ウェストミンスター寺院の“聖別”を日本で例えるなら?

 

1065年のきょう12月28日は、ロンドンのウェストミンスター寺院が完成し、聖別(せいべつ)された日。

ウェストミンスター寺院は、日本で例えるなら伊勢神宮のような特別な宗教施設で、過去のイギリス国王はこの教会で戴冠式を行ってきた。
この教会に葬られることは、イギリスでは最高の名誉とされていて、内部の壁や床には王や有名政治家などの遺体が埋められている。

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最近では、2022年にエリザベス女王の国葬が行なわれ、ことし5月にはチャールズ3世の戴冠式が行なわれた。
イギリスで最も重要な教会の一つがウェストミンスター寺院。

日本の学校で響く「キーンコーン カーンコーン」の合図は、この教会の鐘の音がモデルになったから、日本人にも意外と身近な教会だったりする。

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15年ほど前、日本の首相が「あなたとは違うんです」と言い放って注目を集めた。
イギリス全土にある建物の中で、ウェストミンスター寺院などの教会は、その他大勢の建物と違って特別な存在感がある。
その理由が「聖別」だ。
聖別というのは、簡単に言えば、普通のモノを神聖なモノに変えること。
教会を会社や役所などの建物と区別するために、聖職者が特別な儀式を行い、ただの建物を神聖な建物に変える必要がある。
1065年のきょう、その聖別がされたことでウェストミンスター寺院は神聖性を帯び、教会になったわけだ。
ちなみに、聖別の反対の概念が「冒とく」になる。

参考資料:Consecration in Christianity

日本でも、これと同じような出来事があった。

 

ビートルズのメンバーが踏んだ草を手にして涙を流す女性。
熱烈なファンにとっては、メンバーが触れたものは「聖別」されて尊いものに変わる。

 

「神聖化する」という目的なら、キリスト教の聖別も仏教の開眼供養も同じだ。
たとえば仏像を作ったとしても、そのままでは木や石を彫った物体でしかない。
それをどうやって、特別な像に変えるのか?

 

日本の仏教では、高僧が最後に眼を描き込むことによって、その像には「魂」が宿って神聖性を帯び、ただの像から仏像へ変わると信じられている。
この儀式を開眼供養と呼ぶ。

日本で最も有名な開眼供養は、8世紀に東大寺で行なわれたものだろう。
「不幸は友人と一緒にやってくる」と言うけれど、この当時、日本では疫病や飢饉、地震や反乱などの困難が発生し、民衆は困窮して疲れ切っていた。
そこで聖武天皇は、仏教の力で国を救おうと大仏建立を決意し、民衆も協力して巨大な仏像がほぼ完成する。
752年4月9日、聖武天皇や皇太后、僧など約一万人が参列し、インド人の僧・菩提僊那(ぼだいせんな)が大仏に眼を描き入れた。
この開眼式によって、デッカイ置き物は聖別され、これ以上ないほど尊い大仏に変わった。

 

日本の歴史で、ウェストミンスター寺院の聖別に匹敵する出来事といえば、東大寺・大仏の開眼式しか思い浮かばない。
ただ、宗教施設は特別な存在だから、建物やそこで使う道具を神聖化する儀式はきっとどこの国にもある。
しかし、そのやり方は文化によって違う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。