平安時代の日本とヨーロッパ初の「死刑廃止」 その理由て?

 

ほんじつ11月30日は、1786年にトスカーナ大公国のレオポルド1世が死刑制度の廃止を宣言した、歴史的な日。
彼はすべての死刑道具の破壊を命じ、拷問も禁止した。
Leopold II, Holy Roman Emperor

これにより、トスカーナ大公国(イタリア)はヨーロッパで初めて死刑を廃止した名誉ある国となり、それを記念して現在 11月30日は「シティズ・フォー・ライフの日」という死刑廃止を訴える世界的な日になっている。
この画期的な決断をしたレオポルド1世は、後に神聖ローマ皇帝レオポルト2世となり、「最も機敏で賢明な君主の一人」と絶賛された。

ここで日本ですよ。
わが国では平安時代、810年の「薬子の変」で藤原仲成が処刑されてから、1156年の「保元の乱」で源為義らが処刑されるまで、約350年間も死刑が執行されなかったのだ。
死刑が言い渡されることはあっても、天皇が減刑して最高でも流罪に処されたから、死刑は実質的に廃止されたと言ってヨシ。
厳密に言うと、国(朝廷)が死刑を認めなかったということで、国司や検非違使が死刑をおこなったことはあるが、首都(平安京)では一切なかった。
完全に同じではないとしても、ヨーロッパで初めて死刑が廃止されるよりも約1000年前に、国家が死刑を認めなかったという先進国な国は世界で日本だけでは?

 

怨霊になった崇徳上皇

 

「ヨーロッパ初」の理由について調べてみると、ヨーロッパで死刑制度が長く続けられていたのは、キリスト教が認めていたからということが大きい。
しかし、17〜18世紀のヨーロッパでは聖書や神学から離れ、理性によって世界を把握しようとする啓蒙思想が人々の支持を集めた。
宗教から解放され、人権を尊重する考え方が重視されるような風潮から、レオポルド1世のような名君が現れたようだ。

日本の場合はどうなのか?
平安時代に死刑が無くなった理由として、よく指摘されることは仏教や神道の影響。
まず、死刑は仏教の「不殺生戒」の教えに反している。
奈良の大仏を建てた聖武天皇は仏教を深く信仰していたから、死罪の囚人は流罪に減刑されていた。
そんな仏教の教えや聖武天皇の行為が平安時代の天皇や貴族に影響を与えた。

ちなみに、スリランカでは現代でも仏教を深く信仰する人が多いから、死刑執行人のなり手がいなくて困っているらしい。

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また、平安時代の日本人さんは「怨霊」を恐れていた。
深い恨みをかかえ、この世を呪って亡くなったような人間は怨霊となって現れ、疫病や火事、地震などの厄災を引き起こして人々を苦しめると信じられていたから、平安時代には怨霊をしずめために神社をつくり、神として祀ることが行なわれた。
日本三大怨霊と言われる菅原道真・平将門・崇徳天皇(崇徳院)はすべて平安時代の人物だ。この御霊(ごりょう)信仰は神道と深くかかわっている。
そして、神道の超重要な考え方に「穢れ」があり、血や死は忌み嫌われた。
斬首など人を斬って殺害する行為は、「穢れ」を大量発生させてしまうから、平安時代の京都にいた天皇や貴族がひどく嫌ったことは間違いない。

 

雷神となって清涼殿に現れた菅原道真の怨霊

 

平安時代の日本人が恐怖した怨霊と穢れ。
930年の「清涼殿落雷事件」でそれがコンボになってしまう。
天皇が生活する内裏(だいり)の清涼殿に雷が落ち、3〜5人の貴族らが死亡し、複数の人間がケガをした。
人々はこれを「菅原道真の祟りじゃ、道真の怨霊のシワザじゃ!」と考え、北野天満宮をつくって道真を神として祀り、怒りをしずめようとした。
この事件では、日本で最も神聖で清浄とされる天皇の住まいに「死穢」を発生させたということも、人々に与えたショックは大きかった。

ということで、平安時代に日本で死刑が廃止された理由には、宗教的には仏教の「不殺生戎」の教え、神道の死の穢れ、そして御霊信仰の影響があった。
この背景は、キリスト教の考え方から離れていったことで、死刑が廃止されたヨーロッパとは根本的に違う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。