「謝れ!」と怒られて謝罪したら、今度は別の人から「なんで謝ったんだ!」と怒られた。
そんな理不尽な出来事が最近、静岡県の中学校で発生した。
そのことを書く前に、まずはキーワードの「ミサンガ」を押さえておこう。
これは17世紀ごろ、ポルトガルの教会で作られた「フィタ」という紐(ひも)が始まりと言われていて、願いごとを込めて編んだフィタを、教会や村の人たちが手や足につけてお守りにしたという。
日本では90年代にJリーグが誕生したころ、サッカー選手がチームの勝利などを祈って、手首や足首にミサンガをつけていたことから人気が広まった。
ミサンガにはひもが切れると、願いごとがかなうという縁起かつぎの意味がある。
20代の女性講師が体育の授業で、男子生徒が足にミサンガを付けているのに気づいた。
体育の学習に必要ないと判断した講師は、そのミサンガをほどいて生徒に手渡す。
すると、保護者がこの対応に激怒したと静岡新聞の記事にある。(2022.11.4 )
保護者が「ミサンガが駄目という規則はあるのか」「足に触れたのはセクハラだ」などと主張し、女性講師の謝罪や学校全体への周知に加え、この生徒に関わらないよう学校と市教育委員会に求めた。
ミサンガ注意の教員へ保護者抗議→学校謝罪 「過剰では…」対応に疑問の声 教育現場の苦慮浮き彫り 浜松の中学
生徒が学校へ登校しなくなったことを重くみた学校側は、生徒と保護者へ何度か謝罪し、学年集会を開いて「女性講師に不適切な指導があった」と生徒に説明した。
学校が謝罪しても保護者の怒りは収まらず、女性講師の処分を求めたという。
この出来事が広まると、今度は別の生徒の保護者から「過剰と思われる要求に、なぜ応じるのか」、「謝罪は過剰な対応ではないか」と学校を批判する声が上がって、渦中の女性講師は体調を崩して授業を行うことができなくなった。
これにネット裁判官の意見は?
・ミサンガすら禁止とかムショじゃねえんだからさ
服装規定もうやめない?
・これで教師叩くのは無理があるだろ
・見て見ぬふりしとけば何も起きなかったのに
・装飾品の禁止とかになっとるやろたぶん
・やはり無理に外すと呪いをくらうのか
では、この一件を外国人はどうみるか?
日本の会社で働くブラジル人男性に聞いてみると、まず意外なことに彼は「ミサンガ」が分からなかった。
首をひねる彼に写真を見せると、
「ああ、それですか。ブラジルではよくホームレスの人が売ってますね。あとビーチでも売ってます」
とのこと。
「ミサンガ」というポルトガル語は紐ではなくて、石や貝殻とかで作られたビーズ(玉)の部分を意味するという。
彼が見たブラジルのサイトによると、大昔にアフリカ人が貝をコインとして使っていて、いつしかそれを紐に付けて手足に巻いて、悪霊払いとして使われるようになった。
それがブラジルに伝わって、いまではアクセサリーのひとつになっている。
赤は恋愛用とか、色によって意味があるらしい。
上の件については、ブラジルの学校なら、生徒がミサンガをしていても先生は何も言わないから、こんな問題が起こることはない。校則で禁止されているのなら生徒や保護者に責任があるし、そうでないのなら学校の対応に問題がある。でも、こんなのは大したことじゃないし、これで不登校になる生徒が理解できないという。
そう話した彼はこんな指摘をする。
「これって、保護者はブラジル人じゃないですか?日本人だと不自然な気がします」
記事にはそこまで書いてないから分からないが、ボクもそんな気配は感じた。
彼の話によると、日本とブラジルでは教師の立場がまったく違う。
ブラジルの教師は安月給で重労働だし、社会的な評価もハッキリ言って低い。優秀な人は教師になろうとしないから、最近では教師の地位をもっと高くしようとする動きもある。
多くの親は教師を見下しているから、子供に何かあったり教育で不満があるとすぐに怒る。
ミサンガを取られただけで、教師に謝罪や処分、さらに集会を開いて全生徒への周知を要求するのは日本人だ「とやりすぎ感」があるけど、ブラジル人なら納得できる。
ミサンガを外されたことを、何か自分を否定されたように感じて、教師に激怒するのはブラジル人ならありそうだと彼は言う。
モンスターペアレントと言うように、常識を超えた理不尽な要求をする保護者は日本人にもいる。
だから、ここでは保護者の正体は置いておこう。
学校が保護者に謝罪しても収まらず、事態はかえって大きくなって、講師は仕事ができなくなってしまった。
一方に謝罪したら、今度はそれが理由で別の人に怒られたというのは、日本でも教師の地位の地盤沈下が起きているとしか思えない。
はじめに簡単に謝ったことがそもそも誤りだった。
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この女性講師が外国人だったら、保護者は彼女に謝罪を要求しなかっただろう。