山梨県にある店でシカの肉を売っているのを知って、「本当ですか!」とインド人がマジでびっくりした。
って話をさっき書いたのですよ。
今回はそのオマケで、シカに関する日本の文化について書いていこう。
・生活道具
縄文時代の遺跡から、ご先祖さまはシカの肉を食べていただけではなく、その骨や角から、釣り針、魚を獲る銛(モリ)、ヘアピンなどいろいろな道具を作ったことが分かっている。
・薬
いまの日本で5月5日は「薬の日」になっている。
推古天皇のいた611年のこの日、女は薬草を、男は若いシカの角(鹿茸:ろくじょう)を取りに行く「薬狩り」をした。
そんな日本書紀の記述から、5月5日が「薬の日」となる。
令和のいま「鹿茸」なんて、知る人ぞ知るレアアワード。
でも昔の日本人には常識で、鎌倉時代に兼好法師が書いた徒然草にはこんな文がある。
「鹿茸を鼻に当てて嗅ぐべからず。小さき虫ありて、鼻より入りて、脳を食むと言へり」
鹿茸とはシカの角を切って乾燥させて、粉末状にした薬のこと。
これは強壮剤として用いられた。
これを鼻にあててニオイを嗅(か)ぐと、そこから小さな虫が入ってきて、脳を食べる(バカになる?)という。
ホントかどうか知らんけど、とにかく日本書紀や徒然草にこんな記述があるほど、日本人にとってシカは昔から身近な動物だったのだ。
・Jリーグ
日本でシカの角は伝統的には薬、現代では鹿島アントラーズのロゴで使われている。
アントラー(Antler)とは鹿の枝角のこと。
ロゴのデザインは鹿島神宮のシカにちなんだもので、シカのように広く愛されて、戦いの時はその鋭い枝角で立ち向かって勝利を目指す、という意味があると公式HPで説明している。
(クラブ名の由来)
以前、「鹿島」という漢字を見て「しかしま」と誤読する外国人がいた。
昔の日本人は鹿を「カ」の一音で呼んでいて、いまでも鹿島や鹿児島なんかの地名、ポロシャツの「鹿の子」にその影響を見ることができる。
鹿の子を「しかのこ」と読んでしまうと、「アホの子」と思われてしまうかも。
イノシシの肉は江戸時代には「山くじら」と呼ばれた。
・肉
馬肉を「さくら」、猪肉を「ぼたん」、そしてシカの肉を「もみじ」と言う。
この由来には、馬肉は空気に触れるとキレイな桜色になる、「獅子に牡丹(ぼたん)」という言葉の獅子を猪に置き換えた、シカは秋の季語だから紅葉を連想した、といった説がある。
・シカト
シカ肉を「もみじ」と言うようになった理由としては、花札の「鹿にもみじ」の絵札から連想したという話もある。
この説は事実かどうか分からないが、ハッキリ確認されているものもある。
ラインでメッセージをしても相手から返事がない場合、「シカトすんなやっ」と日本人なら叫ばずにはいられない。しらんけど。
この「シカト」の由来は花札だ。
10月の札に、鹿が「そんなん知らんし」みたいに横を向いている絵が描かれていて、鹿十(しかとう)というダジャレからこの言葉が生まれた。
「ぷいってしてくださいまし」
・奈良のシカ
「日本人と鹿」で世界的に有名なのは、奈良にいる自由すぎるシカ。
興福寺などのお寺をバックにシカがのんびり歩いていたり、そこらへんに座っている光景を見たら、外国人なら興奮せずにはいられない。
言い伝えによると、767年に春日神社が建てられた時、主神の建御雷命(たけみかづちのみこと)が鹿島神宮から白鹿に乗ってやってきた。
それで奈良のシカは「神鹿(しんろく)」として、人々から敬意を払われるようになる。
シカも神の使いとして崇拝の対象になって、むかしはシカを見ると人間が輿(こし)から降りて挨拶をした。
これでシカもお辞儀を学習した、というユニークな説がある。
こんな感じに、日本人とシカは古代から日本列島で共生してきた。
でも、現在これはノーサンキュー。
シカは人間界に大きなダメージを与える「キングオブ害獣」だから、一匹でも多く駆除しないといけない。
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