【外国人の不思議】日本でイチゴはなぜ冬の果物なのか?

 

白には赤がよく似合う。
冬はイチゴのシーズンで一難去ってまた一難、正月太りのあとにはこんな甘い誘惑がやってくる。

 

 

でも海外では事情が違うらしい。
このまえスペイン人とトルコ人と話をしていると、イチゴは夏の果物なのに、日本では冬によく登場するから不思議に思ったと2人が言う。
「いやいや、イチゴといえば寒い冬でしょう」と思ったのだけど、2人の印象はその真逆で暑いときに食べるものだった。
だから日本に来てから、イチゴの季節に違和感をもったらしい。

そういえばむかしアメリカ人かイギリス人とイチゴ狩りに行ったとき、案内のおじさんから、「イチゴは主に冬の1月から5月にかけてとれます。だから、日本語でイチ・ゴと言われるようになったんです」と説明を受けて「へ~」と目からウロコが落ちた。
それでその後、何人もの外国人にそのマメ知識を得意げに教えていたところ、あるインドネシア人から「それ間違ってますよ」と指摘されて、調べてみたらたしかに彼が正しく、日本人としての自信をなくしたことがある。

イチゴの名称の由来はむかしの日本のことば(大和言葉)の「イチビコ」といわれていて、平安時代につくられた辞書『倭名類聚抄』には「ビ」が抜けた「以知古」ということばがある。
1月~5月だからイチゴになった、なんて出来過ぎた話だと思ったらつくり話だったでござる。

 

 

昨年末、ドイツ人と話をしていると「日本ではクリスマスに何を食べる?」と聞かれたから、フライドチキンとイチゴのショートケーキを食べる人が多いと答えると、ドイツ人の感覚では「なんか変だね」。

クリスマスは西洋由来の日本文化だから、ドイツ人がどう思うか知ったことではない。
クリスマスにフライドチキンという組み合わせが、外国人には不思議に見えることはもう何度も聞いた。
知人のアメリカ人は「一年の特別な日になんでファストフード?フライドチキンはおにぎりみたいなものに」と理解不能のようすだった。(でも、この文化を生み出したのは在日米国人といわれる)

そのドイツ人も同じことを思ったけれど、ほかにもケーキに使われているイチゴが引っ掛かった。
ドイツでイチゴは5月から7月ごろの夏の果物だったから、クリスマスにイチゴというのは場違いというか季節外れの印象を受けたらしい。

ひょっとしたら、フライドチキン以上に違和感があったかも。

 

 

いまの日本にあるイチゴ(上の写真)は江戸時代の末期、1830年ごろにオランダ人が持ってきたものだから割と新しい食べ物だ。
本格的に栽培されるようになったのは明治時代になってからで、日本でイチゴ栽培が広く行われるようになったのは第二次世界大戦の少しあと、1963年の農林水産統計表の品目にイチゴが初めて登載されたからそのころだろう。

いまでは日本人の生活に欠かせないこのイチゴ、本来は4月~6月の春から初夏にかけて収穫される果物だった。

なのになんで“自然に反して”、日本人はこれを冬に食べるようになったのか?

寒いほうが腐りにくいというメリットもあるのだけど、その大きな理由はなんといってもクリスマスだ。
12月24日と25日には日本中で「クリスマスケーキ祭り」がはじまるから、それに欠かせないイチゴの需要がこのころ急激に高まる。
生産者にとって消費者は大事なお客さんで、そのリクエストには真摯に応じる必要があるから、イチゴを収穫する時期もクリスマスに合わせるようになり、いまでは12月からがハイシーズンとなったのだ。

そしてその勢いで1月2月には、いろんな飲食店でイチゴ・フェアが開催されるのはさっき見た通り。
実際にこのフェアは日本人の受けが良くて、毎年店の売り上げアップに貢献しているという。

 

日本のイチゴ栽培では暖房機やビニールハウスを使ってあったか~い環境を提供して、イチゴに「あれ?いまって春?」とカン違いさせて冬に育つよう計算されている。
そのため夏は逆にイチゴの苗を暗い冷蔵庫に入れて、イチゴに「なんだ冬か」と錯覚させる。

「すべてはお客様のため」でいまではウィキペディアによると、日本でのイチゴの生産量、年間約20万トンのうち促成栽培で11月~4月までに生産されるのが95%で、5月~10月の生産量は5%だけ(1万トン以下)。

本来の旬である3~4月のイチゴは安いし甘い物も多いのだが、日本人の感覚だともうピークアウト。しだいに需要はなくなっていく。
でも、自然の法則にのっとって生産される海外では、日本で終わったころからイチゴの本格的なシーズンが始まる国が多い。
だからスペイン人やトルコ人やドイツ人のように、日本に来てみて疑問や違和感を感じるようになる。

 

 

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4 件のコメント

  • イチゴもメロンも他の果物もみなそうですが、日本ではビニールハウス暖房栽培などの方法により、何とかして「旬ではない季節外れに供給することを狙う」ものが多いのです。それは、他者との差別化を図ってできるだけ市場を拡大しようとしている農家の努力の賜物でもあります。
    昨今、競争相手は国内の他の農家だけでなく、日本から苗木や種を栽培して商品化して安値販売する外国農家もありますからね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。