【これはない!】スペイン人が“日本のドンキ”を見た感想

 

日本の頼れる庶民の味方『ドン・キホーテ』は外国人にも人気がある。
「インドに比べてウィスキーがすごく安いんだ!」とドンキに感謝する知人のインド人は、「でもあの音楽が頭から離れなくて…」と困ってた。

日本へ旅行に来た台湾人はお土産を買うための『ドン・キホーテの日』を決めていた。
太陽が出ている間はたっぷり観光し、疲れたら夕食を食べながら休憩して、ヒットポイントが回復したらドンキへ行く。
そこは化粧品、お菓子、電化製品と、ほしいお土産が何でも手に入る魔法の空間。
そんな3人の台湾人に、信じられないかもしれないが、日本でドン・キホーテは漢字で「鈍器法廷」になると話したら、一瞬信じたようだった。

 

 

『ドン・キホーテ』はスペインの作家セルバンテスの有名な小説のタイトルであり、その主人公の名前でもある。
*ちなみにセルバンテスが亡くなった1616年に、日本では徳川家康が亡くなった。

日本では世界史でならうことで、インド人も台湾人も知っていたしもう世界の常識と言っていい。と思う。
でも知人のアメリカ人から、ドン・キホーテを知らなかった友人のイギリス人をバカにしたところ、そのイギリス人がキレて、しばらく口をきいてもらえなかったという話を聞いたことがある。
だからこの物語は世界的な常識だと思うけど、「知ってる前提」で話をするのはやめたほうがいい。

物語の主人公ドン・キホーテはスペインの田舎の村に住んでいた“頭のイカレタ”男で、騎士道の話を読んで感激し、現実とフィクションの区別がつかなくなってしまう。
そして自分を英雄のような騎士と思い込んだドン・キホーテはやせた馬に乗って旅に出て、世の中の不正を見つけてはそれを正した。
といっても彼は水戸黄門にはなれなかった。
自分中心・自分勝手な判断や行動をしていたから、実際にはただの迷惑行為で、ドン・キホーテは第三者には馬に乗ったトラブルメーカーでしかない。

こんな人物を社名にした理由について、公式ホームページにこう書いてある。

行動的理想主義者であり、既成の常識や権威に屈しないドン・キホーテのように、新しい流通業態を創造したいという願いを込めています。

ドン・キホーテの名前の由来は何ですか?

風車に突撃する有名なシーン

ドン・キホーテは風車を悪の『巨人』と思い込み、戦いを挑んで逆に吹っ飛ばされた。

 

こんな国民的小説の主人公をディスカウントショップの店名にされたら、スペイン人はどう思うのか?
最近、日本ではたらくスペイン人(20代の女性)と会った時にきいてみたら、「良い気も悪い気もしない。特になんとも」とのことでこんな話をする。

それまでの常識をぶち壊し、新しい流通業態を創造したいという理念はドン・キホーテに共通している部分もある。
でもスペインで彼は『とんでもないバカ』と思われている。
だから既存の常識を否定して、新しく価値のある常識を提案できる人間ではない。
日本のドンキは人びとの役に立っているところが、小説のドン・キホーテとはまったく違う。
店名にその名が採用されるのは、日本でドン・キホーテの知名度や彼への親近感があるからだろうし、まぁあえて言えばうれしい。

 

そんな彼女にとって気になる『日本のドンキ』は、こっちじゃなくてマンガのほうだった。

『ドン・キホーテ 憂い顔の騎士』に出てくるドン・キホーテと従者のサンチョの絵を見た時は、はじめは『ドン・キホーテ』と書いてあるけどまったく別の話と思った。
でも、セルバンテスのドン・キホーテと知ってマジでビックリ。
スペインのドン・キホーテはやせた貧乏貴族のおじいちゃんで、発想や行動がとにかくおかしい。
彼が頭にトイレのお丸をかぶっている絵を見たことあるし、スペインではそういうクレイジーな人物として表現されている。
でも日本のマンガのドン・キホーテは、とんでもないイケメンの美青年だ。
*『ドン・キホーテ 憂い顔の騎士』で画像検索してほしい。

サンチョはもっと美化されている。
スペインのパンチョはお腹の出た、間抜けな農夫という設定なのに、日本のマンガでは超絶美形の少年になっている。
しかも金髪。
もともとスペインでは金髪の人なんて少ないのに、金髪の農民なんて考えられない。

そんなことで『ドン・キホーテ 憂い顔の騎士』は、スペインとは価値観と見方がひっくり返っている。
他人からバカにされる、笑われる、あきれられるというのがドン・キホーテなのに、あんな外見をしていたらあこがれる。
ディスカウントショップには何とも思わないけど、世界観がアベコベになっているあのマンガには「これはない!」と本当に驚いた。
あれを見てドンキホーテとサンチョとわかるスペイン人は絶対いない。

とそんなことを話してた。
日本のマンガやアニメは何でもアリで、美少女化した織田信長が登場するアニメなんてもはやフツー。
でもスペイン人から見たら、絶句するレベルだったらしい。

 

スペインにあるドン・キホーテ(左)とお供のサンチョの像

 

細っちょと太っちょの組み合わせがお約束なのに、『憂い顔の騎士』では2人ともイケメンの細マッチョという設定。
スペインの既成の常識や権威に屈しないで、新しいドン・キホーテ像を創造したと言える。

 

 

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3 件のコメント

  • めっちゃ関係ない話です。 ごめんなさい。
    20年前くらいに乗馬クラブに通っていたことがあります。
    初心者クラスで乗っていた馬の名前がサンチョパンサでした。 月に1度しか通っていませんでしたがほぼサンチョ君に乗っていたので5回目には覚えてくれていました。 嬉しかったなぁ♪
    イギリスはシェークスピアがいますからね~。 ドン・キホーテは読まないのかもしれませんね。

  • いえいえ大歓迎ですよ。
    「サンチョ」は日本人には語感がいいと思います。なんか愛嬌があって。
    ドン・キホーテはかなり長い話らしくて、知人のスペイン人は全部読んだことがありませんでした。
    源氏物語をすべて読んだ日本人が少ないようなもの?

  • > 源氏物語をすべて読んだ日本人が少ないようなもの?

    あんな、「超長編ハーレクイン・ロマンス(平安貴族編)」なんぞ、誰が全部読むかっちゅーの!
    きっと当時のヒマな宮廷オバさん連中が、毎号欠かさず読んでたに違いない。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。