最近、わが静岡県で大雨が降って、一部で道路の通行が禁止された。
でも、そんな天災よりも、ネットで「リニアの呪い」や「雨雲さん、静岡でゆっくりしてってね」といったコメントがあったことのほうが衝撃的だった。
県民とそれ以外の人たちでは、静岡に対するイメージが違うらしい。
イメージといえば、静岡県の西部で『ボンサイ柔術』という格闘技のジムを見つけた時も、日本の伝統文化の盆栽と格闘技が結びつかなくて、違和感をおぼえた。
日本人のネーミングセンスなら、格闘技の名前を「ボンサイ」にするとは考えられない。
海外では、盆栽に対するイメージが違うようだ。
盆栽のルーツは中国にある。
奈良か平安時代に、草や木、石などを使ってお盆や鉢の上に自然の景色をつくる「盆景」が中国から伝わり、これを観賞することが貴族の間ではやった。
鎌倉時代になると、武士が趣味として盆栽をするようになり、日本に盆栽が広まっていく。(盆栽)
「盆景」、「盆山」、「うえき(植木)」、「はち(鉢)の木」と呼ばれていたのものが、いつから「盆栽」になったのかはハッキリ分からない。
江戸時代には盆栽と呼ばれていたと思うけれど。
現代の日本人は盆栽について、どんなイメージをもっているのか?
盆栽士®資格認定試験(https://www.designshikaku.net/syumi/bonsai/)を主催する日本デザインプランナー協会(https://www.designshikaku.net/)が、全国の 20〜60代の男女を対象に「盆栽への興味やイメージ」に関する調査をおこない、最近その結果を公表した。
それによると、「盆栽を育てたことはありますか?」という質問に対して、「ある」と答えた人が 14.4%で、「ない」は 85.6%だった。
盆栽は誰でも知っているが、身近に感じている人はかなり少なそうだ。
また、盆栽に対してどんなイメージがあるのか尋ねたところ、上位4つはこんなものだった。
・剪定(せんてい)や育成などが難しそう(71人)
・趣味の一つとして楽しめそう(49人)
・育てるための環境を整えるのが難しそう(40人)
・道具などにお金がかかりそう(39人)
盆栽についての日本人のイメージは、「お金と時間がかかりそうだけど、楽しそうな趣味」といったものが多く、「格闘技」の印象は無い。
むしろ盆栽は「静」の世界に属するもので、殴ったり蹴ったり、関節技をきめたりする激しい動きの反対側にある。
それなのに、なんで『ボンサイ柔術』なのか?
調べてみたら、このブラジリアン柔術を創設したブラジル人が、盆栽を手入れするように、一人一人の個性に合わせて、時間や手間をかけて育てようと考えたから、「ボンサイ柔術」と名付けたことが判明。
これは盆栽に対する新しいアプローチだなと、個人的には納得した。
日本でおじいさんの趣味というと、ゲートボールと盆栽は双璧だ。
そんな印象をもっていたから、友人のアメリカ人に、格闘技に「ボンサイ」と名付けることには違和感があると話すと、
「そうか? オレには、ボンサイには格闘技のイメージが強くあるけどな」
と意外なことを言う。
彼がそう思った理由は、1984年にアメリカで公開され、大ヒットした映画『Karate Kid』(邦題:ベスト・キッド)にあった。
この映画の中で、いじめられっ子の主人公に空手を教える日系人の「ミスター・ミヤギ」が、盆栽を大切に扱っているシーンがあって、それがとても印象的だったから、彼の頭の中では盆栽と空手マスターはセットになっていた。だから、ボンサイは格闘技の名前にふさわしいと言う。
英語版ウィキペディアの説明では、『カラテ・キッド』シリーズではミヤギが盆栽の手入れをし、盆栽を通して主人公に空手を教え、『カラテ・キッド Part III』では映画の中心的な存在となったと書いてある。(Bonsai)
「そう思っているのはオレだけじゃないって。ヨーロッパ人にも聞いてみろよ」とアメリカ人に言われたから、ドイツ人にも聞いてみた。
すると、彼も「ボンサイ」と聞くとミスター・ミヤギが頭に浮かぶと言う。だから、『ボンサイ柔術』に対しても違和感はゼロだ。
英語サイトの『Bonsaify』には、こんなことが書いてある。
1984年に公開された映画『カラテ・キッド』は、その時代のアメリカ人やヨーロッパ人にとって、趣味やマインドフルネス(自分に意識を集中させる)の活動として、思いがけず盆栽を知るきっかけとなった。
For a generation of Americans and Europeans, the 1984 movie “The Karate Kid” was an unexpected introduction to bonsai as a hobby and a mindfulness activity.
日本人は日本の歴史や文化、社会の中で盆栽を理解している。
一方、欧米人の多くは格闘技の映画で、ボンサイと予期しない出会いを果たしたから、日本人とはかなり違うイメージをもっているのだ。
【外国人とNINJA】リトアニア人が想像する忍者はこんな人たち
なるほど、盆栽に格闘技のイメージがあるという話、ずっと昔に現地のアメリカ人から私も聞いたことがあるのですが、映画 Karate Kid の影響だったのですね。それは思いつかなかったなぁ。
同じような話で、外国人が忍者(Ninja)と言うと、なんだか「厳しいトレーニングの末に武術の達人の域に達し時には超能力も使うスーパーマン的存在」みたいなイメージがあるのですが。あれも元を正せば映画 Ninja Turtles という映画が大元らしいですね。
でもどうして忍者が亀なんだ?
『Karate Kid』は欧米ではけっこう有名で、与えた影響も大きいようです。