外国人の疑問「なんで雨期は“梅の雨”で、“つゆ”と読むのか?」

 

マジかよ。
桐し…、東海地方、梅雨入りしたってよ。

東海地方で5月16日(ごろ)に梅雨が始まったのは、平年(6月6日)より21日も早く、統計史上、1963年の5月4日につづく2番目の早さ。

さて、まえに日本語を学んでいたインドネシア人から、「つゆ(梅雨)は、なんで“梅の雨”と書くんですか?」と質問され、「ああ、それね」のあとが続かなくなって、「そんなことより野球しようぜ!」と言いかけたことがある。
たしかに梅のシーズンとは全然ちがう。
日本産のボクは昔から梅雨を「rainy season」と自然に考えていたから、その由来について疑問に思ったことはない。
でも外国人からしたら、plumやapricotの梅と雨がどう関係しているのか、気になるのもわかる。
*日本の梅はプラムやアプリコットとも違うから、「ume」が一番正しいらしい。

それに「ばいう」ならまだわかるけど、梅雨をなんで「つゆ」と読むのかさっぱりわからないと言う。
知人のイギリス人やアメリカ人もこれを疑問に思っていた。

 

ネタバレすると、梅雨とはもともと中国でうまれたことばで、日本人がそれをそのまま輸入したからだ。
現代の5月下旬~6月半ばは旧暦だと4月にあたり、ちょうど梅が熟すころ。
8世紀の唐の詩人、杜甫が作った「梅雨」という詩にこんなことばがある。

「南京犀浦の道、四月黄梅熟す」

南京にある犀浦(さいほ)の道は四月になると梅が黄色く熟す、という意味。
現在の日本でも6月1日は、梅の実が熟す最初の日と言われることから「梅肉エキスの日」になっている。
8世紀ごろの日本は遣唐使を派遣して、中国文化を本格的に取り入れていたから、そのころに「梅雨」ということばが入ってきたかもしれない。

*梅雨の由来には他の説もあるから、くわしいくは 梅雨 を参照のこと。

 

「梅雨」は中国から伝わった文字であることに対して、「つゆ」は日本でうまれたことば。
もともと梅雨とつゆは別もので、たとえば室町時代には、この時期は栗の花が墜(お)ちるころだから「墜栗(つゆ)」と表現することもあった。
墜栗花」で梅雨入りの意。

つゆの語源には、梅が「つわる(熟す)」とか、物が湿り腐る「潰(つい)ゆ」などの説がある。

1000年以上前の日本にも、夏の直前に雨が降りつづく時期があって、それを表す「梅雨」という漢字と「つゆ」ということばがあった。
江戸時代になるとその2つがドッキングして、現代のように梅雨と書いてつゆと読むようになる。
文献で確認できる最古の例は、17世紀の「日本歳時記」に「此月淫雨ふる これを梅雨(つゆ)と名づく」とある。

*ここまで朝日新聞の「梅雨――ウメとアメの関係は」を参照。

 

日本で生まれ育った人間なら理由は知らなくても、「梅雨」という漢字を見たら「つゆ」と読んで雨期のことだと自然にわかるようになる。

でも日本語を学ぶ外国人が「梅雨」という漢字を見たら、音読みで「ばいう」か、訓読みなら「うめあめ」と読むのが普通だろう。
これで「つゆ」は不自然だ。
ご先祖が、古くからある日本語を中国由来の漢字にくっつけたからこうなった。
インドネシア語の文字はローマ字だから、ひとつの単語にはひとつの読み方しかない(はず)。
複数の読み方のできる単語がいくつもある日本語は、世界的にもめずらしい言語だから、きっときょうも外国人を悩ませている。

 

以下、余談

冒頭のインドネシア人が「これはむずかしいです!」と言っていたことに「午後」の発音がある。
たとえば「はし」のハを強く発音すれば「箸」、シを強調すれば「端」になる。
そのインドネシア人が「午後の紅茶」で「ゴ」と後半を強調して言ったところ、日本人から「違う。それはゴ」と指摘された。
ゴの紅茶」ならキリンの商品名で、「ゴ」だと午後に飲む紅茶(=何でもいい)というのがその日本人の意見。
外国人にここまで求めるのは酷すぎ。

 

 

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3 件のコメント

  • > 外国人にここまで求めるのは酷すぎ。

    いや、それは違いますよ。例えば英語だったら「強弱アクセント」を正しく使わないと、英米人には聞き取ってもらえません(私もそういう経験を現地で何度もしました)。
    同様に、日本語だったら「高低アクセント」を正しく使わないと、やはり発音として変なんです。日本語は特に同音異義語が多い言語ですから、文字であれば使い分けは漢字で、会話であれば「高低アクセント」により、我々日本人は自然と(発音の)使い分けをしているんです(方言によっても違いますけどね)。でも、日本語に関してこの話が出ることはほとんどないのが不思議。辞書でも、各単語の高低アクセントを明示しているのは、確か、三省堂の「新明解国語辞典」くらいじゃなかったかな? 外国人にはちゃんと教えるべきなんですが。

    さて、日本語の「高低アクセント」はせいぜい2~3パターン(箸:高→低、端:低→高)(紅茶:高→高、公ちゃん:高→低)です。でも中国語(普通話)の高低アクセントは「四声」と言って4パターン(高→高、高→低、低→高、中→低→高)、広東語では8パターンもあるとのこと。
    音痴な人じゃ中国語は話せませんね、きっと。

  • 「午後の紅茶」なら話の前後で商品のことかどうかわかります。
    細かい指摘を繰り返すとやる気を失う外国人もいますから。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。