おっと忘れてた。
きのう11月25日は1177年に、「モンジザールの戦い」があった日だ。
高校世界史の教科書にはたぶん載っていないドマイナーな戦いだから、日本人の90%以上が「ナニソレ状態」だと思われる。
11世紀末から約200年にわたってヨーロッパ諸国は、イスラム勢力の統治下にあったキリスト教の聖地・エルサレムを取り戻すために、何度も十字軍を送って激しく戦った。
このなかであったのがモンジザールの戦い。
まず第1回十字軍で、エルサレムを征服したヨーロッパ側はエルサレム王国を建てる。
その後、イスラム世界の英雄サラディンとエルサレム王国がモンジザールで激突し、イスラム軍が負けてキリスト教勢力はエルサレムを守り抜く。
これ以降も両者は何度もバトルを繰り広げて、多くの命が失われ、最終的にはイスラム側がエルサレムを取り戻すことに成功。
どちらも自分たちがエルサレムの真の所有者と考えていたから、「不当な支配」なんて主張はどっちもどっち、上品に言えば目くそ・鼻くそだ。
いまカタールで開催されているサッカーW杯では、この十字軍の”亡霊”が問題になっている。
米CNNニュース(11/26)
イングランドファンの十字軍の衣装、「挑発的」とFIFA カタールW杯
サッカーやラグビーなどのスポーツ大会で、イングランドのサポーターが十字軍の格好をしてチームを応援することが昔からある。
これはイングランドの守護聖人、聖ジョージの仮装らしい。
今回も彼らは、十字架のデザインのある騎士っぽい姿でスタジアムへ入ろうとしたら、入り口で止められて入場を拒否された。
その理由について国際サッカー連盟(FIFA)は、「アラブ地域や中東にいる状況で十字軍の衣装を身に着ける行為は、イスラム教徒から挑発的」と説明する。
この「十字軍NG」に日本のネットユーザーはこう思った。
・サラディンにボコられただけやん
・日本サポーターのスモウレスラーの格好はあまりにも戦闘的
・多様性云々言うならこれも認めないと
・フーリガンの本場は違うな
・何だか面倒くさいなあ…
・アラビアのロレンスの格好で現れてたら良かったなw
イスラム・キリスト教徒による十字軍の戦いなんて、日本には1ミリも関係ないから他人事。
でも、きょねん起きた事態は自分事だ。
十字軍の衣装はイスラム教徒に挑発的だからダメ、という出来事で思い出したのがこの騒動。
中日スポーツ(2021年7月17日)
韓国選手団「反日英雄」横断幕 IOC要請で選手村から撤去…五輪憲章に違反「戦争に赴くイメージ想起」
東京五輪のためにやってきて選手村に入った韓国選手団は、「反日英雄」の李舜臣の言葉をアレンジした横断幕を掲げた。
豊臣秀吉が16世紀に朝鮮出兵を行った際、将軍・李舜臣は日本軍を撃破したと韓国では考えられていて、彼は「救国の英雄」として全国民から尊敬されている。
日本軍が近づいてきて味方が戦意を失うなか、李舜臣は朝鮮国王に「臣(李舜臣)にはまだ、12隻の戦船が残っています」と言って出陣した。
韓国選手団がこの言葉を採用し、「臣にはまだ5千万国民の応援と支持が残っております」というドでかい横断幕を選手村に掲げたから、政治的宣伝を禁止した五輪憲章に違反していると問題になる。
騒ぎが大きくなると大韓体育協会は、日本が過度に敏感になっているだけで、これは選手たちに元気を与えるものでまったく問題ない、と釈明したのだが、国際オリンピック委員会(IOC)はそれを認めず、韓国側に横断幕を撤去させた。
日本との戦争をイメージさせる言葉は日本にとっては挑発的で、国際協調を理想とする五輪には不適切だ。
それにこれだとオリンピックではなくて、ただの日韓戦になってしまう。
ロシアで五輪が行われて、現地入りした日本選手団が日露戦争での名言「本日天気晴天なれども波高し」を掲げるのはアウトだろう。
ヨーロッパによる十字軍の遠征は、日本なら秀吉の朝鮮出兵になる。
その騎士のコスプレがダメというのなら、これから韓国で開かれる国際大会では「朝鮮侵略を連想させて挑発的」という理由から、サムライ姿の日本人はスタジアムに入れなくなるかも。
いまFIFAやIOCは政治的宣伝や挑発的行為には超厳しいから、その可能性はゼロではない。
「何だか面倒くさいなあ…」と思っても、多方面に配慮しないといけないのが21世紀ってやつ。
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