2日前の5月18日は「国際親善デー」。
1899年のこの日、ロシア皇帝ニコライ2世が呼びかけてオランダのハーグで第1回平和会議がおこなわれた。
それを記念して制定された国際親善デーは、国際交流による平和の実現が目的だ。
いまこの理想の、正反対のことがパレスチナで起きている。
イスラエル軍の攻撃を受けて倒壊した建物の前で、10歳の少女が泣きながら窮状を訴える。
この動画をシェアしたのがフィリピン人(たぶんカトリック)でこんなことを言う。
These poor children can’t even live their life to the fullest due to religious bs
かわいそうなパレスチナの子どもたちは、寿命をまっとうすることもできない。宗教とかいう“クソ”のせいで。
*bsは「bullshit(牛の糞)」の略でデタラメ、うそ、ナンセンスといった意味。
今回の戦闘は、イスラーム過激派組織「ハマス」がパレスチナ自治区のガザから、イスラエルに向けてロケット弾を発射したことではじまった。
ただそれは直接的な原因で、それを掘り下げるとさらにいろいろな原因がある。
これまでにイスラエル軍の攻撃でパレスチナ側では200人以上が亡くなり、ハマスの攻撃でイスラエル側でも10人の死者が出たという。
ガザでの犠牲者の3分の1は子どもといわれる。
このパレスチナという地名は「ペリシテ人の土地」の意味ということは知っていたけど、いまいるアラブ人ではないというのは、毎日新聞のコラム「余禄」ではじめて知った。(2021/5/19)
だがそのペリシテ人、今日のアラブ系のパレスチナ人とはまったく違う。最近のDNA解析では南ヨーロッパ起源の民族だと分かった
旧約聖書のイスラエルの英雄サムソンは…
「2000年前に出て行ったユダヤ人がいまになって戻ってきて、『ここは自分たちの土地だ』と宣言する。そんなファンタジーがどうしたら許されるのか?」
そんなイスラーム教徒の声を最近この記事で書いた。
でも、アラブ系パレスチナ人もおそらく2000年前はこの地にいなくて、後世にやってきて住み着いたのだろう。
パレスチナの由来となったペリシテ人はいまどこにいるのか?
数年前の夏、京都旅行で2人のユダヤ人(イスラエル人)と知り合って(上の写真)、パレスチナ問題について意見を聞いたことがある。
以前の記事ではパレスチナ人の見方を紹介したので、今回は彼女たちの見方を書いていこう。
2人の意見をひと言でいえば、国連決議を守らなかったパレスチナ人やアラブ諸国が悪い。
第二次世界大戦のときまで、パレスチナの地はイギリスが統治していた。がアラブ人とユダヤ人の対立が手に負えなくなって、この問題の解決を国連に丸投げして自分たちは撤退。
それでパレスチナの地をユダヤ人の国とアラブ人の国の2つに分割するか、それとも両民族による連邦国家にするかに意見が分かれ、最終的には国連総会での投票できめることとなる。(パレスチナ分割決議)
1947年におこなわれた投票の結果、アメリカ、ソ連、フランスなどの賛成33票、アラブ諸国などの反対13票、棄権10票、欠席1票で分割案が採択された。
なおイギリスは投票を棄権。
1947年のパレスチナ分割決議で定められた分割案
橙 : ユダヤ人地区
黄 : アラブ人地区
これによってパレスチナの地はユダヤ人に約55%、アラブ民族には45%分割されることになる。
*エルサレムは国際管理下に置かれた。
「パレスチナはすべてユダヤ人のものだ!」という過激派もいたが、この結果にほとんどのユダヤ人が賛成した一方、先祖代々から住んでいた土地の半分以上も奪われたとアラブ側は大反発。
1948年5月14日にイスラエルが建国されると、その翌日15日にイラク、ヨルダン、シリアなどが攻め込んで第一次中東戦争がはじまった。
ちなみにイスラエル独立の日をアラブ側では「ナクバ(災厄)」と呼ぶ。
アラブ側によるイスラエルへの攻撃(第一次中東戦争)
この戦争でアラブ側が負けた結果、当時エジプトが支配していたガザに大量のパレスチナ難民が押し寄せた。
いまガザにいるパレスチナ人の7割以上はこの難民やその子孫だ。
その後、何度か中東戦争がおこなわれるもすべてアラブ側が負け、気づいたらパレスチナ人の住む土地はかなり減ってしまった。
*2012年のデータで8%というものがある。
薄い部分が現在のパレスチナ自治区
実際には右側の土地の半分以上はイスラエルの支配下にある
「アラブ側が国連決議を守って戦争を仕掛けてこなかったら、いまでも45%はパレスチナ人の土地だったはずで、それならいまのパレスチナ問題もかなりマシになっていた」というのが2人のユダヤ人の意見。
もちろんこれは仮定の話。
「タラれば定食」だから、現実にはどうなっていたのかは誰にも分からない。
でも確かに国連決議を無視して、パレスチナの地をすべて手に入れようと攻撃を開始したことについてはアラブ側に非がある。しかも戦いに負けて逆に領土を失い、多くのパレスチナ難民を出した。
冒頭の女の子をうんだのはイスラエル軍と、無謀なアラブの指導者やイスラーム過激派だ。
ガザからのロケット弾攻撃を受けるイスラエル
イスラエルの説明だと、ここ1週間ほどで3000発以上のロケットがガザから発射された。
「パレスチナ自治区では貧困に苦しむ人たちが多いのに、イスラーム過激派は大量のロケット弾を買う。その金を教育やインフラ整備に使うべき」という話も2人のユダヤ人がしていた。
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> この動画をシェアしたのがフィリピン人(たぶんカトリック)でこんなことを言う。
> These poor children can’t even live their life to the fullest due to religious bs
> かわいそうなパレスチナの子どもたちは、寿命をまっとうすることもできない。宗教とかいう“クソ”のせいで。
うーん、確実には言い切れないのですが・・・。ちょっと意味がずれてるかも。
「religious」は一般的には形容詞ですから、もしかすると、このフィリピン人の発言はこうかもしれない。
“・・・できない。宗教上のクソ(のような対立)のせいで。”
つまり、自分自身の宗教(おそらくカトリック)を含めて、全ての宗教そのものを非難しているかどうか、翻訳によりニュアンスの違いが出るのです。
なかなか難しいですね。