タイには10回以上行ったことがあって、日本にいるタイ人と何人も付き合った(ラブじゃなくてフレンドで)経験から言わせてもらうと、日本人の特徴は「用意周到・計画的」に対して、タイ人は「マイペンライ」。
マイは否定の「~ではない」でペンライは「問題だ」だから、英語にしたら「ノープロブレム」になる。
マイペンライとは「問題ない、大丈夫だ、こまけぇこたぁいいんだよ!!」といった意味で、タイ人の気質をよく表すことばとしてよく知られている。
マイペンライに近いことばを日本語で探すなら、沖縄の「なんくるないさー(何とかなる)」だ。と思っていた時期が私にもありました。
でも、「なんくるないさー」はそれほど能天気でテキトーなことばではなくて実は、「くじけずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつかきっと報われて良い日がやって来る」というわりと真面目な意味らしい。
ネットでは、「いま目の前のことをしっかりやっていれば、きっと何とかなる」という前向きな意味でタイ人がマイペンライを使うこともあると指摘する日本人もいる。
でもそれはきっとレアケース。
タイ人の言うマイペンライには「盗人を見て縄をなう」的な、まずはとりあえずやってみて、何か問題がおきたらそのつど対応するという無計画なニュアンスがある。
概念としては用意周到の逆。
くり返しになるんだが、この見方はボクの個人的な経験による。
そんなタイ人3人を伊勢神宮へ連れて行ったときのこと。
日本人の心の聖地・お伊勢さんの人気は半端なく、浜松から3時間かけて伊勢市に入って、神宮の駐車場の列に30分以上ならんでようやく中に入って車を停めることができた。
疲労困憊で車から出た3人は、川底が見えるほど澄み切った五十鈴川を見て「おお~」と歓声をあげてスマホで写真を撮り始める。
そうだろそうだろ。
五十鈴川はむかし、伊勢神宮に入る前に参拝者が身体を清めた神聖な川なのだ。
この景色をカメラに収めたいという気持ちは理解できるとして、「なんでここには屋台がひとつもないんですか?」というタイ人の質問はまったく意味が分からない。
彼らいわく、もしタイでこんなにたくさんの人が集まる広いスペースがあったら、焼きそばやデザートなどの食べ物や飲み物を販売する屋台が必ずある。
ここだけではなくて、彼らが日本の観光地やイベントに行くと、「なんで誰もここに屋台を出さないのか?」と疑問に思うことが多々あるという。
それについて話をしたところ、結局それは、日本とタイの「ハードル」の高さと数の違いによるものと判明。
タイだと場所を確保したり飲食物を出すことに何の許可も必要なくて(ホントは必要かも)、人出とスペースを見てカネのにおいがすれば、どこからともなく多くのバイクがやって来て勝手に屋台をオープンさせてしまう。
タイで大規模なデモが始まると、参加者を目当てにいろんな屋台がかけつけて、店を開くのは当たり前のことらしい。
日本だったら、くわしくはしらんけど、そんな気軽に屋台を出すことはできない。
場所を確保するには、事前にいろいろな手続きをして許可を得ないといけないだろうし、衛生管理の講習を受ける必要もある。
「思い立ったが吉日」みたいに簡単にはいかないと言うと、「屋台を出すだけで、日本ではそんな面倒なことをするんですか!」というタイ人の驚きには、社会の仕組みの違いを感じるしかない。
個人がそんな好き勝手に店を始めて、もし客が食中毒を起こしたら誰がどう責任をとるのか?
それを聞いたら、「下痢ぐらいなら運が悪かったと思って、誰も気にしないし怒りません。マイペンライです」と笑う。
では屋台の衛生管理のせいにしないで、仏教的な因果応報でとらえて、「自分が食中毒になったのは、過去に悪いことをしたことの報いと思うか?」と聞くと、なかにはそう考える人がいて、その腹痛を自分のせいと思う人がいてもおかしくはないと言う。
というのは、それぐらいの小さな悪さはみんなやっているから。
日本でそんないい加減なことが許されないのは、産経新聞の記事を見ればわかる。(2021/3/11)
冷やしキュウリ食中毒露店の男性に賠償命令 静岡市への請求は棄却 地裁
平成26年に静岡市で開かれた花火大会で、屋台の冷やしキュウリを食べた約500人が下痢や嘔吐を訴えて大問題になった。
キュウリ屋の男は洗剤を使わず水でバケツを洗い流し、そのあとアルコールスプレーを吹き付けるだけだったという。事前の講習で聞いたことを無視して、そんなお粗末な衛生管理をしていたことが原因でキュウリにOー157が付着して大事件が発生。
このときの騒ぎは県民としてボクもよく知ってるし、いまではこれは静岡の消せない闇歴史。
このまえその男に判決が下された。
静岡地裁は露店の男に、原告26人に対して計約1167万円を支払うよう命じた。
手抜きのツケは、1人当たり約45万という高い高いレッスン料となる。
高すぎて払わないのでは?
これは仮定で空想の話なんだが、もしこれがタイだったら、きっとこんな大事にはならない。
まずマイペンライな社会だから、水で洗ってアルコールスプレーをかける程度の屋台なんて山ほどあるだろうし、それに国民は、これで500人が食中毒になるようなヤワなお腹をしていない。
腹痛や嘔吐があったとしても、病院に行ったり役所に訴え出る人はほとんどいない。
原因がよく分からなくても、「これはきっと食あたりで、まぁ寝てればそのうち良くなるさ」とスマホでもいじりながらしばらく休んで、体調が回復したら何事もなかったようにまた日常生活に復帰する。
ボクがイメージするタイ人は、そんなマイペンライな人たち。
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> タイ人の言うマイペンライには「盗人を見て縄をなう」的な、まずはとりあえずやってみて、何か問題がおきたらそのつど対応するという無計画なニュアンスがある。
なるほど。それが正しいような気もします。
タイ人の「マイペンライ」に近いのは、私自身は、イスラム教徒の「インシャラー」だと思ってましたけど。