるってやっぱり大事ですね。
ひょっとしてと思って調べてみたけど、パンデミック(世界流行)やパンデモニウム(伏魔殿)のパンは牧羊神のパンとは違った。
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世界で日本とインドだけが行うこと・原爆犠牲者への黙とう~平和について①~
>ひょっとしてと思って調べてみたけど、パンデミック(世界流行)やパンデモニウム(伏魔殿)のパンは牧羊神のパンとは違った。
なるほど。panic だけがギリシャ神話の半獣神パンに由来する単語でしたか。
その他の pandemic や pandemonium の pan は「凡」という意味なんですね。ちなみに、pan-demic の dem は「民衆」を表すdemoに由来、pan-demonium の demon はそのまま「悪魔」の意味です。
そう言えば、Pan Pacific という名前の国際ホテルもあったな。「凡太平洋」国際ホテルだなんて、シンガポールに相応しい名前だなぁ。あと、テニスの伊達公子が活躍していたトーナメントにもその名前(Pan Pacific Open)が使われていましたっけ。Pan America という名前の航空会社はもう倒産してしまいました。
なるほど。
demoniumはdemonからでしたか。
いずれ記事で書くつもりですが、頭に角のある悪魔のモデルは半獣神のパンです。