干支からわかる、日本とベトナム(韓国・中国)との違い

 

ベトナム戦争が行なわれていた1968年1月30日、北ベトナム軍が南ベトナム&アメリカ軍に対して、各地で一斉に奇襲を仕掛ける。
効果は絶大だ。
これによって北ベトナム軍は首都サイゴンのアメリカ大使館を占拠するなどし、南ベトナム政府とアメリカに打撃をあたえる。
結果、ベトナム戦争においてこの「テト攻勢」は、北ベトナム軍が有利な立場に立つ大きな転機となった。

この「テト」とはベトナム語で「正月」のこと。
だから、「お正月大作戦」と言ってしまうとマンガ的なんだが、実際にはこんな感じだ。

 

 

テト攻勢からトキは流れて、いまは2023年になった。
日本では1月半ばになってお正月が完全終了したころ、知人のベトナム人が「ベトナムのお正月が近づく🌸🌸」というメッセージと、首都ハノイで正月飾りの「桃の花」を売る写真をSNSにアップした。
*上の動画の始まりで、人々が正月を迎える準備をしている。

正月について日本とベトナムでは1か月ほどの時差があるから、こちらが終わるとあちらが動き出す。
毎年のことながら「なんか変な感覚だな~」と思うのだけど、その知人からすると「なんで日本は西暦(1月1日)に新年を祝うようになったのですか?」と不思議に思うらしい。

 

テトの飾り物

 

干支(えと)でいうと今年2023年はウサギ年、ラビット嫌だ、じゃなくてラビットイヤーだ。
そんなことで東京証券取引所でお偉いさんが、
*卯(う)=うさぎ。

「今年の干支は卯で、『ウサギは跳ねる』と言われている。縁起の良い格言にあやかり、株式市場も大きく跳躍する年になるよう期待している」

とあいさつした。
ウサギ神社で有名な京都の岡崎神社は12年に1度の“当たり年”で、初詣のために神社へ入るのに3時間近くも並んだ人がいたというから、日本人の他力本願はホンモノだ。
そんな話を日本に住むベトナム人女性にすると、「日本ではウサギなんですけど、ベトナムでは今年はネコ年なんです」と笑う。
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日本の干支(十二支)には次の12の精鋭がいる。

子(ねずみ)、丑(うし)、寅(とら)、卯(うさぎ)、辰(たつ:龍)、巳(み:へび)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり:鶏)、戌(いぬ)、亥(い:いのしし)

対してベトナムの干支はこの12傑だ。

子(ねずみ)、水牛、寅(とら)、猫(ねこ)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、山羊(やぎ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、豚(ぶた)

 

古代中国で生まれた干支はその後、日本・ベトナム・朝鮮半島へと伝わっていく。
でも日本とベトナムを比べると、牛が水牛、ウサギがネコ、ヒツジがヤギ、イノシシがブタになっていることがわかる。
それはなぜなのか、これからその理由を書いていこう。

 

・なんで水牛?

日本によくいるのは和牛などの肉用牛や乳牛で、タイやベトナムにはこんなバッファローがいて、田園風景とセットになっている。
水牛は東南アジアのような暑い地域、牛は日本のような寒い地域が生存に適しているらしい。

 

東南アジアの原風景

 

水牛はすさまじいパワーで畑の土を掘り起こしてくれる。
寿命は20年ぐらいあって、もはや家族の一員も同然。
そんなわけで、ベトナム人にとって「牛」といえばこの水牛のことだから、「水牛年」が爆誕したのだ。

 

一回一回、鋤(スキ)を振り下ろして耕すのは超重労働だから、水牛さんはホントに神。

 

・なんでウサギはネコに?

中国語で「兎(うさぎ)」の発音は「マオ」になり、ベトナム語のネコ(メオ)と似ている。
それとベトナム人にとってはウサギよりも、米を食べるネズミ駆除してくれるネコのほうが身近な存在だったことから、「ネコ年」ができたという。

 

・ヒツジがヤギ…だと…?

もともとベトナムに羊はいなくて、19世紀にフランスの植民地になってからもたらされたという。
それでベトナムでは、羊の代わりに「山羊(ヤギ)」になったという説が有力。

 

・イノシシ年があるのは日本だけ

東アジアでは中国と韓国の干支は完全に一致していて、ベトナムにはネコ年、日本にはイノシシ年という独自の年がある。
歴史をさかのぼるとイノシシが先にいて、それを人間が飼いならしてブタが生まれた。
中国語でイノシシは「野猪」、ブタは「猪」と書くから、『野ブタ。をプロデュース』の中国語訳は『野豬大改造』となる。
*昔の中国語で「豚」は子ブタを意味していた。

明治時代になるまで日本人はあまり肉食をしていなくて、食用としてブタを飼う習慣もほぼ無かったから、ブタではなく、身近なイノシシを干支としてチョイスしたとされる。

 

ということでベトナムにだけ「ネコ年」、日本にだけ「イノシシ年」がある理由は、中国人と違ってその生き物のほうが馴染みがあったからだろう。
中国から伝わっても現地化するから、自然と本家とは違う伝統ができあがる。

 

2023年のテト(正月)が近づいて、ベトナムでは各地でネコの飾り物が登場した。
この造形感覚はベトナム人独特のものだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。