住宅地にお墓!韓国人が日本で驚いた、陰陽・死生観の違い

 

日本語を学んでいた知人の韓国人女性が10年ほど前、ワーキングホリデーで東京へやって来た。
羽田空港に着いたあと、彼女が電車に揺られてアパートのある中野区へ向かっている途中、窓の外に目をやると、そこにはアニメや動画と違ったリアルな日本の景色が広がっていた。
すると突然、信じられないものが目に飛び込んできた。

それは墓地。
誰かとつるんでいることが好きな韓国人には「ぼっち」もさみしくて嫌なことだけど、こっちは死者が眠っている恐ろしいところで忌避感がハンパない。
韓国人の彼女の感覚だと、みんなが生活している住宅地の中に墓地があるのはありえないし、あってはいけないことだ。

なんで生きている人と死んだ人が一緒になっているのか?
墓地の周辺に住んでいて日本人は怖くないのか、何とも思わないのか?

自分だったら、自宅のすぐ隣にお墓があるのは絶対に耐えられない。
そもそも韓国人なら、あえてそんなところに家やアパートを建てない。
この衝撃的な映像がそのまま彼女の日本の第一印象となった。

 

最近、日本に住んでいたことのある別の韓国人からも同じ話を聞いた。
その人のアパートの前にはお墓があったから、「ありえないのですけど!」と最初はビックリした。
でも住めば都、だんだん慣れると思ったのだけど、やっぱり恐怖心が消えることはない。
昼間でもその前を通るのが辛かったという。

「生活空間にお墓があるなんて。なんで日本人はそれに平気なのか?」という疑問をもった韓国人はたくさんいるはずだ。
これは日本人と韓国人の価値観、特に死生観の大きな違いだから。

 

 

陰陽をあらわす太極図

 

中国には、この世にあるあらゆるものを陰と陽に二分する「陰陽」(いんよう・おんみょう)という考え方がある。
たとえば「陰」に分類されるものには闇・暗・柔・水・冬・夜・植物・女などがあり、「陽」には光・明・剛・火・夏・昼・動物・男などがある。

日本語でも明るく元気な性格の性質を「陽気」と言い、一般的には松岡修造さんがその頂点に立つと考えられている。しらんけど。
反対に、暗くてなんか重い性質を「陰気」と表現するように、いまの日本でもこの中国思想の影響はやたらとある。
陽のエネルギーに満ちた「陽キャラ」、陰のエネルギーの「陰キャラ」の設定はアニメやマンガのお約束。

 

 

この国旗からわかるように、韓国社会では日本とは比べられないほど「陰陽」の影響が強い。
生きている人と死んだ人の住む場所も、陰陽思想によって分けられている。

人が家を建てたり、アパートで生活するのに適したところかどうかを判断するために、「陽宅風水(ようたくふうすい)」という考え方が使われる。
家にできるだけ良い気が入り込んで、悪い気が出ていくような地をこれで知ることができる。(と考えられている)
反対に、亡くなった人がいるのに適したところは「陰宅風水」でわかる。
つまりこれはお墓をつくる場所を知るための風水だ。

直接聞いたことはないが、ネットをみると日本でも、陽宅風水・陰宅風水の考え方から住む場所やお墓をきめることがあるらしい。

 

朝鮮王朝時代の玉座
後ろの太陽と月は陰陽をあらわしている。

 

ソウル出身で通訳などで活躍している朴美姫さんが、中日新聞にある「韓国の魅力」というコーナーで、あちらの文化や社会についていろいろ紹介していて、そのなかに韓国社会における「陽宅風水」の説明がある。

韓国の住まいに革命! 

それによると「陰」に属する山は伝統的に墓地をつくるのに最適と考えられていて、生きている人はそこに家を建ててはいけない。
といってもそれは「基本的に」で、貧しい人などが山の中で生活することはある。

それに対して、「陽」に属する生者は山を避けてそのふもとに住むから、韓国では生きている人と死んだ人の「住み分け」が明確につけられていた。
こういう伝統文化の国の人がそうではない国へ行くと、「信じられない!」と驚いたり、「ありえないのですけど!」とおびえることになる。

 

 

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2 件のコメント

  • 「墓地が住み家の近くにあるのは怖い」という感覚は、おそらく、韓国では長年にわたって土葬が一般的であったということも関係しているのでは? キリスト教やイスラム教も土葬が主ですよね。
    日本では明治期以降はほとんど火葬で、現在では法律により原則として火葬が義務付けられていますから。別に墓地だからと言って、遺体が丸ごと墓の下に埋まっている訳じゃない。韓国人はそのことを知らないのでは?
    日本人だって、土葬の墓地だったら、住居のあまり近くには存在してほしくないと思いますよ。少なくとも私は嫌だなぁ。

  • その可能性はあると思います。
    土葬と火葬ではぜんぜん違いますし。
    まぁ好き好んで墓地の近くに住みたいとは思わないでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。