米先住民の幽霊踊りが、白人の「ウンデット・ニーの虐殺」へ

 

アメリカ中西部にあって、「アメリカのハートランド(中心地)」なんて呼ばれることもあるのがアイオワ州。
ヨーロッパに由来するニューヨーク州やペンシルベニア州なんかとは違い、この州の名前はこの地に住んでいたインディアン(先住民)のアイオワ族からとられた。
「アイオワ」とはスー族の言葉で「眠たがり」または「美しい土地」を意味するらしい。
ここがアメリカの29番目の州になったのは1846年12月28日、175年前のきょうで、日本でいえばペリーがやってくるすこし前のこと。

そしてあした12月29日は、1890年のこの日にサウスダコタ州で「ウンデット・ニーの虐殺」が行われた悲しい日だ。
ヨーロッパから移住してきた白人によって、300人ともいわれるスー族の人たちが殺害された。
これからその悲劇について書いていこう。

 

このころ先住民のインディアンは白人に土地を奪われて、貴重な食べ物だったバッファロー(アメリカバイソン)は絶滅の危機にひんしていた。
生活環境を徹底的に破壊され、深い苦悩と絶望のなかにいた米先住民の”希望”となったのが、ウォボカという予言者(救世主)が始めたゴーストダンス
この踊りをすれば死者(先祖)の霊がよみがえり、白い侵略者どもはこの土地から消えて、たくさんのバッファローが戻ってきてかつての楽園が復活すると信じられた。

銃をはじめとする西欧の絶対的な武力に圧殺されそうになった先住民が、最後のよりどころとして、呪術の力で対抗したのがゴーストダンスといえる。
でもこれは精神勝利のようなもので、近代兵器に原始的信仰が勝てるはずもなし。

 

ゴーストダンスと一緒に、これを着れば銃弾をはね返すことができるという「ゴースト・シャツ」が登場した。

 

スー族が着ていたゴーストシャツ

 

白人側はゴーストダンスをどう見たか?

「彼らは何をやってるんだ?好きなだけ踊ってろよ。hahaha」となって、無視できたらまだよかった。
でも実際には、これをインディアンの大規模な反抗や武力攻撃の予兆と感じて、驚き恐怖する人が多かった。
結果、ゴーストダンスは白人による弾圧を招き、多くの先住民が殺されることとなる。

その過程でサウスダコタ州のウーンデッド・ニーで1890年12月29日、降伏したスー族の一団が武装解除をするなかでアメリカ陸軍第7騎兵隊による虐殺事件が起きた。
そのきっかけは、スー族の男性がゴーストダンスを踊り始めたとかほかの説もあって、ハッキリとはわからない。
確実なことはこの「ウーンデッド・ニー」で、新鋭のスプリングフィールド銃を持った白人兵士に馬も子どもも狙い撃ちにされ、丘の上からは山砲を撃ちこむ無差別攻撃が行われて、女・子どもが大半だったスー族の一団の多くが殺害されたこと。
スー族は300人ほどの犠牲者を出して、遺体は雪のなかで3日間放置されたという。

 

 

ウンデット・ニーの虐殺をした側の人たちと、その地獄を生き延びたスー族の人たち(下)

 

 

 

スー族

 

Wounded Knee Massacre  にこの惨劇を目撃した人の証言がある。

Little boys … came out of their places of refuge, and as soon as they came in sight a number of soldiers surrounded them and butchered them there.
I know the men did not aim deliberately and they were greatly excited. I don’t believe they saw their sights.
(スー族の)少年らは……避難所から出てきて、兵士の視界に入ると、すぐに取り囲まれて虐殺されたのです。
兵士たちはしっかり対象を狙ったわけではなく、とても興奮していました。彼らが照準器を見ていたとは思えません。

*以下の原文は上のリンク先にあり。

「無力な子供や赤ん坊を抱いた女性が2マイル(約3キロ)も離れたところまで追いかけられ、兵士によって容赦なく切り刻まれていることを知り、恐ろしくなった。…」

「この高い丘に立つと昔を思い出す。うねった谷のあちこちに殺された女や子どもが積み重なっていたんだ。あの光景は忘れられない。」

この「ウンデット・ニーの虐殺」の後、先住民からゴースト・ダンスは消えていき、兵士たちのなかには戦利品として持ち帰った「ゴースト・シャツ」を制服の下につける者もいた。

 

この“功績”によって兵士らは、「戦闘においてその義務を超えた勇敢な行為をし、若しくは自己犠牲を示したアメリカ軍人」と認められ、アメリカ軍の勲章では最高位にある名誉勲章(Medal of Honor)が授与された。

でも価値観が大きく変わったいまでは、このメダルをはく奪する動きが議会で進んでいる。

 

 

名誉勲章とゴーストダンス

 

 

 

 

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1 個のコメント

  • CUSCOというグループのアルバム『APURIMAC3』のテ主題がネイティヴアメリカンなので1曲目のGHOST DANCEはそのダンスの事かと。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。