日本に外国の文化を伝え、逆に外国の文化を日本に紹介する。
歴史的には、互いを行き来する遣唐使や使節団などのヒトがその役割を果たしてきた。
でも時代は変わって、いまではゲームが有能な「文化大使」になることもある。
『ファイナルファンタジー16』が2023年の夏に発売されることが決まって、公開されたPR動画がこちら。
FFの初期のころと比べると、このクオリティーはもう映画と変わらない。
この分野での技術の進化はおそるべし。
そんな映像は置いとくとして、ここで取り上げたいのは召喚獣という便利なヤツラ。
すさまじい攻撃力をもつモンスターを異世界から呼び寄せて、敵と戦わせる召喚獣はいろんなゲームやアニメで出てくる。
例えばリヴァイアサンとベヒーモスは、この分野では知らない人はいないほど有名だ。
でもこの元ネタはどうだろう?
この二頭はもともと、キリスト教やイスラム教の聖書に出てくる巨大生物であることを知ってる人は少ない。
神がこの世界を創造した時に、海のリヴァイアサンと陸のベヒーモスを二頭一対で造りだした。
召喚獣としてはバハムートもド定番だ。
これはイスラム世界に出てくる世界魚(クジラ)のこと。
一番下にバハムート、その上が牛がいて、その背中に立っている天使が大地を支えているという世界観がある。
大地を支える天使を支えている牛を支えるバハムート
上の映像に出てくるオーディンとは、北欧神話に登場する戦争と死をつかさどる神のことで、イフリートはイスラム教の聖書クルアーンに出てくる「ジン」(魔人、精霊)のこと。
ちなみに女性だと「イフリータ」になる。
ジンについてはこの記事を。
インド神話の神鳥ガルーダや、ヒンドゥー教の最高神シヴァもいれば、ギリシア・ローマ神話に登場する神のタイタンもいた。
聖書に出てくる化物や魔人、世界中の神々や聖獣など、日本のゲームで召喚獣はナンデモアリで闇鍋の具のような扱いを受けている。
映像技術がおっそろしく進化したとしても、使われてる材料はとても古いのだ。
数年前、東ヨーロッパから来たリトアニア人を、静岡県にある温泉で有名な寸又峡へ連れて行った時のこと。
そこでこれを見た彼は「あれは、ひょっとしてカッパじゃないか?」と質問する。
間違いなく河童だけど、それがナニか?
話と聞くと、彼が好きだったゲームに「kappa」というお気に入りのキャラクターがいて、この像の見た目がそのキャラとそっくりだったから驚いたという。
「ひょっとしたら」と思ったら、やっぱりそうだった。
「kappa」のモデルは日本の妖怪だったことを初めて知り、「マジかっ!すっげえええ」とよろこぶリトアニア人がそこにいた。
ちなみにkappaも、頭のお皿が割れると力がなくなるらしい。
そんな彼と伊勢神宮へ行った時にはこんなコトがあり。
ここで祀られている神は天照大神といって~と説明していると、「ちょっと待ってくれ、アマテラスだって?」と彼が話を止めて聞いてくる。
このリトアニア人だけじゃなくて、ベトナム人も同じように驚いた顔をしている。
2人がむかしやったゲームで「アマテラス」というキャラがいたから、その名前は覚えていたけど、それについて深く考えたことはない。
でも、その正体が突然分かった。
あのアマテラスはこの伊勢神宮で祀られていて、しかも神道の最高神だと知って、「その情報だけで、今日ここに来た価値があった」と2人ともうれしそう。
カッパと同じく、ゲームキャラの元ネタが分かると驚きや感動があるし、それについて話を聞くと日本文化の理解も深まる。
リヴァイアサン、ベヒーモス、バハムートの出どころは聖書だと知って、「ほ~」と感心する日本人もいるでしょ。
ただゲームのアマテラスを知らないボクとしては、それがどんなキャラか気になる。
スライムみたいな雑魚キャラなら国辱だ。
ほかにも、幕末にやって来て開国を求めたペリーは知らないけど、織田信長なら知ってるというアメリカ人もいた。
もちろんそれは『信長の野望』(Nobunaga’s Ambition)の影響。
アメリカではペリーよりも、織田信長のほうが絶対に知名度が高いと彼は言う。
ゲームでは、内容やキャラの見た目を楽しむだけではモッタイナイ。
仮想空間といっても、それはリアル世界にあるいろんなパーツを組み合わせて創造したものだから、元となったものを見つけると知識が増えたり、すでにある知識とぶつかって新しい発見があったりする。
ゲームが異文化を知るきっかけになったり、それで現実世界が広がることもある。
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