【日本人とサバ】今昔物語・“鯖読み”の由来・お嬢サバ

 

大雨が降ることを表す英語に、「It’s raining cats and dogs(ものすごい雨が降っている)」ってのがある。
なんでネコとイヌを使っているのかはこの記事をどうぞ。

【大雨の表現】日本人「なぜ犬と猫?」、米国人「土砂って?」

外国語を学んでいると、「なんでそうなった?」と思うような不思議な表現やことわざとよく出くわす。
日本語を学んでいる知人のイギリス人は「サバを読む」がさっぱり分からなかった。
さかな編にブルーと書いて「鯖」。
努力不用のアンチ・エイジングで自分の都合のいいように、年齢や体重を少なく申告することを「鯖を読む」と言って、ちょっと多めにいうと「逆サバ」になる。
「mackerel(鯖)」と「read」でなんでこんな意味になるのか、イギリス人にはサッパリ見当がつかなかった。
むかしの日本語で「読む」は数えることを意味していたから、この場合は「count」になる。
「鯖を読む」を英語でどう言うか調べてみると「Intentionally miscount」はいいとして、「lie about your age」は直接的すぎる。
では、なんで意図的に数え間違えたり、年齢でウソをつくことに魚のサバが出てくるのか?

 

歯が小さいことから「小歯(さば)」を語源とするとか、「多い」を意味する古い言葉の「さは」が由来になったといわれるサバは、古代から日本人に馴染みのある魚で、縄文時代の遺跡からサバの骨が見つかったし、平安時代には鯖売りがいたという。
鯖売りといえば、今昔物語にこんな話がある。
奈良の大仏で有名な聖武天皇が不思議な夢を見て、そのお告げどおりに、サバを売る老人を大仏の開眼供養の儀式に参加させると、サバは貴重な仏典に姿を変えた。

そんなサバには弱点があって、「魚界のスペランカー」と言っていいほどよく死んでしまう。
それでいまのように冷凍保存する技術のなかった時代、大量にとれるけど傷みやすいサバは急いで売らないといけなかった。
正確性よりスピード重視で、少しテキトーに数えて実数と合わないこともあったから、「鯖を読む」という言葉がうまれたという。

ほかにも日本海でとれたサバを運ぶ、福井から京都までの「鯖(さば)街道」にちなんだ説もある。
若狭湾で水揚げしたサバを塩漬けにして、急いで京都へ運ぶと、着いたころにはちょうと食べごろになっていたから、日にちを少なく言うことを「サバを読む」と言うようになったとか。
*比較的、新鮮であることをアピールするためと思われる。
傷んでダメになることを想定して、多めにサバを箱詰めにして鯖街道で運んだことが由来になったとも言われているから、やっぱりキーワードは「スぺ体質」だ。

 

鳥取県岩美町とJR西日本がタッグを組んで売り出しているサバは、驚くほど身が美しくて上質な脂が味わえるらしい。
だからその名も「お嬢サバ」。

 

たくさんとれるサバは価値が低かった。
だから戦前はサバの缶詰に、カツオのラベルを付けやがる悪徳業者も多かったらしい。

それが最近は記録的な大不漁から入手困難になって、サバ缶の値上げや販売休止に追い込まれる企業が出てきて問題になっている。

読売新聞の記事(2023/02/21)

サバ不漁、人気の缶詰が値上げ・販売休止に…豊漁のイワシに注力する企業も

「鯖読みOK」だったころと時代が変わって、いまでは「お嬢サバ」化している。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。