日本が法律で使用を禁止した、古代中国の呪術・蠱毒とは?

 

なんでそんな話題になったか忘れたけど、アメリカ人とイギリス人とガストでご飯を食ってたら、「世界中の生き物の中でどの毒が最強・最恐か?」という話になった。
蛇・サソリ・クモといった定番はもちろん、フグやスズメバチが出てきたとき、日本のスズメバチがアメリカに上陸していま問題になっているという話を聞いた。

それはこんなCNNニュースのことか。(2021.06.18)

米国の「殺人スズメバチ」、今年最初の目撃例 シアトル近郊

話をシアトルからガストに戻そう。
「そういえば中国にはこんなスゲー毒があるぞ!」とアメリカ人が蠱毒(こどく)の話をはじめる。
これは毒というより、最悪の毒をつくり出す呪術のこと。

古代中国では毒をもつ蛇・カエル・クモ・ムカデなどを集めて、それらを「えいっ」とツボなどの容器に入れて、互いを殺し合うバトルロイヤル(たぶん共食い)をさせることがあったらしい。
ツボの中の様子を想像すると、背筋に寒いものが流れる。
そんなおどろおどろしい争いに生き残った生物が「神霊」と神聖視されて、その毒にはすさまじい効果があると考えられた。

この呪術がいつ中国でうまれたのかは不明。
でも、隋の歴史書(隋書)に蠱毒のつくり方が書いてある。

「五月五日に百種の虫を集め、大きなものは蛇、小さなものは虱と、併せて器の中に置き、互いに喰らわせ、最後の一種に残ったものを留める。蛇であれば蛇蠱、虱であれば虱蠱である。これを行って人を殺す」

古代中国人にとってこれはファンタジーではなくて現実的な恐怖だったから、政府は蠱毒の使用を固く禁止し、これで人を殺したり、そうしようと企んだ者は絞首刑や斬首刑などの死刑に処すると法律に定められた。
*具体的な内容は王朝によって違う。

この呪術は日本にも伝わり、中国と同じように政府は法律で使用を厳禁する。
『続日本紀』を見ると769年に蠱毒を行ったとか、772年に井上内親王が蠱毒の罪によって廃されたという記録がある。

 

ガストにいたアメリカ人は大学で東洋史を学んでいる時に蠱毒を知って、このオカルトじみた発想にとても興味を持ったという。
それ以来、世界中の毒を知っても、これより強そうなものは見つからないから、彼の中ではこれが最強にして最恐の毒。
そんな伝説的な毒を持ち出されたら、それを上回る毒なんて思いつかない。

蠱毒について海外の見方を調べようと英語版ウィキペディアを見たら、「コドク」と日本語で項目が作られていた。
でもこれは中国で考案された呪術で、日本にはそれが伝わっただけだから、あくまで本家は中国のはず。
イマイチ腑に落ちないまま読み進めると、蠱毒は日本の民家伝承に見られる毒魔術の一種で、これは中国呪術の“日本版”と言えるという。

a type of poisonous magic found in Japanese folklore. It is the Japanese derivative of the Chinese Gu magic.

Kodoku

 

なんでこれが海外では、「日本のもの」として紹介されているのか?
その理由は、外国人が日本のアニメやゲームなどを通じて蠱毒を知るからのようだ。
蠱毒が“使用された例”として『犬夜叉』、『モブサイコ100』、『ハンター×ハンター』などが挙げられていて、1980年代の小説『帝都物語』では蠱毒が物語のはじめで重要な役割を果たしていると説明している。
実際、『帝都物語』によって蠱毒という呪術が日本で広く知られるようになった。

中国の歴史や文化を学ぶ人ならその中で出会うのだろうけど、一般の外国人なら日本のアニメやマンガ、ゲームでこの毒について知る。
世界的には後者が圧倒的に多いから、海外では「日本版蠱毒」のほうがよく知られていて、これはいまや「日本文化」のひとつとして認識されている。
そういえばアニメ好きのトルコ人もこの毒を知っていて、たしか『銀魂』に出てきたからおぼえたとか言ってたな。
最近のアニメでは超能力者どうしが限定空間のなかで戦い合い、負けたら即死亡、強い者だけが生き残っていけるという『ダーウィンズゲーム』の発想は蠱毒に似ている。才能のある者を一堂に集めて戦わせ、最強のひとりを決めるという設定はアニメでよくありそう。
ということで古代中国人が生んだ恐怖の呪術は、現代では世界的には日本のポップカルチャーのアイテムになってますた。

 

おまけ

日本や中国で行われていた、クワガタ・カブトムシ・タランチュラ・サソリ・オオムカデなどを戦わせるという悪趣味な、いやエキサイティングなイベント「世界最強虫王決定戦」の元ネタは蠱毒じゃないだろうか。
ボクは見たことなくてよく知らんから、くわしいことはここを見てくれ。
*キングバブーンとはタランチュラのこと。

もっとも注目されたのは化け物肉食コオロギ リオックの存在であり、ヒヨケムシ、オオゲジ、オオカマキリ、ビルマブラウンをほとんど一方的に捕食(しかしオオゲジには反撃を許した)し、キングバブーンを戦意喪失させた。

虫王

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。