8月2日は「カレーうどんの日」。
カレーうどんは1910(明治43)年ごろ、近くのカレー屋にお客さんを奪われた東京都のソバ屋「三朝庵」が、起死回生の一撃として生み出したのが始まりという。
2018年に閉店した「三朝庵」はカレーうどんのほかにも、カツ丼やカレー南蛮を発明した店ともいわれる。
試行錯誤と好奇心のかたまりのような店で、まさに日本洋食界のエジソン。
この100年後、「カレーうどん100年革新プロジェクト」が2010年に8月2日をその記念日にした。
日付に深い意味はなくて、6月2日が「カレーの日」で7月2日が「うどんの日」だったから、その流れで「カレーうどんの日」になったらしい。
まぁ、うまけりゃ何でもいいんですよ。
そう。
日本の食べ物は基本的に味こそすべてで、美味しかったら何でもアリ。
インドで生まれイギリスを経由して日本へ伝わったカレーと、中国から伝わったうどんをコラボさせてまったく新しい味を生み出したのも、きっとそんな自由な発想があったらから。
「インド+中国」で日本人がつくり出した傑作としては他にもファミマの「キーマカレーまん」があって、シク教徒のインド人が「あれはアメージングだ!」と絶賛。
ただ日本人は海外から伝わった物を、自分たちの舌や好みに合わせて魔改造してしまう。
だから江戸時代にうどんを現在のような細長い麺にしたし(それまでのうどんは団子を押しつぶしたような形だったらしい)、カレーも「インドとはまったくの別もの」とインド人をうならせるほど日本化させた。
うどんについてはもう完全な日本食だ。
以下、個人的な経験から導き出された独断と偏見。
インド人の話を聞くと彼らは食に関してはかなり慎重で、変わった味や斬新なメニューを好まず、グルメでは冒険をしない。
その理由はインド人には宗教の“しばり”があるから。
イスラム教徒は豚肉やアルコールがダメだし、ヒンドゥー教徒は牛肉はもちろん、鶏も豚もすべての肉が一切食べられないヴィーガンの人もよくいる。
だから、「美味しければ何でもアリ」の原則は通じず、まず自分の宗教が許す範囲内の食べ物しか口に入れることができない。
日本にいるインド人が旅行に行っても、「ご当地グルメ」は原材料が分からなくてコワいから、インド料理店でカレーばかり食べるということがよくある。
北海道に行っても寿司やラーメンを食べることなくカレー、広島に行ってもお好み焼きではなくカレーを食べていたという話を聞くと、「旅行の半分を損してる…」と不憫に思ってしまう。が、宗教のタブーに触れるのは絶対に嫌だから、チャレンジではなくて安心・安全を選ぶとこれが彼らの最適解になる。
カレーうどんが好きな中国人がいて、彼の話では、日本人に比べると中国人も食には保守的で、いろいろな食べ物を組み合わせて新しい食べ物やお菓子を世に出すことが少ない。
そもそも中国人は自国の料理に強い愛着や誇りがあって、「われわれの料理は世界一ィィィィーーーーッ!」と思っているから(たぶん)、中国料理とインドや欧米などの海外の食べ物をくっつけるという発想にとぼしいらしい。
カレーや洋食はそれぞれの専門店で食べればよく、国内にあるもので十分美味しいモノを作れるから、両者を結びつけて新しい料理を考案するのは中国人的ではなくて、とても日本人的な発想と彼は言う。
カレーうどんだけじゃなくて、新しい食べ物を次々に生み出す能力にその中国人は感心していた。
幕末の1854年にペリーが下田にやって来ると、吉田松陰が小舟で近づきその船に乗り込んで、ペリーに新しい世界を見たいからアメリカに連れていってほしいと直談判した。
これは幕府の禁を破るものだったから、このことがバレた松陰は捕まって処刑されそうになる。
松陰の大胆な行動を見てペリーはこう思った。
「知識を増やすために生命をさえ賭けようとした二人の教養ある日本人の強い知識欲を示すもので、興味深いことであった。日本人は間違いなく研究好きで、道徳的および知的能力を増大する機会を喜んで迎えるのが常である。」
こういう日本人の好奇心旺盛なところが、新しい食べ物を発明する原動力になっているはず。
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> インド人の話を聞くと彼らは食に関してはかなり慎重で、変わった味や斬新なメニューを好まず、グルメでは冒険をしない。
> その理由はインド人には宗教の“しばり”があるから。
> そもそも中国人は自国の料理に強い愛着や誇りがあって、「われわれの料理は世界一ィィィィーーーーッ!」と思っているから(たぶん)、中国料理とインドや欧米などの海外の食べ物をくっつけるという発想にとぼしいらしい。
そういう理由も、確かにあると思います。
それに加えて、日本が「ユーラシア大陸の端に位置する島国」であることも関係しているのでは? つまり、外国から日本へ伝来する食材の種類が、他国よりも多いということです。
昔から、世界各国の食材が日本へ輸入され、日本人の好みに合うものが定着していったのです。次第にその種類も数を増やしてくるだろうから、それらがたまたま出会ったりとか、試行錯誤的に組み合わせたりとか、そういうチャンスも自然に増えていったのだろうと思いますよ。