エサをやるとか馬鹿なの死ぬの?日本の熊害・ワースト3

 

冬は富士山を見るには絶好の時期だから、外国人を連れてハイキングに出かけることが多い。
この前、ロシア人とアメリカ人とベトナム人と一緒に山を登っていたとき、日本での『獣害』の話題が出てきた。
それで、一番恐ろしいのはクマだと伝える。
これに襲われて大けがをしたり、ときには殺される人がいる、静岡の山でもクマが目撃されることがある、と話すと「ええっ!」と一同に動揺が広がった。
どうも彼らの頭の中の日本には、こんな恐ろしい獣害は存在しなかったらしい。

静岡県なら森でクマと出会うことはまずないけれど、でっかいどーの北海道では、全域か一部かわからないけど、それが常識になっているようだ。
だから北海道が「あなたとヒグマの共存のために」を公開している。
*現在はリンク切れ。

山を歩くときは大きな声で話しながら「ここに人間がいますよ」と知らせるなどして、とにかくクマと出会わないよう用心することが第一だ。
電車の中で携帯で話す中国人さんがここでの最適解。

そしてもし遭遇してしまったら、こうするといいらしい。

「クマから視線をはなさないで下さい。そしてクマの動きを見ながらゆっくりと後退して下さい。」

 

地域や時期によっては山の必須アイテム・クマよけの鈴

 

さてそんな北海道では最近、クマではなくてバカが現れたことで近く罰金を科すようだ。
読売新聞の記事(2021/03/03)

ヒグマ撮影のため餌でおびき寄せ、知床で多発…罰金法案を閣議決定

知床国立公園では良い写真をゲットするために、エサでヒグマをおびき寄せる人間が後を絶たないという。
クマったやつらだ。
というレベルではなくて、これは本当に危険な行為なのだ。

クマは「習慣の生き物」で、山では同じ食べ物を同じ場所に来て探す習性があるから、こうしてエサをおぼえたら何度も来るようになるだろう。
そしてここが大切、北海道渡島総合振興局の クマと食べ物 によると「人の食べ物に慣れたクマは攻撃的です」。

撮影のために「餌づけ」すると、ヒグマが人を恐れなくなる可能性があることから、環境省は職員の注意を聞かないヤツには罰金を科す方針だ。

これにネットの反応は?

・そろそろカメラも免許制にしよう
・自分が囮になれば迫力のある写真が撮れるのに
・頭おかしい案件
・そんな田舎行かんでもススキノから2kmも歩けばおるで
・ユーチューバーはまだ進出してないのか
・罰金より、知床の林道の奥に放置して、自力で集落までたどり着かせた方が良い。

これで餌づけされたクマが殺処分されるより先に、まずはアホな人間を処分する必要がある。

 

単体で遭遇したのなら、日本では最恐で最強の生き物・ヒグマ

 

クマによる被害は、クマ害ではなくて熊害(ゆうがい)という。
日本での熊害は2004年と2006年で145名の負傷者が出ていて、1980年~2006年までの死者は28名だ。(ヒグマで6名、ツキノワグマで22名)

記録に残る限り日本最悪の熊害は、1915(大正4)年に北海道の苫前(とままえ)村でおきた三毛別羆(さんけべつひぐま)事件。

巨大なエゾヒグマが村に現れ民家に侵入し、7名が死亡して3名が重傷を負った。
人間の肉の味を覚えたヒグマは、赤ん坊を身ごもっていて「腹破らんでくれ!」「のど喰って殺して!」と叫ぶタケという女性を上半身から喰い始めたという。

これが直後の様子。

家に入った者の眼に飛び込んできたのは、飛沫で天井裏まで濡れるほどの血の海、そして無残に食い裂かれたタケ、春義、金蔵の遺体であった。上半身を食われたタケの腹は破られ胎児が引きずり出されていた

三毛別羆事件

 

このとき獲物を取り戻そうとするヒグマの習性を利用し、犠牲者の遺体を「エサ」としてあえて家に残してクマをおびき寄せる作戦をとったものの、これは成功せず。
一方、令和の日本人は「映える画」を撮るためにヒグマにエサをやるらしい。

くわしいことはこの記事をどうぞ。

ヒグマの恐怖!日本史上最悪の被害「三毛別羆事件」とは?

『鬼滅の刃』にもこの事件をモデルにしたようなシーンがでてくる。

 

三毛別羆事件を再現したもの
手前のヘルメットと比べると、クマの大きさと村人が味わった恐怖がわかる。

 

熊害による犠牲者と負傷者の合計なら、三毛別羆事件が日本最悪の事件になる。
次は同じく大正時代に北海道で起きた、石狩沼田幌新(いしかりぬまたほろしん)事件だ。
大正12年8月21日、ヒグマが開拓民の家族や猟師を襲い、5名が死亡し3名の重傷者を出す。

向かいの山中へとウメを引きずっていく。ウメが助けを求める叫び声が2、3度響いたあと、かすかな念仏が何度も続けて聞こえてきたが、それも次第に遠ざかり、夜風に吹き消されてしまった。

石狩沼田幌新事件

再現された当時の開拓村の家

 

ワースト3は秋田県で5年前に起きた 十和利山熊襲撃事件。
2016年の5月~6月、秋田県鹿角市で発生したこの熊害では、ツキノワグマが山菜採りをしていた人を襲い、4人が死亡、4人が重軽傷を負う。
日本の記録では史上3番目の被害を出した事件だけど、本州ではこれが最悪の獣害事件だ。

だがしかし、このあとも山菜を採るために山へ入る人が絶えなかったというのが、静岡県在住のボクにはよくわからん。

事件後も熊取平や田代平へタケノコ採りの目的で分け入る者が絶えないため、警察は18日から周辺の国道104号や県道7か所に検問所を設置した

十和利山熊襲撃事件

 

過去にこういう凄惨な事件が起きたというのに、写真撮影のためにエサをやるとかホント馬鹿なの?

 

 

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1 個のコメント

  • 野生の熊に餌と言えば、いっとき、軽井沢の別荘地・観光地であまりに人家が増えすぎて、生ごみの回収処分が追いつかなくなって、道端に放置された生ごみを狙って熊が出没するようになった、という問題がありましたね。最近は軽井沢のゴミ出しもきちんと行われるようになったのかな?
    日本で、野生動物による犠牲者を数えるならば、もしかすると、スズメバチやマムシ・ハブなどの犠牲者も、熊なんかに匹敵するのではないですか? この辺も外国人には注意してあげた方がいいですよ。
    私が子供の頃には、田舎の小学校で、裏山の藪に行くとマムシが出るから絶対に入るな!といつも注意されたものです。小学校の近隣でそんな危険を放置しておくなんて、今だったら考えられないですけど。

    でも日本国内で最も危険な動物は、どう考えても人間ですよね。(一部?を除けば野生ではないですが。)

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。