明治時代の俳人・正岡子規の名前を知らなくても、日本で生まれ育ったなら、この句をどこかで聞いたことがあるのでは。
「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」
法隆寺を訪れたあと茶店で一服して柿を食べると、法隆寺の鐘の音が聞こえてきた。その響きに秋を感じとったいう。
そんな何でもない日常のワンシーンを詠んだこの句は、時代を超えて日本人の広い共感をよんでいる。
この俳句の秋の季語である「柿」は海を渡って、いまではイタリア語になっているのに現地の人はそれに気づいていないようだ。
柿はイタリア語で cachi(カキ)というらしい(日本語の「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」(かきくえばかねがなるなりほうりゅうじ)は、正岡子規の俳句。生涯に20万を超える句を詠んだ子規の作品のうち最も有名な句であり輸入)のですが、昔、イタリア人の友人に、日本語由来だよ、といっても信じてもらえませんでした(突然思い出した)。改めて調べてみたら、どうも cachi は複数形で単数だと caco になってしまうらしい。kimonoも複数形でkimoniになるんだっけ?
— Atsushi Igarashi (@50storms) June 26, 2019
日本語の柿は「Diospyros kaki」という学名になっていてフランス、ドイツ、アメリカ、チリなどでも「カキ」が使われている。
でも上と同じく、フランス人にこれが日本語由来の言葉だと説明しても、「またまた」と信じてもらえなかった日本人がいたから、欧米ではほとんど知られていない予感。
イタリアは以前はヨーロッパ最大のカキ輸出国だったけど、いまではスペインのカキに押されてその座を失ってしまった。
Italy used to be the largest kaki exporting country in Europe but export has diminished significantly due to the success of the Spanish kaki export.
ヨーロッパの秋の味覚で、日本語が使われている例はまだ他にもアリ。
ドイツで秋の食材といえばやっぱりカボチャで、ドイツ人はこれでよくスープを作る。
知人のドイツ人が近所のスーパーで撮って送ってくれたこのカボチャの写真には、とても見づらくてソーリーなんだが、「ホッカイドー」と書いてある。
そのドイツ人は日本に来る前から、「ホッカイドー」というカボチャを知っていた。
*「Hokkaido Kürbis」(キュルビスはカボチャの意)
彼はそれをカボチャの名前と理解していたから、あとで日本には北海道があって、それがこのカボチャの由来になったと知って驚いたという。
日本人ならその逆だ。
北海道がドイツでカボチャの名前になっていると知ったら、「マジで?なんで?」となるはず。
ドイツで日本人が日本のカボチャ栽培を始めたことがきっかけで、この名前になったらしい。
イタリア・ミラノ在住の日本人がSNSで、近所のスーパーに行ったら「ZUCCA HOKKAIDO」(北海道カボチャ)を売っていたと投稿しているのを発見。
どうやらすでにイタリア・デビューを果たしていたらしい。
柿やカボチャといったヨーロッパの秋の味覚が、日本語の名前で呼ばれているのは面白い。
近年では「ハイク」もヨーロッパで知られるようになったという。が、「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」のしみじみとした秋の情感は日本人にしか分からないだろう。
*いまニュースでブランド柿『天下富舞』の初競りが起こなわれ、2個が92万円チョイで販売されたというのを見た。こんな柿は海外にはないかも。
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