ひらがなと万葉集 日本人も韓国人のように民族文字に誇りを

 

現在の韓国人に尊敬される人物ランキングで第二位、歴代の朝鮮国王の中では、きっと第一位に選ばられるであろう人物が、世宗(セジョン:1397年 – 1450年)だ。
韓国の人たちはハングルを愛していて、この文字を制定した世宗を高く評価している。
そんな彼について、最近こんな記事を書いた。

韓国人のハングル愛・世宗が尊敬される人物第2位のわけ

 

この民族文字を誇る韓国の人たちの気持ちは、とどまるところを知らない。
半年ほど前にも中央日報のコラムで、世界の人たちにハングルを“おすそ分け”して、さまざまな言語をハングル表記することを提案していた。(2023.10.05)

「ハングルの分け合い」が現実のものになれば、ハングルは人類の文明を保全する役割を果たすことになるだろう。

韓国だけで使うにはもったいない、「ハングル分け合い」を深く考える時期

 

それがもったいないかどうかは韓国人が考えることとして、日本人もこんな「ハングル愛」には学ぶところがある。
日本人にとって、ハングルに相当する民族文字は「ひらがな」になる。しかし、ひらがなに対する誇りや愛情は、韓国に比べるとかなり低く、このことは考えた方がいい。
日本の歴史で世宗に相当する人物を探すとしたら、それは一体誰になるのか。

 

日本では毎年、新春恒例の「歌会始」が皇居で行われている。
これは国民や皇族の方々が和歌(短歌)を詠み合う行事で、ことしのお題は「和」だった。
天皇陛下はその席で、このような歌を詠み上げられた。

「をちこちの 旅路に会へる 人びとの 笑顔を見れば心和(なご)みぬ」

*宮内庁は国の内外から歌を募集していて、2024年は1万5000首余りが寄せられた。
来年の歌会始のお題は「夢」。歌心のある人はぜひご応募あれ。

宮中で行われる歌会始の起源はハッキリしていないが、鎌倉時代の13世紀には行われていた。
人々が同じ場所に集まり、歌を作って詠み合う「歌会」なら奈良時代に行われていて、そのことは万葉集でわかる。

 

日本の民族文字である平仮名と和歌は深く結びついている。

これまで出会った外国人の中には、「一つの文章で3つの文字を使い分ける日本人はスゴイ!」と称賛したり、「3つの文字があって日本語は分かりにくい!」と悲鳴をあげたりする人がいた。
日本人にとってはそれが便利で、こんなふうにどれか一つに統一されると読みにくい。

・わたしはぶろぐをかいています。
・ワタシハブログヲカイテイマス。
・輪多士葉部路具尾書胃手胃魔素。

特に最後の文章(?)はちょっとした呪文のレベルで、唱えるとゴブリンぐらいは召喚できそう。
奈良時代にはまだ固有の文字が無かったから、日本人はすべて漢字を使って和歌を作らなければいけなかった。そこで使われた漢字を万葉仮名という。
当然、これでは「輪多士葉部〜」と同じだから分かりにくい。
平安時代になると、筆を使って紙の上で万葉仮名の草書体を書いているうちに、それが簡略化されて「ひらがな」が生まれ、万葉仮名に代わって使われるようになった。

 

ハングル(訓民正音)の場合は、漢字を理解できない民衆のために考案され、1446年に世宗によって公布された。
一方、ひらがなは歴史が古く、自然発生的に登場した文字だから、誰がどんな目的で作ったという記録は存在しない。
日本人がこの民族文字を手に入れたことによって、日本人らしい感性を100%発揮し、自由に歌を作ることができるようになった。
これが日本文化に与えた影響は計り知れない。
「ハングルにとっての世宗」をあえて日本の歴史で例えるなら、それはきっと「万葉集」だ。
そして、その伝統は今も続いている。

 

この優秀な文字を日本だけで使うのはもったいない。海外にも分けてあげれば、ひらがなは人類の文明を保全する役割を果たすことになる。

ーーというほどでなくてもいいけれど、日本人も韓国人をみならってこの民族文字をもっと愛し、誇りに思っていい。

 

 

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2 件のコメント

  • 明治政府によってようやく一般民衆への教育・普及がなされるようになったハングルと違い、日本のひらがなは、古代から、それを使うことによって作られた偉大な文学作品や詩歌が山のように多数存在しています。
    文字そのものに価値を見出し誇りを持つことよりも、その文字を使って作られた多くの作品、つまり「中身」の方がずっと価値があり、誇りを抱くことができるんじゃないですか?
    Starbucksのことを「すたあばっくす」と看板に表示していることが、どうしてそれほど自慢できるのか? 理解できませんね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。