【中国の疑問】個人では無双するのに、団体競技で弱い理由

 

サッカー・ワールドカップのアジア最終予選の初戦、日本は中国に7−0で勝利して、これ以上ないスタートを切ることができた。
予選を勝ち上がった国同士のサッカーの試合で、ここまで得点が開くことはとてもレア。当然、された側は屈辱的だ。
ちなみに、日本のネットではこれを「炭鉱スコア」と呼ぶ。
2010年に行なわれたW杯で、北朝鮮がポルトガルに0−7で負け、北朝鮮の選手は帰国後、罰として炭鉱で働かされることを日本人が心配したことから、この名前ができたとか。

中国はこの歴史的な惨敗に大きな衝撃を受け、「日本戦史上最悪の大敗」と表現した中国メディアもあった。
中国代表はこの後、サウジアラビアと戦った。この試合、中国が先制し、サウジアラビアは選手1人が退場して数的優位に立ったにもかかわらず、逆転されて1−2で負けてしまった。
「これはいけるかもですよ!」と期待を持った後に、絶望を味わうとショックが大きい。韓国語ではその状態を「希望拷問」という。中国のサッカーファンが感じたのがまさにこれだ。
一方、日本はバーレーンを相手に5−0で勝利した。
中国の人たちはサッカーについては謙虚で、あるスポーツ記者は「もう日本を手本にするのはやめよう。我々には日本から学ぶ能力がないのだから」と肩を落とした。

 

グーグルに「中国 団体競技」と入力すると、関連ワードに「弱い」「弱い理由」と出てくる。中国は個人競技ではラスボス級だが、団体競技ではスライム級になってしまう。
飛び込み、バドミントン、卓球などでは世界トップクラスかチートレベルの結果を残すのに、サッカー、バスケ、野球などは他国の「狩り場」になることがある。
個と集団のギャップがすごいから、日本では「なんで中国すぐ負けてしまうん?」と疑問に感じる人が多い。

中国が個人競技では強く、団体競技になるとダメダメになってしまう理由はいくつかあるが、よく指摘されるのは「選択と集中」だ。
中国政府は国威発揚のためにも、オリンピックで金メダルを量産することを目標に掲げ、タイパやコスバを考えて、団体よりも個人で行う競技に強化費用を多くかけるようにした。そのため、現在の状況があるという。
この説だと、団体競技は政府に損切りされたことになる。

あと、何人かの中国人から、「性格的な面で中国人は昔から個が強く、協調性がない」という話を聞いた。
中国では1979年から2014年まで一人っ子政策を実施していて、その時代に生まれた男児は「小皇帝」、女児は「小皇女」と呼ばれ、両親や祖父母から「蝶よ花よ」とかわいがられて大切に育てられた。だから、わがままで協調性に欠けた人が多くなり、自分よりチーム全体を優先する考え方を嫌うようになったという。

中国旅行で会った日本語ガイドは、日本人と中国人の国民性の違いをサッカーの試合でこう例えた。

「日本の選手はつねに周囲を見て、効果的なパスをつないで得点に結びつけます。しかし、中国人は違います。パスが重要なことは知っていますが、ボールを受けると自分が活躍することを考えて、ドリブル突破を試みます。でも、実力がないから、ボールを取られてカウンター攻撃を受けてしまうんです」

中国はこれまでサッカーW杯に出場したことがない。
この悲願を達成するため、今回はサッカー強豪国のブラジルやイングランドから、3人の帰化選手を中国代表に加えた。
その結果、歴史的大惨敗をしてしまったため、ある中国人はSNSに、

「弱い弱い中国代表。もともと団結力がなかったのに、文化の違いで完全に崩壊してしまった。もう、全て帰化選手で試合をすればいい」

と投げやりなことを書いていた。

 

 

前回の記事で、イギリスにある「ハドリアヌスの壁」を取り上げた。

ローマ帝国の「ハドリアヌスの長城」・日本の「白河の関」

日本で有名な壁といえば、「宇宙から肉眼で見える唯一の建造物」ともいわれる万里の長城だ。まぁ、「宇宙から〜」というのは都市伝説で、実際にはそんなことはないらしい。
しかし、実際に万里の長城に行ってその上を歩くと、やっぱりスゴイ。よくこんなモノを人間が造ったなと驚嘆&感心する。
ここを案内してくれた中国人ガイドの話は印象的で、今でもおぼえている。

「中国人が力を合わせれば、奇跡を起こすことができます。ほかの国ではできないような素晴らしいことができるのです。誰もが驚く万里の長城はその証拠です」

そんな奇跡を起こすためには、まず中国人が自分よりも全体を優先し、協調性を発揮するという奇跡を起こさないといけない。
これから中国が団体競技で、万里の長城レベルの偉業を達成する日がくるのかどうか。今回のサッカーの試合を見るかぎり、今世紀中はむずかしそう。

 

 

中国 「目次」

中国人ガイドも驚く「日本人の三国志好き」、その背景は?

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【漢字の感じ】蝌蝌啃蜡(コーラ)を“可口可楽”にして大正解

漢字の国・中国を旅行していて、日本人だけが困ること

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。