10年ほど前にソウルを旅行中、友人の韓国人と街を歩いていると、彼女が突然「あそこを見てください!」と言ってここを指さした。
ああ、確かにトイレマークは日本と同じだ。ということではなくて、彼女が言いたかったのは、
「スターバックスは世界中にあって、看板は英語で書かれています。でも、ここはハングルで“スターバックス”と書かれているんです。こんな店があるのは世界で韓国だけなんですよ!」
ということだった。
嬉しそうに話す友人を見て、韓国の人たちがハングルをどれだけ愛しているかが伝わった。
*2024年の現在では、アラビア文字で書かれたスターバックスもあるから、もう「韓国だけ」ではなくなった。
最近、韓国ギャラップが13歳以上の人を対象に、「あなたの尊敬する人物は?」と尋ねたところ、トップ3はこんな結果となった。
1位:李舜臣
2位:朝鮮王朝4代目の王・世宗
3位:朴正煕(パク・チョンヒ)大統領
ちなみに、今回の調査結果で「両親」が初めて7位に上がった点が、韓国人の価値観の変化を表しているらしい。
1位の李舜臣は朝鮮海軍の将軍だ。
韓国では、16世紀の朝鮮出兵の際、李舜臣は少数で日本軍の大軍を撃破したとで考えられていて、祖国を救った英雄として尊敬されている。
そんな人物を日本の歴史で例えると誰になるか、ということをこの記事で書いた。
今回は、韓国人が尊敬する人ランキングで、2位となった世宗(セジョン)に注目してみよう。
韓国を旅行すれば、金色にコーティングされたこの大きな像を見るかもしれない。
この人物が韓国人の尊敬する韓国人、朝鮮王朝の第4代国王、世宗(セジョン:1397年 – 1450年)だ。彼の像はソウルのど真ん中に建てられている。
朝鮮時代、韓国人は文字としてほぼ漢字だけを使っていたが、戦後になると漢字は“追放”され、今ではハングルだけが使われている。
「あそこを見てください!」と興奮気味に言った韓国人の話では、テストで自分の名前もハングルで書くくらいで、日常生活で漢字を使う機会はないらしい。
韓国の人たちはこの民族固有の文字が大好きで、とても誇りに思っている。
「韓国で自慢できるものは?」と聞けば、ハングルが上位にランクインすることは間違いない。
世宗がいたころ、韓国で使われていた文字は漢字だけで、民衆は文字を読んだり書いたりすることができなかった。
それを哀れに思った世宗は、誰でも簡単に読み書きできる文字をつくろうと考え、1446年に訓民正音を制定した。
訓民正音とは「国民に教える正しい音」という意味。
社会のエリート層は漢字を「本当の文字」と考え、訓民正音を認めていなかったから、この民衆文字が生まれたことで社会が大きく二分化されたとも言える。
朝鮮出兵で日本に連れてこられた姜沆(カン・ハン、きょうこう)は、日本人は文字を使えないと記録している。
姜沆は儒学者で中国文化を崇拝し、文字は漢字だけしか認めなかったから、平仮名は訓民正音と同じで、彼にとっては“文字”ではなかったのだ。
もちろん、これは姜沆の印象で、実際には当時の日本にも漢字を使う人はいた。
この訓民正音が後に「ハングル」と呼ばれるようになる。
これは「偉大なる(ハン)・文字(グル)」という意味。
もし、姜沆が現代の韓国に転生したら、看板がハングルだらけになっているのを見て、「本当に嘆かわしいことだ。我が国から文明は失われてしまった」という悲しい気持ちになり、きっとそれを漢詩でよんでた。
しかし、現代の韓国人にとって、ハングルは偉大な文字であって、訓民正音ではない。
漢字の読み書きができない人のための文字ではなく、国民は科学的で優秀な文字と考え、愛している。
そんな誇りは世宗がつくってくれたから、彼は尊敬される人ランキングで第2位に選ばれた。
今の韓国人は漢字をどう思う?漢字を読めないハングル世代はいつから?
その偉大な文字(ハングル)は読めても意味が分からない、機能的文盲が増えたと問題視していた記事を見たことが有るんですけれど。
歴史的建造物の説明文はもちろん、たかだか数十年前の漢字混じり新聞や書籍が読めない、読んでも意味が分からない事に危機感を覚えないのはかなり不味いですよ。
過去の歴史から教訓を学べないし。
訓民正音は世宗の命で集賢殿の学者たちが作った文字です。
訓民正音は漢字を書きにくい朝鮮の民のために作られた文字として知られていますが、一部の学者によって漢字をより正確に発音し理解するための道具として作られたという主張が提起されています。私はこの理論が正確だと思います。なぜなら、世宗は狂的な事大主義者であり、朝鮮を明の諸侯国であることを自任したからです。
訓民正音をハングルに変え、国民に使わせた人物は周時經(チュ·シギョン)先生です。
彼は朝鮮王朝末期に国民が使えるように訓民正音をハングルで作った人物です。