男と男がぶつかって、取っ組み合うケンカのようなことは古代から地球の各地で人類がしてきた。
その起源なんてわかりゃしないけど、日本の相撲の始まりは、8世紀の古事記や日本書紀の記された神話にある。
闘いが盛り上がるには、ケンシロウとラオウのようなほぼ互角の力を持つライバルが必要だ。強敵と書いて「とも」と読むような。
日本神話にもそんな話があって、天皇立ち合いのもと、当時の日本で最強レベルにいた当麻蹴速(たいまのけはや)と野見宿禰(のみのすくね)の2人が「捔力」(すまひ)で対戦することとなる。
結果はわりと残酷で、宿祢が蹴速の腰を踏み折って勝利した。
負けた蹴速はその場で死亡し、所有していた土地も没収されて宿禰のものになったという。
死力を尽くして闘ったあとは、頼もしい味方となる。そんな少年ジャンプの発想はこの時代の日本ではまだなかったのだ。
「ケハヤとスクネ、因縁のバトル!」ならNARUTOでありそう。
まあとにかく、これが日本相撲の起源とされる宿禰と蹶速の伝説の勝負ですよ。
相撲をとる当麻蹴速(たいまのけはや)と野見宿禰(のみのすくね)
後ろにいるのがたぶん天皇
奈良・平安時代には宮中行事として、まいとし7月ごろに相撲節会が行われるようになった。
形式は神話と同じく天覧相撲だ。
五穀豊穣を祈って神社で祭事として行われる相撲(神事相撲)もこのころに生まれ、令和になった現代の日本でもそれを見ることができる。
日本の民族宗教である神道が深くかかわっていることが相撲の大きな特徴で、ただのスポーツや格闘技とは重みが違う。
平安時代の相撲のようす
源頼朝が幕府を開いて、武士が支配する時代になっても変わらないもの変わらない。
ただ平安時代の貴族の時代とちがって、このころ相撲は武士の戦闘訓練を目的として行われていた。
織田信長は大の相撲ファンで全国から力士を集めて下のような相撲大会を開催し、勝ち抜いた猛者を家臣に抜擢した。
ケハヤとスクネの死闘からはじまり、平安時代の宮中行事、鎌倉・戦国時代の戦闘訓練となった相撲は、江戸時代になると民衆のものとなる。
以上4枚の画像は、日本相撲協会のホームページ「相撲の歴史」のキャプチャー
この時代からプロとしての力士が登場し、人気も高まって相撲は歌舞伎と並ぶ庶民の娯楽となっていく。
丸い土俵に四本の柱に屋根と、いまの日本相撲と同じ舞台が出来上がったのもこのころだ。
毎日新聞のコラム「余禄」(2020年7月21日)
江戸前期の幕府の禁令を機に、柱を立てて縄を張り、やがて丸い土俵がつくられたという。観客と分離された土俵は聖なる場所となった
相撲の土俵の起源は…
現在の相撲の原点は江戸にある。
ではここでクエスチョン。
コラムのタイトルになっている、土俵の起源とは一体なんだったしょう?
ヒントは〇。
現代でも大人がケンカをしていれば自然と野次馬が集まって、一定の距離を保って人の輪ができる。
相撲も以前は見物人の輪の中で行われていて、それが土俵の起源になったと言われる。
この人垣は「人方屋(ひとかたや)」と呼ばれていて、一方の力士が相手をその中に押し込んだり、投げ込んだりすると勝ちとなった。
でもそうなると、好きな力士のためにちょっかいを出す人が出るなどしていざこざが絶えなかった。
そこで、「江戸前期の幕府の禁令を機に」という毎日新聞のコラムにつながり、四方に柱を立てて縄で丸い土俵がつくられていったという。
これ以上の詳しい説明をここを見られよ。
『相撲伝書』によると鎌倉時代に見物人が直径7 – 9メートル(4 – 5間)の輪を作り、これを「人方屋」と称したという。これが土俵の起源である。
当麻蹴速(たいまのけはや)と野見宿禰(のみのすくね)の捔力から、思えば遠くにきたもんだ。
よかったら、こちらもどうですか?
インド人の発想で相撲の映画を作ったら、日本人も興味津々だった
>「江戸前期の幕府の禁令を機に」という毎日新聞のコラムにつながり、四方に柱を立てて縄で丸い土俵がつくられていったという。
この書き方だと、四方の柱・屋根と丸い土俵がほぼ同時に出来上がったように聞こえるのですが。
でも実際にはそうじゃないですね。その証拠は「徳俵」にあります。
丸い土俵が完全な円ではなくて、四方向で少しだけ切れていて、より外側から「徳俵」をその切れた箇所へ重ねるような配置がなされています。あれはそもそも、屋外に土俵を設けた時、雨が降って土俵の中に雨水が溜まるのを防ぐため、水を掃き出すために設けた「排水口」だったのです。
つまり、柱・屋根ができる前から丸い土俵は存在していた、少なくとも、屋根のない場所であっても丸い土俵が使われることがあったということです。おそらく江戸や大阪以外の地方がそうだったのでしょう。
その通りです。
古代から江戸時代までの相撲の移り変わりを紹介したもので、細部をくわしく紹介すると膨大な文字数になるのでここは端折りました。
ただリンク先を見れば分かるようにはしていますよ。
それにこうして補足説明をしてくれる人もいますし。