【日本の処理水】韓国で“科学とデマ”の命がけの闘いが始まる

 

ことし4月、2年後から福島原発の処理水を海に流すと日本政府が発表すると韓国では、「いったいなにが始まるんです?」といった大騒ぎが始まったのは記憶に新しい。

全国紙の記事の見出しを見ただけで、その混乱ぶりが伝わってくる。

中央日報日本語版の記事(2021.04.10)

日本、結局は海に汚染水放流へ…恐怖広がる韓国

中央日報日本語版の記事(2021.04.14)

韓国首相「日本の汚染水放出は無責任な決定…もう一つの歴史的過ちを犯すこと」

ハンギョレ新聞の記事(2021-04-13)

「日本の福島原発放射能汚染水放流は“核テロ”…撤回せよ」

まず間違いを指摘しておくと、日本が放出するのは汚染水ではなくて、放射性物質を可能な限り除去した処理水だ。
韓国ではいま、現在進行形で月城原発の処理水を海に流しているのだから、日本がすることはそれと変わらない。

でもあちらは、日本が同じことをするのは許せないらしい。
来年の大統領選挙に名乗りをあげた京畿道のイ・ジェミョン知事は、「日本の汚染水、命がけの闘いが始まる」と根拠と意味が不明の戦闘モードに突入した。
こうやって国民の反日感情をあおって、自分の支持率アップをねらう政治家は残念ながら韓国ではよくいる。

 

では、科学的にはどうなのか?
結論からいうと、日本の処理水放出に現実的な問題はない。
たしかに処理するとはいえ、この水には微量の放射性物質が含まれているから、もちろん影響はゼロとはいえない。が無視していいレベル。

仮に処理水を1年ですべて海に放出したとしても、その被ばく線量は年間0・052~0・62マイクロシーベルトでしかない。
放射性物質は雨水や飲み水、日々の食べ物にも含まれているから、これを避けることは不可能で、日本人は普通に生活しているだけで年間2100マイクロシーベルトほど被ばくしているのだ。
見えないだけで放射性物質は身近なところにある。
気づかないだけで人類は毎日のように被ばくしている。

だから産経新聞は社説でこう強調した。(2019/11/21)

事実上、無視し得る量である。このレベルを気にするようなら、国際線の航空機にも乗れない。花崗(かこう)岩地域の西日本にも住めなくなるだろう。

原発処理水 海洋放出の具体化に動け

 

具体例をあげると東京~ニューヨークを飛行機に乗って往復すると、0.11~0.16ミリシーベルト被ばくする。
でもそのぐらいの距離なら、毎月のように飛行機で移動している人間は世界中にいくらでもいる。
韓国メディアの言う「核テロ」「汚染水放流」「恐怖広がる」の具体的な正体がこれ。
もし本当にこれが「テロ」や「恐怖」というレベルなら、日本人はもう飛行機に乗って海外へ行くことはできない。
でも韓国メディアは同時に、韓国旅行に来てほしいと日本人にアピールする。
いま危険視しないといけないのは、科学と現実を無視した情報による福島への風評被害だ。
悪意で誇張した表現によって、人々を誘導しようとする人たちが韓国にも日本にもいる。

 

次に世界の反応を見てみよう。

日本の処理水放出については、国際原子力機関(IAEA)も「国際的な慣行」であると支持を表明し、つい最近も協力すると発表した。
当然これは、韓国の主張とは正反対の立場だ。
国民感情に真っ向から反していることに加えて、IAEAは「汚染水」ではなく、日本政府と同じ「処理水」という言葉を使ったことで中央日報が不満をあらわにする。(2021.07.09)

ラファエル・グロッシー事務局長は「日本と世界の他の国家、特に周辺国の人々に(放出される)水が脅威となるものではないということを安心させるのが最も重要だ」としながらも、日本の海洋放出計画が技術的に実現で、国際慣行に符合すると主張した。

IAEA「汚染水放流」日本に肩入れ? 「放出計画、国際慣行に符合」

 

特定の感情から距離を置いて、科学に基づいて判断すると「日本に肩入れ」と言われてしまう。
「特に周辺国」の筆頭が、客観性と冷静さを欠いた国であることは言うまでもない。
恐怖を演出する人たちはそれによって、具体例に何ミリシーベルト被ばくするかという最も重要な情報は書かない。
事実を書くと、それは自殺行為になるという状況は明らかにおかしい。
「安心させるのが最も重要だ」と言うのは簡単でも、感情で科学を拒否する相手を説得するのは本当にむずかしい。

ただ韓国人の見方は一つじゃない。
次期大統領候補であるユン・ソクヨル氏のように、日本の処理水放出を問題視することなく、国内世論を落ち着かせようとする人もいる。
これには世論の一定の支持はあるものの、やっぱり「日本の汚染水、命がけの闘いが始まる」とアピールするイ・ジェミョン候補の主張のほうが勢いがある。
韓国社会でいま始まっているのは、科学とデマの命がけの闘いだ。

 

 

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2 件のコメント

  • > 韓国社会でいま始まっているのは、科学とデマの命がけの闘いだ。

    そうであれば、まだいいのですが。
    私の目には、進歩派と保守派、反米親北派と親米反北派、ウリとナム、あっちとこっち、の対立にしか見えません。どちらも、程度の差はあれ基本は「反日自称・親日非難」であることに変わりない。その証拠が韓国メディアの論調ですね。少しでも日本の主張に肩入れするかのような発言は社会的に許されないという。
    ブログ記事内にある「国内世論を落ち着かせよう」との発言も、「親日だ!」と非難されて、すぐに「親日ではない」というヘンな弁解をしています。
    韓国が、先進国にふさわしい合理性と冷静さを備えて、国と国との約束を守る外交を身につけるには、まだ数十年はかかるのではないかな。

  • 私もやはり李在明の反日扇動を心配そうな目で見ています。
    自身の能力は、左派的な宣伝しかない李在明としては、反日キャンペーンは最も有効な手段ですね。
    問題は、いまだに多くの韓国人にこのキャンペーンが非常に効果的であるという事実です。嘆かわしいです。
    本文で指摘したように、韓国では未だに科学と感情の戦いで感情が勝つ状況が演出されています。
    良い政府が発足し、国民の間違った反日意識を変えていかなければなりません。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。