80年前からある日本人の特徴 「教育はあっても教養がない」

 

知識のあるバカは、まわりを巻き込んでみんなを不幸にする。

最近、香港のキャセイパシフィック航空を利用していた客が、ブランケット(毛布)のつもりで「カーペットがほしい」と客室乗務員(CA)に言ってしまった。
後でCAどうしの会話のなかで、さっきこんな言い間違えがあったと話題に出てきて、その会話を聞いていた(たぶん別の)乗客の耳にこんな言葉が飛び込んでくる。

「英語でブランケットと言わないと手に入らない。カーペットなら床にあるでしょう」

CAたちは広東語の分からない客を「人間の言葉を理解できない」とからかう。
中国の標準語は香港で使われる広東語はまったく違うから、同じ中国人でも通じない。
この会話を録音していた乗客がネットにあげると、すぐに拡散されて「中国語を話す人間への差別だ!」と大炎上。
香港政府のトップが「憤りと失望を感じる」と述べるほどの事態になる。
キャセイパシフィックは公式に謝罪して、これから社員教育を見直して礼儀正しいサービスを提供すると約束した。
そして元凶のCAたちは完全な自由を手に入れた(=無職になる)。

英語と広東語で話をしていたというこのCAは、高い教育を受けて選ばれた人間だったのだろうけど、人として大事なことは分かっていなかった。

日本のネットを見ても、ツッコミどころはそのへんだ。

・低い人間性が全く成長していない事を感じた
・英語できないからってこの仕打ち、あまりにひどい…
・英語で喋りかけられるのが苦痛だから日系か韓国系にしか乗らない
・流石にどんな教育受けてんのか呆れるわ
・英語が話せることが話せない人よりも優位になることなどおかしな話

でも、こういうエリートは日本にも昔からいる。

 

ミャンマーにあった日本軍兵士の慰霊碑

 

太平洋戦争の時、フィリピンへ派遣された小松真一という技術者がいた。
この人は軍属という立場で日本軍と行動をともにしていて、米軍に降伏した後はいっしょに捕虜収容所へ入れられた。
そんな小松氏が「虜人日記」で、当時の日本人の様子について書いている。
氏の指摘は辛口でアメリカ人に比べ、日本人には「教育はあって教養がない」という特徴があった。
日本が戦争に負けた原因にも、「個人としての修養をしていない事」をあげる。

小松氏が収容所で知り合ったアメリカ人には、日本人より教育レベルが低くて、自分の名前を書けない兵士も多かった。
あるアメリカ人にどこで生まれたか聞くと、彼は紙の上に四角を描いてそのすみに「〇」をつける。
「ここが自分の出身地だ」と言うけど、小松氏には何のことか分からない。
いろいろ考えているうちに、アメリカで州の境は緯度と経度から直線で引かれていることが多いから、それを絵にすると「四角」になることに気づく。
だから、このアメリカ人は「自分の生まれた場所は州のこのへんだ」と言っているらしい。
でも、合衆国全体の中でそれを描いてくれないと、それがどこの州か分からない。
でもそのアメリカ人は、おそらくアメリカの全体像を知らなかった。
アメリカ側はこの戦争を「太平洋戦争」と呼んでいたのに、この男性は、太平洋がアメリカの西にあるのか東にあるのかも分からなかった。

だから小松氏はアメリカ人と接していて、彼らには教育はないが、見ていて教養はあると感じる。
日本軍の特に上層部はこの反対。
将校は日本軍では幹部クラスだったから、ふつうは高い教育を受けた人間がその地位にいる。
でも、教養(修養)はまったくの別ものだった。

小松氏にとっては、食べる物が無くなって飢えて死にそうな時でも、ひと切れのイモを他人にあげることのできる人物が本当に信頼のできる人で「修養」のある人。
戦国時代にはそんな武将も多かっただろうが、日本軍の将校では皆無といっていいという。

「修養」のない人間というのは、カネ・名誉・女をどん欲にほしがる人のことで、高等教育を受けた将校クラスの人間ほどひどかった。
そのころの戦況はアメリカにサイパンを奪われ、日本は危機的状況にあったのに、フィリピンに派遣されて行ってみると、マニラは「極楽」で軍人は飲んだり食ったり、慰安所に行って日々を楽しんでいた。
「比島(フィリピン)こそこの敗勢挽回の決戦場」と本土では多くの人が考えているのに、ここには防空壕も陣地もない。
彼らは「七月攻勢だ」「八月攻勢だ」と大きな事を言っているだけ。

米軍が近づいてきて上陸する直前になると、将校たちは特攻隊のパイロットよりも先に、慰安所にいた“お気に入りの女”たちを飛行機にのせて安全地帯へ移動させた。
それでいて立場の低い人間には威張り散らすから、信頼感はもはやゼロ。
そんな上官に指揮されたら部隊はこうなる。

教養も人間も出来ていない将校が指揮するのだから、組織の確立している間はまだしも、一度組織が崩れたら収拾がつかなくなるのは当然だ。

「日本はなぜ敗れるのか 敗因21ヵ条  (角川oneテーマ21) 山本 七平 」

 

兵士たちは将校の悪口ばかり言っていたが、教養があって人格のすぐれた将校にはそんな不満は一切言わなかったという。

*ここでちょっと話はそれる。
いま行われているウクライナ戦争で、ロシアの国防相は国民に「祖国のために勇敢に戦え!」と激を飛ぼしているのに、娘はドバイで買い物を楽しんでいた。ロシア軍の上層部にも、教育はあっても教養は皆無という人間が山ほどいそう。

こんな腐り切った将校でも、戦争捕虜になって米軍の収容所に入れられて、自分でトイレ掃除をするようになると少しはマシになったという。

高い教育をうけて組織や国を動かすようなリッパな人間が、常識では考えられないようなバカな言動や判断をすることは令和のいまでもよくある。
教育はあっても教養のない日本人の割合なら、80年前と比べてもたぶん負けてない。
だからいまでも「便所掃除」や「雑巾がけ」は、人間教育として日本人にはとても大切なのだ。
キャセイパシフィックも研修でこれをさせたらいいのに。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。