世界に広がる慰安婦問題の誤解。「日本の罪」を責める外国人

 

広島に原爆が投下された8月6日、その悲劇を伝える写真をSNSにしたところ、名前から察するに英語圏の外国人さんからこんなメッセージがきた。

「Its sad but lets also not forget sins of Japan. Japan had also done so much brutally on other nations which are beyond comparison.」

それは悲しいことだが、日本の罪も忘れてはいけない。日本も他の国に対して、類例がないような残虐なことをした。

なるほどなるほど。
念のためにその具体例を聞いてみると、この人は「南京虐殺(事件)」と「慰安婦」を挙げる。
まぁ予想の範囲内だ。
ちなみにこの外国人は「comfort woman(慰安婦)」ではなくて、「sex slave(性奴隷)」という韓国の表現を使っていた。
これ以上くわしい話は聞いていないのだが、この言葉を使うということは当然、「日本は朝鮮半島の女性を強制連行した」、「中学生ほどの少女を戦地で性奴隷にした」という韓国の主張をそのまま信じていて、それを「sins of Japan(日本の罪)」と言っているとみて間違いはないはず。
こう主張する外国人はよくいるから、彼(彼女?)の反応は例外ではなくて残念ながら常識的だ。

でも、このブログで何度も何度も何度も言っているように、「強制連行説」と「性奴隷説」はその事実を示す根拠が何も見つかっていないことから、すでに否定されている。

まったく関係ない原爆投下と慰安婦問題を結びつけ、誤った知識から日本を批判する困った外国人が出てくる背景にあるのがこんな動き。

中央日報日本語版の記事(2021.08.14)

文大統領「慰安婦問題の解決、完全な光復に近づく道」

それまで民間で行っていた8月14日の「慰安婦の日」を、文大統領は2017年に「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」という国の記念日に指定した。
そうすれば毎年この日が近づくと反日感情が高まることから、この記念日制定について日本ではかなりの反発があった。が、そんな声に耳を貸す大統領だったら、いまの日韓関係は戦後最悪と言われるほど悪化していない。
きょうの慰安婦の日、文大統領はこんなメッセージをおくった。

「『被害者中心の問題解決』という国際社会の原則と規範をしっかりと守り、一人一人の名誉を回復し、心の傷が癒やされるように支援していく」

「光復」とは解放のことだから、ここでは「日本からまだ完全に解放されていない」という意味で、つまり、日本の”真の反省”や”心からの謝罪”がまだ必要とほのめかしているのだろう。
でも、2015年の慰安婦合意で両国政府が「最終的な解決」を確認し、当時の安倍首相が「心からのおわびの気持ち」を伝えて韓国側が日本から10億円を受け取ったことで、日韓の間では慰安婦問題は実質的に終わっている。
韓国側はこのときの約束をまだ守っていないにもかかわらず、文政権は日本に問題があって「未解決」と考えているらしい。
ただ最近、文大統領は韓日関係を重視していることもあって、今回は日本を直接批判することは避けたが、「人間の尊厳と権利を守るためには、歴史を正しく受け止めるべきだ」と言っているから、日本を遠回しに批判してはいる。
きょうは「慰安婦の日」だから、最低限このぐらいの日本非難はしておかないと国民に示しが付かないのだろう。

国民の反日感情に迎合し、こんな記念日を制定した韓国政府について読売新聞は社説でこう批判した。(2020/12/29)

合意の精神を踏みにじる文在寅政権の対応は、不誠実極まりない。日本政府は、国際社会にも理解を広げ、合意が漂流するのを阻止すべきだ。(中略)17年には、慰安婦記念日が設定された。事態を打開する見通しもなく、反日世論をあおるのは、無責任と言わざるを得ない。

慰安婦合意5年 「不可逆的解決」が骨抜きとは

 

最終的な解決を約束しておきながら、それと矛盾するような記念日をつくった文政権が「不誠実極まりない」と怒られるのは当たり前。
それとは別で読売新聞は日本政府に対し、国際社会に正しい理解を広めることを要求している。
外国人と付き合いのある日本国民にとって大事なのは、韓国の不誠実を責めることより、むしろこっちだ。
でも日本はこの点で消極的だから、読売新聞は別の社説でも政府の尻をたたいている。(2021/01/24)

慰安婦問題をめぐる誤解が国際社会に広がらないように、正確な事実関係と、解決に向けた日本の努力を粘り強く発信していかねばならない。

慰安婦問題 日本の努力を幅広く伝えたい

 

第三者の外国人が「sins of Japan」の具体例として“性奴隷”を挙げて、一般の日本人がそんな不当な非難に接しないといけない現状がある。
慰安婦問題についての海外への発信力では、積極果敢な韓国に対して日本は完敗していると思う。
外国人が「sex slave」という誤解から抜け出して「comfort woman」と正しく表記するぐらいに、政府は正確な事実関係や日本の努力を国際社会に繰り返し訴えてほしい。
誤解に基づく「日本の罪」、存在しない罪で日本を責めるのは見当外れもいいところ。
とはいえ、こういう誤解が世界に広がっているのは「日本政府の罪」と言っても過言ではない。
強制連行説をイメージさせる「従軍慰安婦」という表現を、不適切と閣議決定したのはいいことだ。
でも国外に対しても、韓国並みの積極さで事実をアピールしていってほしい。でないと、国際交流の妨げになる。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

「石を投げられる」。韓国政府の“反日”に苦しむ在日韓国人

ドイツの“少女像”まで利用するユン氏に、韓国国民「恥知らず!」

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

少女が“性奴隷”に!韓国の描く慰安婦像と歴史資料の天地の差

目的は?韓国に登場した、安倍首相が少女に土下座謝罪する像

 

5 件のコメント

  • その英語圏の人に、”欧米の闇の歴史をどう思っているか”を聞きたいですね。

  • これは私の経験ですすが、「我々はすでに反省し謝罪した。しかし日本はまだだ」と言うと思います。
    そんな人はよくいますから。

  • <<<我々はすでに反省し謝罪した。しかし日本はまだだ

    謝った証拠を見せてほしいですね。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。