メキシコ人の話 有名な日本の企業文化・神道とアステカ文化

 

知人のメキシコ人(30代・男性)はいま日本の大学に留学していて、来月に帰国して就職活動をする予定。
先日、そんな彼と会って話をしたので、これからその内容をシェアしようと思う。

ちなみに、メキシコってこんな国だ。

人口:約1億2,601万人(2020年)
面積:196万平方キロメートル(日本の約5倍)
首都:メキシコシティ
言語:スペイン語
宗教:カトリック(国民の約7割)

ソース:外務省のHP「メキシコ合衆国(United Mexican States)基礎データ

今回の記事に関係するから、こんなメキシコの歴史を頭に入れてほしい。

1519年 エルナン・コルテスの率いるスペイン人が侵入
1810年 メキシコ独立運動の開始
1821年 スペインから独立

 

ーー今日はこれからバイキングの店に行くのだけど、「バイキング」って知ってる?

もちろん。
「all-you-can-eat(食べ放題)」のことを日本語で「バイキング」って言うんだよね。最初にそれを聞いた時は北欧の船乗りのことかと思ったよw。
でも、北欧のバイキングにも豪快に食べたり飲んだりするイメージがあるから、何となくわかる。
日本語には和製英語がたくさんある。個人的には、「パワースポット」って言葉が気に入った。

 

日本みたいに、「和洋中」の各国料理を楽しめるバイキングはメキシコでは珍しいらしい。

 

ーーメキシコで、日本について有名なものは何かある?

日本に来る前、私は自動車の会社と銀行に勤めていた。
その経験から言うと、「KAIZEN(改善)」と「5S」は知られていて、その日本の哲学を取り入れているメキシコの企業は多いね。視点が細かいし、効率的なんだ。

ーー日本の企業文化が有名なのか。
たしかに、メキシコ社会の価値観や考え方とは違いそう。

*海外で言うカイゼンとは、CEOから現場の作業員までのすべての従業員が企業活動に参加するという考え方のこと。一度きりではなく、継続して改善を行っていくことで、仕事の質や効率を高めていくことが重視されている。
くわしいことは「Kaizen」をクリック。
*「5S」とは整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の5つで、職場環境の改善や維持を目的としたスローガンのこと。

 

ーーメキシコ文化の特徴は?

それは大きく3つに分けられる。
まず、アステカやマヤなどスペイン人が来る前の文化、それと16世紀から支配したスペイン人が持ち込んだヨーロッパの文化、そして、その2つが混じり合った文化がメキシコ文化の特徴だ。

ーーなるほど。
日本も神道を中心にした日本オリジナルの文化と、中国や西洋などの外来文化、それが合わさった和洋折衷の文化がある。
でも、日本には異民族に支配された歴史がなく、日本人が主体的に外国の文化を受け入れたから、その点はメキシコとは違う。
マヤやアステカの文化には、具体的にどんなものがある?

その時代、メキシコにいた人びとは動物を神聖視する信仰があった。それでジャガーと「一体化」したジャガー戦士が生まれた。
それと、「死の笛」という興味深いアイテムがある。
これはすごく不気味な音がして、戦場で戦う前に、数千人の戦士が一斉に死の笛を吹くことで敵兵の戦意を喪失させた。それが戦闘の合図となって、敵軍に襲いかかったんだ。
その様子を想像すると何かワクワクする。

戦わずして勝つる! アステカ文明のチートアイテム「死の笛」

 

ジャガー戦士
後に、ジャガー横田のモデルとなった(しらんけど)

ジャガーを神聖視する発想は、紀元前1200年頃から紀元前後にかけて存在したオルメカ文明の時代にあった。
オルメカはアメリカ大陸で最も早い段階に生まれた文明で、マヤやアステカ文明などその後のメソアメリカ文明に影響を与えた。

 

ーージャガーを「神」とした理由は?

昔のメキシコ人はジャガーを地上最強の動物と考えたから。
すごい動物と自分を一体化させて、「自分は無敵だっ!」と思い込むことで戦意を上げたんだと思う。
でも、スペイン人が持っていた銃には勝てなかった。

ーー「信仰(呪術)の力があれば銃弾を跳ね返すことができる!」なんて考え方は、20世紀はじめの中国の義和団事件や東アフリカのマジ・マジ反乱でもあった。現実には勝てなかったけれど。

キリスト教では、動物を「神」と考えることは厳禁されているから、スペイン人はそんな先住民の文化を武力を使って徹底的に排除した。だから、今のメキシコでは、その時代の考え方はあまり残っていない。
前に奈良に行った時、シカが自由に歩き回っているのがとても印象的だった。
形はまったく違うけど、動物を神聖視する文化は古代メキシコと共通していると思ったんだ。

ーーそれは仏教じゃなくて、神道の考え方だ。
日本の歴史には、征服者となった異民族がそれまでの信仰を弾圧し、根絶やしにした出来事はなかった。日本人の手で仏教を破壊した廃仏毀釈なら、明治時代にあったけれど。

それにしても、「奈良公園へ行ったら、アステカ文明が思い浮かんだ」という感想は日本人のボクには印象的だね。メキシコ人ならではだ。奈良だけに。

いや、ほかのメキシコ人も同じことを感じるかは知らないww

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

メキシコ人からみた日本人:文化・国民性・オタクの違い

【埋葬文化】人類共通の献花/死体を教会の壁に埋める名誉

【太陽と写真】メキシコ人が日本で感じた違い・イイところ

【認知バイアス】メキシコ人が日本を「危険な国」と思うワケ

ハロウィンよりはお盆に近い、メキシコの「死者の日」って?

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。