新しい年を迎えた日本人のする伝統行事といえば、初詣と初日の出を見ることがツートップ。
ただコロナ禍の今年は例年とは様子が違って、ネット掲示板に「東京にいるけど、初日の出スポット教えてくれ」というお願いに対しては厳しい意見も多い。
・家に居ろ
・日の出桟橋付近でレインボーブリッジ越しに見る日の出が良いよ
・馬鹿は風邪引かないからって
ウイルス撒き散らしに外出るなよ
・都庁からのLIVE配信でも観てろ
・上空1万メートル
・今年は見るな
来年出直せ
それでもこれは日本人には大事な正月文化だから、初日の出を見に行った人は全国にたくさんいた。
「Goに入ってはGoに従え」で知人のアメリカ人も初日の出をビーチに行って、そこで見た初日の出の写真とこんなメッセージをSNSに投稿した。
Happy New Year 2021 from Sunrising country Japan !!
Hope this year will be COVID-19 less year .
そう。
日本は聖徳太子の時代も今も「日出ずる国」(Sunrising country Japan)なのだ。
江戸時代の日本人は「初物」が大好きで、その年に初めてとれるカツオやナスには高い値がついた。
初物に人気があるのは令和のいまも同じだから、日本人はメデタイ初日の出を見に行くのだろう。
海外でも新年に初日の出を見る風習はあるんだろうか?
そう思ってイギリス人に聞くと、「ない」と即答された。
アメリカ人は「聞いたことないし普通はしない。でもネイティブアメリカンなら、そういう文化をもっている人たちもいるかもしれない」とのこと。
ニュージーランド人の話では、世界で最初に日の出を見ることができる国はニュージーランドだから、見に行く人は多いが、それを“文化”と言えるかは微妙らしい。
中国人は、春節(旧正月)のときには初日の出を見に行く人もいると言う。でも太陽を神と考えているわけではないから、これもやっぱりただの観光という。
20年ほど前にエジプトへ行ったとき、キリスト教に関係する山でご来光を見ることが欧米人に人気だったんで、ボクもそれに参加したことがある。
でもそのとき聞いた欧米人の意見では、それは景色を見て楽しむことが目的で信仰は関係ない。
シナイ半島のご来光
日本に興味のある外国人が集まるネットグループで、初日の出についてきいてみるとこんな返事がきた。
カナダ人:Personally I haven’t. However many here in Canada immigrated from many countries. So we have every culture/tradition you can think of.
自分はしない。
でもカナダにはたくさんの国からの移民がいるから、世界中の文化や伝統がある。
つまり、初日の出を見る人やグループもいるかもしれない。
オーストリア人:Here in Austria we dont do it.
アメリカ人:In the US we enjoy and appreciate sunrises! The sun is most commonly seen not as a god, but as a creation of God the Creator of the universe
アメリカ人も日の出を楽しむし、感謝している。が、それは太陽を神と見るのではなくて、全宇宙の創造者である神がつくり出した物として見るらしい。
たしかにそれがキリスト教の発想だ。
チリ人:Actually it’s a goddess, Amaterasu no kami.
韓国人:The same here in Korea. It has been widely known popular ceremony on the very first day of new year that most people get together on a popular sun-rise scenic places to pray to their respective gods for happiness, well-being , good health and what not. We koreans call it ” Haedoji “, meaning sun-rise.
韓国でも初日の出を見に行く風習がある。
新年の日には多くの人が日の出の名所に集まって、神に幸せや健康などを祈ることが広く知られている。
韓国人はこれを「日の出」という意味の「Haedoji」と呼ぶ。
カナダ人:I love your custom. Happy new year from Québec Canada 🇨🇦
ブルガリア人:In Bulgaria we have this but celebrate New year on the shortest day of the year. Our ancient culture is directly linked with the sun and it’s cycles.
ブルガリアでも昼間の時間が1年で最も短い日に、新年を祝うために日の出を見るらしい。
彼らの古代文化は、太陽とそのサイクルに直接リンクしているという。
*ネットで探したけれど、ブルガリアで初日の出を見る文化は見つからず。
メキシコ人:if you do it, you should head to Chichen Itzá’s Castle on one of those equinoxes and contemplate the descending of Kukulkan deity.
もしあなたがそれをしたかったら、昼と夜がほぼ同じ長さになる日(日本でいう春分・秋分の日)に、チチェン遺跡でククルカンの神の降臨(日の出)を見るといい。
これはこれで興味深い話なんだが、正月の初日の出とは違う。
日本にいるトルコ人にたずねるとこう話す。
「トルコで新年に日の出を見ることはない。でも個人的にはアニメでそういう場面を見て、自分も初日の出を見てみたいと思った。それできょねん日本人の友達と海で日の出を見たけど、寒いし早く起きなきゃだし、一度で十分」
ネットを見ると日本に住んでいたギリシャ人もアニメやドラマの影響で、年が明けると日本人は初日の出を見るというイメージを持っている人が(ギリシャで?ヨーロッパで?)少なくないと書いている。
そのギリシャ人は『フルーツバスケット』や『のんのんびより』といったアニメで、初日の出のシーンを見て興味を持ったという。
アニメのレベルを超えて、日本の文化や歴史に知識のある外国人の中には、先ほどのチリ人のように神道の最高神で太陽神のアマテラスと初日の出を関係づけて考える人もいる。
英語版にはなかったけど、(たぶん)フランス語のウィキペディアには「Hatsuhinode」の項目があって、そこにはこんな説明がされている。
Selon le mythe fondateur du Japon, la déesse solaire Amaterasu est la divinité tutélaire du Japon dont les empereurs tirent leur essence divine. Par conséquent, en relation avec le shintoïsme, religion autochtone, le soleil est un astre très vénéré par les Japonais.
アマテラスは日本の建国神話に登場する重要な存在で、日本人は太陽(=アマテラス)をとても崇拝している、といったことが書いてあるようだ。
ただ日本の初日の出の風習は、元日の早朝に天皇が天地四方の神々を拝する儀式「四方拝」(しほうはい)が由来となっている。
だから、初日の出と太陽神アマテラスが直接結びついているのかは分からない。
それに新年の神さま(年神)は日の出といっしょにやって来るという考え方から、初日の出は年神の降臨を意味するという説もある。
でもとにかく今回調べた中では、海外で日本と同じように、初日の出を見に行く文化がありそうなのは韓国だけだ。
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>エジプト旅行に行ったとき、シナイ半島にあるキリスト教の聖地の山ではご来光を見ることが欧米人に人気で、ボクもそれに参加した。(改行)でも彼の意見は、それはただの観光で信仰は関係ない。
そうとも言えないのでは? エジプト文明の古代宗教では「太陽神ラー」が主神でしたから、その伝統も影響しているのではないかと。
>韓国人はこれを「日の出」という意味の「Haedoji」と呼ぶ。
>海外で日本と同じように初日の出を見に行く文化があるのは韓国だけ。
どう考えても、それはおそらく、日本併合時代に韓国へ持ち込まれた慣習でしょうね。
海外で太陽を神とする宗教は、意外とないですね。ゾロアスター教(拝火教)も主神は太陽というよりは、一般的な「炎」であるようだし。中東発の三大一神教はもちろん太陽ではないし。そもそも中東諸国を始め砂漠の広がる諸国では、強烈な太陽はむしろ「災いなすもの」として忌み嫌われているようです。
未だに昔の天照大神に繋がる太陽神信仰を残しているのは、もしかすると、世界中で日本だけなのかもしれないですね。
>エジプト文明の古代宗教では「太陽神ラー」が主神でしたから、その伝統も影響しているのではないかと。
ユダヤ教徒のモーゼが太陽神ラーの影響を受けていたら面白いですね。