【ルールですから】外国人がイラっとする日本人の態度

 

5月26日は「ラッキーゾーンの日」。

いまの若い人にはセクシーゾーンしか知らない人もいるだろうけど、むかしの日本の野球場にはそんなゾーンがあったのだ。
球場が広いとなかなかホームランが出ないから、観客が試合を見ていてつまらなくなる。
かといって球場の一部を壊して作り直すととんでもない時間と金がかかるから、観客席の手間に柵を設けて、それを越えたらホームランと認めることにした。

1947年5月26日、甲子園球場にそんなラッキーゾーンが設置されたことから、こんな記念日ができたわけだ。
*ラッキーゾーンは1992年に撤去される。

 

1985年の甲子園球場
左中間、右中間にラッキーゾーンがある。

 

「ラッキーゾーンをつくるより、本当の強打者を作ることが先だ」という岡田 彰布(あきのぶ)さんの意見はもっともで、これに賛成する人も多いはずだ。

でもホームランが出ないと野球はつまらないし、ビジネスにも直結する。
そんなことで2013年には日本製紙クリネックススタジアム宮城に「Eウィング」、2015年には福岡 ヤフオク!ドームに「ホームランテラス」、2019年にはZOZOマリンスタジアムに「ホームランラグーン」が新設された。
名称は違うけどすべてラッキーゾーンと目的は同じだから、結局こういう”オマケ”は必要なんだろう。
お客さんに野球を楽しんでもらうために、柔軟な発想で対応した好事例だと思う。

 

さて日本にいる外国人と付き合っていると、「日本人はルールやきまりに厳しすぎっ!」「柔軟性がない!」といった文句をたまに聞く。
なかにはゴミ出しのきまりみたいに、「いや、面倒でもそれはおまえが合わせろ」というものもあるけれど、「もっと人間にルールを合わせるべきだ」という外国人の意見に賛成できる場合もある。

たとえばこれはアメリカ人から聞いた話。
2月のド寒い朝に図書館へ行ったら、開館10分前にすでに5、6人が並んでいた。
自分もその列の最後尾で震えて待っていると、やがて建物の中に職員の姿が見えた。
がその職員は暖かい図書館の中に立っているだけで、ドアを開ける気配がない。
ということで入り口を挟んで、外にいる自分たち利用者と、その職員が向かい合うという状況がつづく。
これが彼の目にはとても奇妙で、すさまじくムダに映った。
9時になると職員は動き出し、ガチャリとドアを開けてわきに立ち、入ってくる利用者に丁寧に頭を下げた。

わかっていたけど、でも一応その職員に聞いてみると「朝9時に開けるのがきまりですから、その時刻になるまで待機していました」と言う。
内心でため息をついたアメリカ人に気づいたのか、職員が申し訳なさそうな顔をしてこう話す。

「朝9時ピッタリに開けることになっていますから、その少し前に入り口にいないといけないんです。わたしは少しぐらい早く開けてもいいと思うんですけど、上が『ルールを守れ』って厳しいんです」

そんな体験を持ち出して、「でもこっちは、零度に近い寒さのなかで並んでいたんだぜ?もし2分早く開けたら、何か大変な事態が起こるのか?」と文句を言うアメリカ人。
まぁ誰が知るかと。
でも日本の社会が時間厳守で動くことで、生活が便利で効率的になっていることは確か。だから彼もその態度を全否定はしない。
基本的にはそれでいいけど、やっぱりその場の状況に応じて、もうちょっとルールを人に合わせて柔軟に対応するべきだというのが彼の主張だ。
個人的にもすさまじく寒い日や暑い日には、図書館のきまりよりも外で待ってる利用者を優先して、2、3分早く開けてもいいとは思う。

 

日本人の「ルールですから」にイラっとした外国人はほかにもいる。
あるブラジル人が手紙を出そうと思い、ポストのある近くのコンビニへ行って、郵便切手を買おうと店員に封筒を見せて料金を聞いた。
すると店員の返事は「それを言うことはできません」。
切手の料金を伝えることは仕事の範囲外になるから、それはしないことになっているという。
ブラジル人がそのときスマホを持っていなかったことを伝えても、「こちらでは言えません。ご自分で調べてください」。
何を言っても「ルールですから」の反撃を受けて、とうとうそのコンビニでで投函することはあきらめた。

そのブラジル人の話を聞く限り、切手代は100円もあれば十分で店員もそれはわかっていたと思う。
内心では教えたかったのかもしれないけど、結局は最後まで店のきまりを優先した。
「あの態度には腹が立ちました」と言うブラジル人も、それが日本人の長所であることもわかっていた。

 

こんな感じに時間やルールにこだわって、融通の利かない日本人の態度にイラっときたり、ウンザリしたという話は、欧米人やアジア人など国籍を越えていろんな外国人から聞いたことがある。
でも場面が変われば、それが正確さや丁寧さという美点になることはみんな認める。
外国人とは関係なく個人的にも、どんな時でもマニュアル通りではなくて、時には「ラッキーゾーン」をもうけて柔軟に対応してもいいとはよく思う。

 

 

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8 件のコメント

  • 難しい問題ですね。
    下手に便宜を図ると、今度はそれが当然となって「あそこではやってくれたのに」とか「あの人の時はやったのに」とか言い出すことになりかねませんから。
    だけど、前に相撲の土俵で人が倒れた際、女性医師らしき人が診ようとすると、「女性は土俵から降りてください」とアナウンスが流れたことがありましたが、あの時はさすがに硬直が過ぎると思いました。

  • 一度例外を作ると「以前はこうしてくれた!」が増えて箍が外れるから。外国にも「郷に入っては」の諺が有る筈だけど。

  • これは個人の主観ですが、零度に近い中で利用者を外に並ばせるより1、2分早く図書館を開けても問題ないと思います。

  • 利用者側からすれば問題ないと思うかもしれないけど、一回例外を認めると
    前の時はやってくれただろ(だから今回もやれ)とか言い出すやつが出てきて
    面倒くさいことになるのが目に見えてるから時間通りにやってくれたほうがいいわ。

  • んなもん、外から見えないところで待機してろよ。バカバカしい。
    寒い外で並んで、中の温かいところにじっとしている図書館員を見れば、別に外国人でなくても、腹が立つに決まってるだろ。

  • ははは、そりゃルールを言い訳にしていれば、自分の頭で考えなくても生きていけますからね。
    面倒な決断をしなくてよい。出る杭にならずに済む。他人から「ルール破りだ!」と非難される恐れもない。
    ルール通りに守る方が、損を被る当事者以外、自分も周囲も楽だと。日本人はそう考える人が多いのです。
    そこが外国人との軋轢を生む、最大の原因なんです。

  • 結局は「ばらつき」を生じる母体となって、不公平感だけが残るんですよ。
    特に「自分が得をしたい」モラルに欠ける人ほど

  • ははは、そりゃルール破りが通じれば、自分が我慢しなくても生きていけますからね。
    面倒な決断するのは自分じゃない。同じ立場の人からは喜ばれる。だからと言って会社から避難される恐れもない。
    ルール破りを迫ったところで、ルールを破る当事者意外、自分も周囲も楽だと。日本人にもそう考える人が多いのです。
    そこが主催側に余計な仕事を増やして、軋轢を生む最大の原因なんです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。