日本で夏のスタミナ料理と言えばウナギ。
本格的な暑さをむかえる前の、土用の丑の日にウナギを食べるのが日本人のお約束。
韓国にもこれと似ようような初伏(しょふく)という日があって、このときは伝統的に犬肉を食べることが多い。
でも最近では「野蛮だ!」と反対する人も増えてきて、この食文化は消えつつある。
くわしいことはこの記事を。
でも、変わらないものもある。
日本語ペラペラの韓国人に、夏バテ防止の韓国料理についてたずねたらこんな返事が来た。
「韓国ではサムゲタンを食べます。多分、今日はサムゲタン屋さんはお客さんでいっぱいだと思います^_^」
そうだった。
韓国の夏のスタミナ料理の代表格に「サムゲタン(参鶏湯)」があったっけ。
2020年のこの日(7月15日)は初伏(7月16日)の前日で、一年の中でもピークの時期だったから韓国のサムゲタン屋は満員御礼だったのだろう。
最近では日本でも有名なこのサムゲタンは読んで字のごとく、鶏が丸ごとスープ(湯)に入っている。
「湯」は中国語や韓国語では「スープ」の意味。
日本でもラーメンの白いスープを白湯(パイタン)と呼びますね。
ネタかガチかわからないけど、中国人が日本の温泉旅館で「男湯」「女湯」を見てビックリという話を聞いたことがある。
ちなみに台湾(台南)で夏のパワー・フードといえば「牛肉湯」が有名だ。
サムゲタン(参鶏湯)の「参」は高麗人参のことで、健康に良い薬膳料理の意味を強調しているらしい。
1955年ごろ鷄蔘湯(ケサムタン)と呼ばれるようになったが、その後1960年代に入り、高麗人参の効能を強調するために蔘鷄湯(サムゲタン)とされた。
見てのとおり、サムゲタンはホカホカを越えてアツアツだ。
以前、アメリカ人に夏の食べ物を聞いたら「特にない。アイスクリームかな」と答え、イギリス人は「それとレモネードだね」と言う。
暑い夏には冷たいものがいいという発想は分かりやすいけど、韓国ではサムゲタンのような、日本でいうと鍋のような温かい料理を食べる伝統がある。
*ボクはサムゲタンを冬の料理とカン違いしていた。
先ほどの英米人のように、”冷”によって暑さを打ち払うという考え方に対して、韓国には”熱”によって暑さを打ち払うという発想があってそれを「以熱治熱」と言う。
これは「熱をもって熱を治める」という考え方で、熱さでもって暑気払いをし、夏バテを予防するということ。
薬効作用のある参鶏湯は、スタミナや生気を得るにはぴったりの食べ物。
中国語には「以夷制夷」 (いいせいい)という言葉がある。(反対から読んでも同じ!)
夷(外国)を夷(外国)にぶつけて、自分は楽して安全を図るというとても都合のいい言葉。
*知人の韓国人は、「中国は北朝鮮と韓国を争わせて、自分の地位を守ろうとしている」と話していた。
「以熱治熱」も中国語由来の言葉かと思ったけど、調べてみると、どうも中国人が使っている様子がない。韓国生まれの言葉かもしれぬ。
夏になると韓国人が熱いサムゲタンを食べる「以熱治熱」の理由については、今までにこんな話を聞いた。
・汗と共に気も失われがちだから、スタミナ補給をする必要がある。
・汗をたくさんかくと、スカッとするから気持ちがいい。(サウナみたいな)
・汗と一緒に体内の熱も出ていくと内臓が冷えるから、体内を温める必要がある。
韓国人に聞いたら、「全部正解」と答えると思う。
「以熱治熱」の言葉は知っていても、正確な意味や由来までは知らない人がほとんどだろう。
暑いときには熱によって熱を治すという「以熱治熱」、熱をもって暑さを制するという「以熱制暑」(いま作った!)に近い考え方は東南アジアにもある。
タイ人やカンボジア人から、暑いときには、スパイスの効いた辛いものを食べると体にいいという話を聞いたことがある。
発想としては「以熱治熱」と同じではないかと思う。そのせいかタイでは、気温30度以上のときでもコンビニでおでんが売っていた。
ちなみに知人のタイ人のおススメはグリーンカレー。
「夏にはカレー」は日本だけじゃなかった。
ということで韓国の「以熱治熱」でも、英米の「以冷治熱」でも好きな方を選んで夏の暑さを乗り越えましょー。
おまけ
この記事を書いているときに、韓国人がスッポンを食べない理由を知ったからそれも紹介しよう。
韓国人はサムゲタンのような“強壮食”が大好きだけど、日本ではおなじみのスッポンはその例外。
韓国通のジャーナリスト黒田勝弘氏が、「(韓国人は)野生動物ならヘビでもカエルでも「体にいい」とか「精がつく」といって何でも食ってしまうのに、不思議とカメやスッポンは食わないのだ。」と疑問に思って、スッポン料理がない理由をたずねてみたところ、
産経新聞のコラム「ソウルからヨボセヨ」(2017.8.26)
答えは「あれは霊的動物ということで食ってはいけないから」だった。つまりカメは長寿の象徴だし、神の使い、自然の守り神のような位置付けになっているからなんだそうな。
「精がつく」大好きな韓国人がスッポンを食わないわけは
「霊的動物」という考え方は日本人とは違う。
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>答えは「あれは霊的動物ということで食ってはいけないから」だった。つまりカメは長寿の象徴だし、神の使い、自然の守り神のような位置付けになっているからなんだそうな。
つまり、インド人(ヒンディー教徒)にとっての牛みたいなもんですかね。
そーいや、日本には「神様の使いだから」食べてはいけないという動物はいないなぁ。
どっちかって言うと、特定の動物・植物を区別することなく、命あるものすべてを尊重して「感謝しながら」何でも食べるのが日本人ですかね。
(命を)いただきます。
個人的には、めでたい生き物の鶴を食べるような感覚かな?と思います。
「霊的」の意味がよく分かりませんが。
犬は人類最古の友という考えが欧米では一般的と思われますが・・・亀のほうが偉いのですね。
盲導犬、警察犬、介助犬、災害救助犬、その他で犬は人に貢献している生き物ですが・・・。