【先進国でモノ供養】外国人がおどろく、日本人の発想や信仰

 

きょう2月8日は、言わずもがみもなの「郵便マークの日」。
1887(明治20)年のこの日、逓信省(ていしんしょう:いまの日本郵政)がシンボルマークを逓信の「テイ」から漢字の「丁」、さらに「T」になって「今より (T) 字形を以って本省全般の徽章とす」と発表した。
でも14日に「〒」に変更されて、現在にいたる。
これには、「テイシンショウ」の「テ」をモデルにした「〒」が採用されたのに、間違って「T」と告示してしまったためだとか。
*郵便マークの由来には他の説もあり。
でも、「テから〒が作られました」説だと分かりやすくてスッキリ。

むかしは郵便マークが人の顔になった「ナンバーくん」という顔郵便マーク(〠)もあったのだ。
そしていまでは、日本郵政のマスコット・キャラに「ぽすくま」がいる。

 

 

日本人が「アフリカ」と聞くと、マラリアとかの病気や治安の悪さを想像して恐れおののくと思う。
でも、アフリカ人が神社のこま犬を見て「恐怖」を感じることもある。

アフリカ人と日本人の宗教観 神社で「恐怖」を感じたわけ

石や木で人や動物の形を作り、それに神霊が宿ると考え、人びとが崇(あが)める「偶像崇拝」が日本ではまったく禁止されていないから、仏像でも神像でも何でも自由につくって祀ることができる。
でも、それが厳禁されているイスラム教やキリスト教の信者からすると、それを見て恐ろしさを感じることもあるらしい。
きょう2月8日に行う日本の針供養は、「偶像崇拝」が禁止されている文化圏ではきっと考えられない、あってはならない禁断のイベントだ。

折れたり曲がったりして、もう使えなくなった針を豆腐やこんにゃくに刺し、供養してお寺や神社におさめる。
針供養は平安時代の9世紀に行われた記録があるから(清和天皇が針供養の堂を建立した)、この儀式には千年以上の伝統がある。

 

昭和の針供養

 

日本人にとって物とは、ただの物でしかない。
だからゴミ箱にポイっと捨てることができるけど、それができないモノもある。
人形やお守りを「燃えるゴミ」と一緒に捨てることには、普通の人なら抵抗を感じるだろうし、使い終わった針やメガネを供養の対象とし、手を合わせて感謝の気持ちを表す人もいる。
こうしたモノ供養には、人を撮影した写真、手紙や名刺、携帯電話、さらに炎上したネット画像という「え?」というモノまで幅広くある。

物品などの供養

変わったところでは、(全国でもここだけと思うけど)、熊本県の若宮神社では農業用トラクターを供養する「ガランザサ祭り」が行われている。
むかしむかし加藤清正公の乗っていた馬が病気になって、この神社に生えていたササを食べさせたところ、「テッテレー!」と回復した。
そんな話から、若宮神社の神は馬の神さまとして信仰されてきて、毎年1月には家畜やペットの無病息災を祈る「ガランザサ祭り」が開催されるのだ。

昭和のころには農耕用の牛馬にこの儀式をしていたけど、もうそんな時代じゃない。
いまでは代わりに、トラクターなどの農業用機械にお祓いをして、安全祈願をすることがあるという。

日本では古代から木や石などの自然物から身近な小物まで、いろんな物に魂や霊魂が宿るという信仰があって、現代の日本人もその考え方を受け継いでいる。
「〒」の郵便マークを人の顔「〠」にしたり、「ぽすくま」を作ったりする発想が自然に出てくるのも、千年以上になる偶像崇拝の伝統や文化があるからだろう。

 

 

こんな日本人の信仰を外国人はどう思うのか?

日本ではモノ供養が行われていると話すと、知人のアメリカ人やイギリス人は「マジか!」と目を丸くした。
母国でそんなイベントは聞いたことがないし、その発想はユニークで斬新だと。
欧米にでは死者に敬意や感謝の気持ちを伝えるために、「memorial service(追悼式)」をすることはある。
これはとても真面目で厳(おごそ)かなセレモニーだから、針やメガネに対して行う様子を想像すると、現実感ゼロでコメディーとしか思えない。
こま犬を見て「わたしを怖がらせないでください」と言うアフリカ人もいれば、こんなこと言う欧米人もいる。

同じアジア人で仏教の影響の強いタイ人も、「世界有数の先進国なのに、モノの供養をしてるなんてすごく不思議です」と言う。
ノーベル科学・物理賞をいくつもとっていて、世界で初めて小惑星の表面から試料を持ち帰った探査機(はやぶさ)をつくり出す一方で、毎年いろんな日にモノ供養を行っている。
そんな日本人はやっぱりスペシャルだ。
古来からモノに神や霊を感じ、日本人はそれに感謝や敬意の気持ちを表してきたし、これからもその伝統は引き継がれていく。
針のような小さなモノにも心を込めて手を合わせる精神と、ノーベル賞クラスの発見はきっと結びついている。

 

 

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2 件のコメント

  • > いまでは代わりに、トラクターなどの農業用機械にお祓いをして、安全祈願をすることがあるという。

    もう今ではほとんど見ませんけど、ほんの20年くらい前まで(つまり20世紀には?)、正月の締縄飾りを自動車のフロントグリルや自転車の前カゴに付けたりしてましたよね。ミニサイズの鏡餅をフロントガラスの端に置いたりもしてました。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。