今回の記事は、前回書いたアメリカの「コロンブス・デー」の続きのようなもので、「アメリカ大陸に初めて到達(発見)したヨーロッパ人は一体だれか?」という内容ですよ。
ヤフーで検索すると、「コロンブス」や「アメリゴ」という人名はでてくるけど「本当の正解」がない。
日本ではまだあまり知られていないということだから、記事にする価値はあると思う。
アメリゴというのはイタリアの探検家・アメリゴ・ヴェスプッチ(1454年 – 1512年)のことで、この人もコロンブスと同じようにアメリカ大陸への航海を成功させた。
「アメリカ」という地名はこの人物に由来する。
コロンブスは死ぬまでそこを新大陸ではなく、インドと信じていた。
ヨーロッパの古代からの伝統的世界観、アジア・アフリカ・ヨーロッパからなる三大陸世界観を覆すこの主張は当時最先端の知識人層である人文主義者たちにはセンセーショナルに受け入れられた
さていきなりの結論だけど、アメリカ大陸に初めて上陸したヨーロッパ人は、アイスランドのヴァイキングでレイフ・エリクソン(970年頃 – 1020年頃)という人。
彼とヴァイキングの一行がコロンブスの約500年ほど前に、アメリカ大陸を発見した。
いまのカナダ東部にたどり着いたレイフ
レイフがアメリカ大陸に到達したことは、中世アイスランドで成立したサガという叙事詩に書いてある。
サガはノルウェーやアイスランドで起きた出来事をテーマにしたものが多いのだけど、それよりなにより、日本では『グイン・サーガ』、『ニュームーン/トワイライト・サーガ』、『ゼノサーガシリーズ』といったファンタジー小説やゲームなんかで有名。
ちなみに『ロマンシング サ・ガ』はこのサガとは別もので、間違えられないようタイトルにあえて黒点を入れたらしい。
レイフのアメリカ大陸発見については、「赤毛のエイリークのサガ」にその記述がある。
ある日、エイリークの長男、レイフ・エリクソンはグリーンランドからノルウェーへ向かう途中でヘブリディーズ諸島に流され、魔女ソールグンナと仲むつまじくなり子をもうける。
魔女と結婚して子どもを生んだというとファンタジー小説だけど、サガには事実と空想が入り混じっているからこうなる。
ただ史実でも、レイフがヘブリディーズ諸島で住民との間に子供をつくったといわれている。
レイフの偉業については、カナダ東部にあるニューファンドランド島で「ランス・オ・メドー」という遺跡が発見されたことで歴史の定説となった。
バイキングが持ち込んだとされる鉄釘をイングスタッド夫妻が発見し、これによりコロンブスの「新大陸発見(西洋人視点)」説は覆った。
ランス・オ・メドーはアメリカ大陸で唯一、ヴァイキングの入植地として確認されている遺跡だ。
この遺跡とサガの記述を照らし合わせた結果、レイフ・エリクソンがこの地を踏んだことはまず間違いないとされ、現在では彼がアメリカ大陸にきた最初のヨーロッパ人になっている。
このへんのことは英語版ウィキペディアにくわしい説明がある。
He is thought to have been the first known European to have set foot on continental North America (excluding Greenland)
「アメリカ大陸発見」を表す切手
上がレイフ・エリクソンで、下がクリストファー・コロンブス
コロンブスのような野蛮な人間ではなかったから、歴史にくわしい知人のアメリカ人はレイフのほうが好き。
行く先々の島々で、コロンブスの軍隊は、海岸部で無差別殺戮を繰り返した。まるでスポーツのように、動物も鳥もインディアンも、彼らは見つけたすべてを略奪し破壊した。
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「saga(サーガ)」という単語ですが、最近一番よく使われているのは、映画のシリーズ名じゃないですかね。しかも、なぜだか、もっぱら三部作の場合にのみ使われるように思います。「ゴッドファーザー・サーガ」「スターウォーズ・サーガ」「ターミネーター・サーガ」のように。
私がこの単語を始めてみたのは、子供の頃に読んだSF小説でした。ハリィ・ハリスン作「テクニカラー・タイムマシン」、ポール・アンダースン「タイム・パトロール」の2作です。どちらも、赤毛のエリクスンによるアメリカ大陸(ヴィンランド)への移住のことを扱っています。大人向けだったけど、むちゃくちゃ面白かった。
「サガの伝承」って言うと、「佐賀の伝承?」「性の伝承?」みたいですね。
海外映画でもよく使われていますね。
そのSF小説は知りませんでした。日本でもそんな小説があったのですか。