占いは“違法行為”、欧米人が日本のおみくじが好きな理由

 

最近、アメリカのペンシルベニア州で、日本ではありえない出来事があった。
現地では、金もうけを目的とするタロット占いを禁止する法律があって、占いショップの経営者で占いをしている人物が、この法は言論の自由を侵害し違憲であると主張して、ハノーバー自治区と現地の警察署長を裁判に訴えた。
占い師が自治体や警察を訴えるというのは、日本ではちょっと考えられない。

この占い師の話によると、ある日警官が店にやって来て、タロット占いをしたことを理由に逮捕するか、2500ドルの罰金を科すと占い師に伝えた。この時はそれ以上のことはなかったが、これからも占いを続ければ逮捕すると脅したという。
1861年に制定されたペンシルベニア州の法律では、お金を受け取って占ったり、運勢や将来の出来事を予言したりする“フリ”をしたりすることは、軽犯罪になると定められている。
しかし、この占い師からすると、この法律こそアメリカ憲法が認める言論の自由を侵害している。
要するに、「自分はこれからも占いのビジネスを続けていきたい。誰もそれを邪魔をすんな!」ということだろう。
ちなみに、ペンシルベニア州の「占い法」では、フォーチュンクッキーや天気予報などは対象外にされている。

アメリカでは州によって法律が違うから、「占い」の扱いも州によって違う。
調べてみると、ニューヨーク州では娯楽を目的にした占いならOKだけど、金と引き換えにそれをすると犯罪行為になる。ミネソタ州、ノースカロライナ州、オクラホマ州、ウィスコンシン州ではどんな形の占いも違法になる。(Fortune-telling
でも、ペンシルベニアの占い師は営業許可をもらって店を開いて、いままで仕事をしていたのでは?

 

 

以前、日本に住むアメリカ人で「おみくじ」が大好きな女性がいた。
だから、いっしょに神社やお寺へ行くと、彼女はほぼ必ずおみくじを引く。それはいいのだけど、紙を渡して「この内容を英語でおしえてくれ」とサラリとハードな要求するから困った。
そんなアメリカ人に「おみくじ好き」になった理由をたずねると、

「占いはキリスト教の教義に反しているから、欧米では伝統的に禁止されていた。だから、自分の未来を占ってもらうのは面白い体験で、興味深い日本文化でもあるから」

と答えた。

知人のドイツ人もおみくじが好き。
話を聞くと、やっぱりおみくじの考え方は反キリスト教的で、宗教的には「違法」だから、彼はドイツの教会などで見たことがないという。でも、街にはタロット占いや星占いの店があって、そこでお金を払って占ってもらうことはできる。
きっとドイツの占い師は、警察から逮捕される心配はない。というか占い師なら、その日を占って何らかの準備ができるのでは?

キリスト教で占いが禁止されている理由について、ドイツ人はこんな話をする。
未来が分かるのは神だけで、それを人に告げる行為が許されるのは、神の言葉をたくされた預言者しかいない。神と関係ない占い師はいわば「偽の預言者」で、人びとを惑わせるから、キリスト教で禁止された。
現在のドイツ社会では、宗教のルールが法律になることはない。
だから、サッカードイツ代表の勝ち負けをタコのパウルが占うこともできる。

*パウルはサッカーW杯南アフリカ大会で、ドイツ代表の7試合と決勝戦の合計8試合の結果を全て的中させ、当時、世界で最も有名なタコとなった。
この「タコ占い」に法的な問題はなかったが、動物愛護団体から「そのタコを解放しろ」というクレームはあった。

キリスト教・ユダヤ教・イスラム教では名前が違うが、すべて同じ神を信じている。
この「アブラハムの宗教」では古代、占いを悪魔や悪霊のしわざで、異教の習慣として嫌悪された。信者は、全宇宙でたった1つ(1人?)の神を信じるべきだから、占いを信じてはいけない。
一方、日本の仏教や神道にこんな考え方はなかったから、おみくじはまったく問題ない。

 

ミケランジェロが描いたシビュラ

 

アニメ『サイコパス(PSYCHO-PASS)』に、犯罪を犯す可能性のある人間を判断する「シビュラシステム」が出てくる。この「シビュラ」というのは、古代ギリシアにいた巫女のことで、アポロン神の意思を受け取り、人びとに伝えていた。
シビュラの存在もキリスト教的にはNG。

 

 

キリスト教 「目次」

日本人の宗教観(神道・仏教)

神道のキリスト教の共通点 穢れと罪・祓いとゆるしの秘跡

【怪異ともののけ】日本人が密教を求めた理由とは?

「日本人は寛容だ」と感心する外国人、実は無宗教の無関心

日本の疫病神から欧米人、“ヨハネの黙示録の四騎士”を想像する

 

1 個のコメント

  • ギリシャ・ローマの文化は多神教であり、「デルファイのアポロン神託」など有名な神託行為が行われていました。日本も多神教で、おみくじや占いは多く、たとえば信長が自身で行った「火起請(ひぎしょう)」なんかも占いの一種でしょう。中国で漢字の元になった「甲骨文字」も、政治を決める占いの一種であったと言われています。
    これに対し、中東~ヨーロッパにおいて源流を一つとする世界三大一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)では、占いの類は原則として御法度、彫刻や絵画など神を物に充てる偶像崇拝も禁止、神は自分たちが信じるそれがこの世に唯一であり、多民族にもそれを強要します。そのことが民族間の争いの元凶にもなっています。そんなことだから、「宗教は人類文明のアヘン」などと言われてしまうのもむべなるかな。

    まあただ、現代ヨーロッパにおける「電気自動車信仰」からは、さすがにボルボやVWなどメーカー各社が現実をつきつけられて冷めつつあるようですけど。(本日のニュースで報道されてました。)

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。