【日韓前進】天皇訪韓を期待するも、“日王”でつまづく韓国

 

韓国の全国紙・ハンギョレ新聞で、「韓中日3カ国協力事務局事務次長」のペクさんがとっても前向きな提言をしている。(2023-02-09)

[寄稿]排他的ナショナリズムを追い出し、韓中日首脳会議を再開すべき

日本・中国・韓国はいまこそ首脳会議を開くべき、と訴えるペクさんはその理由を3つあげた。

まずは新型コロナの流行で、縮小した3カ国間の交流を復活させるため。
日中韓のトップが会談を行なえば、多くの国民が相手国へ行くようになって「悪化した国民感情を解消するのに大きく役立つ」という。

二つ目は、「(日中韓の)経済が活力を取り戻すのに役立つ」から。
コロナ禍、米中対立、ウクライナ戦争などによってこの3カ国は経済的に大きなダメージを受けた。
*韓国は今年1月だけで、約120億ドルの貿易赤字を記録したというから深刻だ。
だからこそ3カ国の首脳が会って言葉を交わし、力を合わせることで、経済的にはウィン-ウィン-ウィンで3者が得をすると。

そして最後に3カ国首脳会議は、東アジアの安全保障、気候変動、歴史問題などを議論する良い機会になる。
こうしたことに「3カ国の指導者たちが膝を突き合わせて知恵を集めなければならない」とペクさんは主張する。

東アジアの3カ国が連携を強化すれば、経済・平和・文化交流などの面で良くなる。
そのためには、日本・中国・韓国を徘徊する「排他的民族主義」という古い幽霊を心から追い出さなければならないという。
3カ国首脳会議のハードルは高すぎるから、ここではそれは置いといて、日中韓が政治的に理解し合えば(それができるのなら)、いろんな面で良くなることは間違いない。
韓国と中国のことは両国にまかせるとして、ここでは韓国の中に徘徊していて、日韓関係の前進を阻害する「古い幽霊」について書いていこう。

 

李 明博(イ・ミョンバク)氏が大統領をしていたころ(2008年 – 2013年)、彼はこんなことを言った。

「天皇の訪韓が来年中にも実現すれば、両国にとって大きな意味になるのではないか」

たしかに天皇が韓国を訪問したら、これは画期的で、日韓関係をその前後で分けられるほど大きな意味がある。
韓国の政界では、天皇訪韓に対する関心や期待がすごく高い。
これについては盧 泰愚(ノ・テウ)大統領時代(1988年 – 1993年)から議論されていて、金大中(キム・デジュン)政権時には3回もこの実現に取り組んだ。

でも結果からいうと、「来年にも実現」どころか、2023年のいまになってもその気配は1ミリもない。
その大きな原因の1つがコレ。

中央日報のコラム(2009.09.18)

金元大統領は98年の日本訪問を控え、日王に対する公式呼称を「天皇」に整理した。 訪日中の夕食会では2度でも「天皇陛下」と丁重に呼んだ。 だからといって金元大統領が格別に「親日」だったわけではない。

【コラム】「日王」と「天皇」の間

 

中国を含めていま世界にある国の中で、韓国だけが天皇ではなく、「日王」と呼んでいる。
ランクでいえば「皇帝(天皇)> 王」で王は皇帝の下にいるから、“日王”と一方的に「格下あつかい」されることに対して、日本ではむかしから強い反発がある。
「適切な表現は天皇か日王か?」の議論は韓国内にもあって、金大中政権の時に政府は「日王」を廃止して天皇と呼ぶようになった。
でも韓国メディアでは、記事に「天皇」と書いてあって「おっ!」と思っても、それは日本語版の記事でのことで、元の韓国語の記事では相変わらず「日王」のままで変化はない。

上のコラムが掲載されたころ、日本では鳩山由紀夫さんが首相に就任した。
それで当時、韓国では新政権にこんな「期待が満開」していたという。

・韓日強制併合の無効宣言
・日王の高宗・明成皇后陵参拝と謝罪

この他にも、「あらゆるアイデア」が韓国側で出ていたらしい。
でも、この2つが現実化するもっとも高い可能性は、日韓がそろって異世界へ転生することだ。
現実世界では考えられないし、あり得ないから。
「無効宣言」の前に「強制併合」という認識だけでも、日韓はモメにもめて一致するとは思えない。
韓国を訪問した天皇が謝罪するなんてことは論外で言外。
日本の政権も国民も絶対に、万が一にも認めないし、こんな事態になったら日韓関係は墓場行きになる。
いまの韓国でも無効宣言や天皇の謝罪なんて、まともに考えていないだろう。
それより現実的に考えて、早く「日王」をやめたほうがいい。

 

先日トルコで大地震が起きて、いまも被害が広がっている。
韓国メディアはこの地震に関する報道でトルコではなく、「テュルキエ」と報じた。
きょねんトルコ政府が国名を英語の「ターキー」から、トルコ語の「テュルキエ」に変更したから、韓国メディアもそれに応じてすぐに呼称を変えたから。
ウクライナのキエフ(ロシア語)についても、韓国メディアはすぐにウクライナ語の「キーウ」に変更した。
でも「日王」は、日本が何を言ってもずっとこのままで変化なし。
韓国メディアが“一瞬”でテュルキエ、キーウと呼称を変えたことを見て、在韓ジャーナリストの黒田勝弘氏は「(日王と呼ぶ)非礼は早く改めてほしい」と訴える。

中国メディアも国際常識に合わせて、ちゃんと「天皇」を使っている。
韓国側が「日王」と言い続けていたら、天皇訪韓はどんどん遠ざかる。
「排他的民族主義」という古い幽霊を追い出さなければならないというのなら、まずは、すぐにできることから始めたらいい。
トルコやキエフのように、その気になれば“秒”でできるのだから。

 

 

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2 件のコメント

  • 韓国では当然”天皇”と呼ばなければなりません。
    中国の昔の皇帝に対しては今でも「皇帝」と呼び、日本に対しては「王」に格下げして呼ぶ理由はありません。また、そうすることは”国際慣例”でもあります。韓国メディアが国民の反日感情に基づいて”日王”と書くのは非常に卑怯な行為です。この問題については、これ以上の議論は不要です。 韓国メディアの暴挙です。 修正する必要があります。

  • 韓国政府は「天皇」と言っています。
    メディアもその気になればできるはずですけど、やっぱり国民感情が恐ろしいのでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。