「日本人と殉死」ということで最も有名な人物といえば、明治天皇に殉じて刀で自害した乃木希典でしょ。
きのうそんな記事を書いたのですよ。
日露戦争で日本を勝利に導き、軍人というより「軍神」のように国民から尊敬された乃木将軍。
そんな彼の功績に敬意を表して、いま東京都港区にある「幽霊坂」は「乃木坂」へ名前を変えられた。
乃木坂46は結果的には、死後の世界でも明治天皇に仕えようとしたこの忠臣に由来する。
21世紀のいまとなっては乃木坂よりも、江戸時代に呼ばれていた「幽霊坂」のほうが気になるのでは?
東京にはほかにも文京区、新宿区、千代田区などに 幽霊坂がある。
そんな地名が付けられたのは江戸時代、そのあたりは昼間でも薄暗くて人の気配も無く、幽霊が出そうな雰囲気マンマンだったからだろう。
もちろん根底にあるのは人びとの恐怖心だ。
上と下を結ぶ「坂」には、「境(さかい)」が語源になったという説もあるから、この世とあの世を結ぶところ的な発想が江戸の庶民にあったのかも。
車社会になったせいか、「坂」は聞いたことないけど、トンネルや建物とかの心霊スポットなら令和の日本にも山盛りある。
幽霊はまさしく神出鬼没。
スマホを見ても位置情報なんて分からないから、どこでどんなタイミングで出会うか誰にも分からない。
運悪く相手が悪霊の場合、「まあ待て。話せばわかる」なんて言っても、「問答無用」と命をとられるかもしれない。
五・一五事件の犬養毅首相みたいに。
でも、備えあればうれしいな。
ネットを見ると、幽霊や化け物といったいわゆる怪異と出会ったときには、「これを唱えればOK」という情報が載っている。
悪霊を退散させるためには、伝統的に 呪文を唱えることが日本のお約束。
ただ相手によって効果的な呪文は違っていて、例えば幽霊には大日如来のパワーが込められた 光明真言(こうみょうしんごん)がすこぶる有効だ。
「オン アボキャ ベイロシャノウ~」と唱えれば、幽霊は恐れおののき退散すること間違いなし。
もし化け物と出会ってしまったら、慈愛の心で民衆を救護する不動明王の力が宿る 慈救呪(ジグシュ)をぶつけてやってくれ。
妖怪や鬼には 尊勝陀羅尼(そんしょうだらに)がグッド。
百鬼夜行と出くわした場合、この陀羅尼(だきに)を唱えたり、それを書いた護符を身につけることによって、不幸から逃れられると『今昔物語集』にも書いてある。
それぞれ具体的に、どれほど効果的かは自分で確かめるように。
呪文はほかにも「なんまいだぶ(南無阿弥陀仏)」や「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九字(九字護身法)もある。
相手によって唱える呪文が違うから、幽霊や妖怪と会ってもあわてず急がず、最適解を見つけて口にしよう。
分からなかったら、相手に聞いてみるのもいい。
「あっ、自分、幽霊なんで光明真言によわいっす」と、思わず弱点をばらすウッカリさんかもしれない。
まあこのレベルなら退散させる必要もないが。
百鬼夜行
こんな「魔物」は海外にもいるだろうし、それを退散させる呪文的なものもあるに違いない。
イギリス人に聞いてみたら、こんなことを言う。
「う~ん。考えたことないけど、悪魔や悪霊を払う儀式(エクソシズム)でよく十字架を使うから、あえて言えばソレかな」
日本では症状にあった薬を服用するように、幽霊、化け物、鬼ではそれぞれ対応策が違う。
十字架のほかにそんな魔除けアイテムはあるか聞いたら、「んなもん無い」とイギリス人が即答。
一神教のキリスト教では祈る相手は神だけで、それ以外のナニカの力にすがることは厳禁されているから、彼には十字架しか思い浮かばない。
そのイギリス人の知らないところで、魔除けのアイテムはあるかもしれない。
スペイン人に聞くと、あちらでも十字架が悪霊への武器になっていて、もしそれを持っていない場合、胸で十字を切れば神の加護を得ることができて、悪霊を退散させられるらしい。
アメリカ人の話では、悪霊払いの方法は信仰する宗教や、個人の考え方によって違っているからバラバラ。でも、アメリカは伝統的にキリスト教の影響が強いから、十字架を使うのが多いんじゃないの?とのこと。
一神教のキリスト教で十字架は、悪霊退散ツールとして絶大な威力をもっている。
だから、光明真言や慈救呪、尊勝陀羅尼などすべての力を含むオールマイティーだ。
悪霊だけでなく、狼男でも吸血鬼でも十字架を見せれば、「うぎゃああああああ」と叫び声を上げて逃げていく(たぶん)。
キリスト教世界において、十字架は悪魔・悪霊払いの切り札やジョーカーだけど、最近の若い神父には、それでも立ち向かえない軟弱者が多いらしい。
英BBCの記事(2016年10月19日)
神父は、カトリック教会の悪魔払いの儀式について書いた本を手にした。バラバラにならないよう、テープでつないである。机の上に積まれた書類の中から、悪霊を退散させるのに使う十字架を見つけた。
悪魔払いは若い神父には「怖すぎる」 後継者不足の悩み
きょう9月14日は4世紀に聖太后エレナがゴルゴダの丘で、キリストが磔(はりつけ)にされて処刑された聖十字架を発見したといわれる日だ。
キリスト教を初めて信仰したローマ帝国の皇帝がコンスタンティヌス1世で、その母親がエレナさん。
そのエレナがエルサレムで聖十字架を見つけたこということで、きょうはそれを祝う「十字架称賛の日」になっている。
ふつうの十字架と違って、キリストのものは特別に「聖十字架」と呼ばれる。
聖十字架を発見したエレナと、息子のコンスタンティヌス1世
本日のまとめ
幽霊や悪霊、悪鬼などの「怪異」に国籍は無いけど、所属する文化圏はある。
だから日本の怪異に十字架を見せても、「なにそれイミわかんねー」とか言われて命を奪われるのがオチ。
やっぱり薬と一緒で、目的と方法はセットなのだ。
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