中国は父、韓国は兄、そして日本は弟。
東アジア3国の関係をネットでこう表現する人がたまにいる。
これは中国でうまれた漢字や仏教などの文化がまず朝鮮半島、そして日本へ伝わった順番と上下関係をハッキリさせる儒教思想のコンボと思われるが、元ネタは知らない。
これを発展(?)させたバージョンで、中国をラオウ、韓国をジャギ、日本をケンシロウにたとえる人もいる。
この3国は漢字というキズナで結ばれていたが、韓国は戦後にそれを廃止したから、いまではハングルだけを使って日常生活をおくっている。
日本で漢字はいまでも国語の地位にあってどこにでもあるから、中国父さんとしては親しみを感じるらしい。
日本人が漢字をなくさなかった理由は、じっくり考えるよりも「漢字禁止デー」をつくって平仮名とカタカナだけを使って生活すればすぐに分かる。
こんな便利な文字はもう手放せない。
でも、生みの親である中国がそんな有能な漢字を廃止しようと考えことがある。
漢字は単純にむずかしくて覚えにくいから、昔の中国ではそれが原因で文字の読み書きのできない人が恐ろしく多かった。
それで辛亥革命によって1912年に清王朝が滅亡して、2000年以上も続いた皇帝という存在も無くなり、古い中国を否定するカタチで新しい中国(中華民国)が誕生する。
清が滅亡したのは漢字に固執したからでは?
漢字にこだわったせいで、西洋の進んだ文化や制度を取り入れることができなかったのだろうと考える人がいたり、このころは日本に留学していた中国人もたくさんいて、中華民国で国民の識字率を上げるためにも、漢字をなくすべきかどうかの議論が盛り上げる。
それで中国語(漢字)の発音をシンプルな文字表す、注音符号(ちゅうおんふごう)が1918年に発表された。
これは昔の漢字からつくられた表音文字でカタカナに近い。
でも、その後の中国で注音符号は消えて、いまでは台湾で使われている。
注音符号
漢字廃止論者で、日本で学んだ経験のある作家の魯迅はこう主張した。
「漢字不滅、中国必亡(漢字が滅びなければ中国が必ず滅びる)」
複雑な漢字をマスターしないといけないとしたら、人民の多くは読み書きができないままで、それでは中国に明るい未来はない。
共産党も同じように考えたらしい。
1930年代に農民を相手にロシア文字やラテン文字などを使って文字教育をおこない、識字率のアップをねらう。
すると「今まではナゾだった文字が分かるようになった!ありがとう共産党!」と農民は党を信頼するようになり、中国はますます発展していったらよかったのに。
実際には農民にそんな文字は不評で、彼らは自分たちを苦しめてきた支配者層の使う漢字を学びたがったという。
おそらく漢字がひとつの権威として確立していたのだろう。
そんな考え方こそ、まさに清王朝が滅びる要因だったのだけど。
そんなこんなしてるうちに、1949年に中華人民共和国が建国される。
50年代に中国漢字を簡略化する動きが進み、政府は中国語をローマ字で表す「漢語拼音音方案」(かんごピンインほうあん)を制定。
政府(共産党)としてはいずれは漢字を廃止して、ローマ字表記(拼音:ピンイン)にするつもりだったのだ。
でも1976年に毛沢東が死んで、中国の伝統文化を否定する文化大革命が失敗に終わると、漢字を全廃するのではなく、もっと簡単にして識字率を上げる方向へ進んだ。
これがいまの中国で使われている簡体字で、具体的にはこんな漢字(感じ)。
*清朝末期には漢字簡略化の必要性が指摘されて、その後もいろいろ動きがあって現在にいたるから、簡体字の始まりをどこに求めるかはむずかしい。(簡体字)
飲は「饮」
衛は「卫」
華は「华」
楽は「乐」
漢は「汉」
歓は「欢」
開閉は門をとっぱらって「开关」
もし中国まで漢字を廃止していたら、きっといまの日本のネットに「父の国」の用語はない。
韓国もなくしたから、下手したら日本が唯一の継承者になるところだったぜ。
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