日本語を学ぶ外国人にとって、悪魔のようにやっかいな敵は漢字。
中国人や台湾人など漢字圏を除けば、漢字にはどの外国人も苦戦・苦闘して、知人のアメリカ人はこの壁をブレイクスルーできずに日本語学習をあきらめてしまった。
そんなワケでこんなふうに、漢字を覚えるのに最も効果的な方法を聞く外国人はいつもいる。
日本語学校に通う外国人から話を聞くと、先生が漢字を教えるときに「木」「林」「森」を例にすることがよくあるらしい。
treeを基本にして、1本ずつ増えてwoodsとforestになる。
*さらに密林や樹海なんてのもあるけど。
日本なら小学1年生が学びそうなこの内容。
でもこれを知って、漢字の面白さや奥深さに関心を持つ外国人もいるのだ。
abcは表音文字だけど、表意文字の漢字にはそれぞれ意味がある。
それで知人のドイツ人は「鳥」と「島」の関係を知って感動し、この漢字が大好きになった。
くわしいことはこの記事を。
最近、外国人でかなり漢字にくわしい強者がSNS上の日本語学習グループに現れて、「女」と「姦」の漢字について説明しているのを発見した。
では日本人として、「姦しい」という言葉を正しく読んでもらおうか。ふっふっふ。
女が3つ集まった姦という漢字は「姦(かしま)しい」と読み、「やかましい、騒々しい、うるさい」といった意味になる。
この漢字についてその外国人はこう説明した。
Most kanjis, like 姦, were made in China and got imported to Japan. When 姦 came into Japan, it brought its meaning with it: bad & twisted heart, evil, to violate, sexually immoral behavior, traitor of a country, cunning, selfish, disloyal. Many bad meanings, but it did not mean “noisy from talking”.
「姦」などのほとんどの漢字は中国でつくられて日本へ伝わった。
「姦」が日本へ来たとき、その意味はこんなものだった。
悪い&ゆがんだ心、邪悪、法を破る(女性に性的暴行をする?)、性的に不道徳な振る舞い、国の裏切り者、狡猾、利己的、不忠実。
多くの悪い意味があるけど、姦には「話し声がやかましい」という意味はなかった。
たしかにこの漢字がつく言葉には、姦悪・姦淫・姦計・姦賊・姦通・姦佞・姦夫・強姦・大姦などなど悪い意味ばかりだ。
で、この外国人が言いたいことが分かりますか?
中国語の「姦」にはネガティブな意味ばかりだったけど、日本人はこれに「姦しい:やかましい」という新しい意味を与えたのだ。
まあこれも良いとは言えないけど、でも他の意味よりはましだろう。
上の外国人は「Number of kanjis acquired a new meaning in Japan, and 姦 is one of them.」(日本でいくつもの漢字が新しい意味を獲得した。姦もそのひとつ)と言い、その理由をこう推測する。
My guess is that Japanese were being playful & humorous, and when they saw the kanji 姦, they thought “Three women. What do women do when they get together? They start chatting and gossiping endlessly. So, let’s make this kanji mean ‘noisy’ (from talking).”
日本人には遊び心とユーモアがあるから、「姦」の漢字を見たときにこう思ったのだろう。
「三人の女か。女性が集まるとどうなる?彼女らはおしゃべりを始めて、いつまでもうわさ話をする。よし!ならこの漢字を「やかましい」という意味にしよう。」
いつの時代か分からないけど、日本人がこうやって、中国語にはなかった新しい意味をこの漢字につけたのだろうとこの外国人は考えた。
たしかに限りなくそれっぽい。
「かしましい」は訓読みで、日本語には「女三人寄れば姦し」という言葉もある。
「うるさい」の意味は日本人があとから加えたものだろう。
中国人に聞いたら、「This character “姦” is not “noisy” in Chinese but means rape.」と返事がきたし、別の中国人もこう言う。
「中国語だと、主に二つの意味があって、一つ目はずるい、ずる賢い、姦商(ずる賢い商人のこと。)という言葉よく使われたりします。」
*もうひとつの意味はいまの日本でよく使われる意味、性犯罪のこと。
さらにこの中国人は、「うるさい」の意味がどこからきたのか分からないと首をひねっている。
「That Chinese character means rape. I don’t know where the “noisy” meaning originates from…」
これはもうビンゴ。
やっぱり中国語でこの漢字には「うるさい」の意味はないらしい。
ちなみに「姦しい」は男女の性別に関係なく、「うるせえ!」と思ったらどんな相手にも使うことができる。
それにしても、あの外人さんは一体何者?
では最後に、「女が3人集まれば姦しい」ということを知った外国人の反応を紹介しよう。
「よく分かる!」「気に入った!」という好意的な声がほとんど。
・very true😆😂🤣
・The truth can’t be sexist, I love it
・Whether true or not – will never forget this kanji now 🙂 THANKS !!!
・Makes sense
・I’m a woman and it could be true 😃
・Well I think today it has not changed 😉🙏,BUT it’s not a bad thing ,infact very intriguing 😁🇬🇧🙏🇯🇵
・Makes so much sense
・It would be sexist to think of it that way in today’s world.
面白かったのはこの漢字を初めて見たアメリカ人で、「グーグル翻訳したら、とんでもない意味がでてきた!」と驚いてその画面を投稿した。
いまの日本で「姦」はこの意味で使われることが多いけど、中国語にはなかった日本人の発想も大事にしていきたいですね。
こちらもどうぞ。
日本よ、これが韓国人だ!ハングル文字への誇りや愛情。ハングルの日から。
「木と林と森」や「女と姦と嬲」なんかの例も、まあ、面白さで興味を引くためであればそれなりに効果はあるのでしょうが。そこだけに頼りすぎるのもちょっと。そこで踏みとどまらずに。
やはり伝統的な漢字の成立経緯である「もともと象形文字(甲骨文字)から変化してできた」「偏と旁、冠、足、たれ、にょう、などの構成要素」「日本人が作った漢字(和製漢字)」「福沢諭吉が作った近代和製漢語」「ひらがな・カタカナへの変化」などをちゃんと教えてほしいですね。
表音文字と表意文字の両方が使えるということは、文章の速読性を向上させ、表現を短縮するのに有効です。
特に、新聞見出しとか、チラシとか、パワーポイント資料とか作ってみると、英語(表音文字)の不便さに気づかされます。
日本語学校もいろいろ工夫して教えていると思いますよ。