「豚汁」はどう読むのが正解か。
芸能人の宮脇咲良さんが故郷の鹿児島に帰省したとき、祖母と母親が「ぶたじる」と言うのを聞いて、「とんじる」と読んでいた宮脇さんがビックリしたとツイッターに投稿。
鹿児島出身の宮脇さんは、自分がいつから「とんじる」と読むようになったか分からないという。
これはどっちも正解で九州では「ぶたじる」、全国的には「とんじる」が多いというだけのこと。
豚丼も「ぶたどん」、「とんどん」のどちらも可。
それよりむかしいのは「河豚」と「海豚」だろう。
それぞれフグ、イルカと読む。
では「世論」はどうか。
これは「せろん」と読むのが正しいのか、それとも「よろん」か。
その答えを朝日新聞出版の『みんなの漢字』(2021年7月号)から見てみよう。
2013年創刊のこの雑誌も部数減などの影響でこれで最後。
漢字について知ろうとしても、ネットでは胡散臭い情報がトラップのようにあって、こういう雑誌は貴重だったのに残念。
結論からいうと、世論の読み方も「せろん」でも「よろん」でも好きな方でいい。
じゃあ、なんで正解が2つもあるのか?
まず戦前まで、日本では主に「輿論」(よろん)という言葉をつかっていた。
輿論はもとは中国語で、日本では明治時代に「public opinion」の訳語として「輿論」という言葉があてられた。
輿(こし)とは車で人や荷物をのせる部分や、乗り物のこと。
金持ちや上流階級の男と結婚する「玉の輿(こし)」の正体がこれだ。
「輿」は神輿(みこし)のように使われていて、「みんなで力を合わせるさま」「みんな」という意味がある。「神輿は軽くてパー(バカ)がいい」というのは真理。
とにかくこれが転じて、「大衆のさまざまな意見や議論」を「輿論」(よろん)と呼ぶようになった。
「クラウド」のように国民の頭上に意見の集合体があるような感じか?
でも戦後直後の1946(昭和21)年、使われる漢字の数を制限する目的で定められた「当用漢字」に「輿」は含まれず、代わりに「世」が採用された。
結果、輿論を「よろん」と読んだように、世論もそのまま「よろん」と読むようになり、「世」は「せ」とも読むから「せろん」も定着した。
だからこれは豚の音読み・訓読みの違いではなくて、「輿論(public opinion)→世論」の移行があったってこと。
漢字には歴史があるからおもしろい!
という人が少なくなっているから、廃刊になったのか。
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うーん、この話、自分が田舎の中学生だった頃、先生同士の間で意見が割れていましたね。
「よろん」と言っていたのは年配の先生、「せろん」と言っていたのは若い先生でした。で、しかも、「『よろん』という読み方は戦前の古い読み方で、そんな田舎の方言みたいな読み方を子供に教えるのはよくない!」とばかりに、若い先生(日教組系?)が年配の先生方を糾弾していました。
「んなもん、どっちでもいーじゃん。そういうアンタも田舎の先生だろ?」と私は思って見てましたけど。