【対テロ戦争】アメリカの“報復”で、世界はどう変わった?

 

問題Aを解決しようと取り組んだ結果、逆にもっと解決困難な問題Bが発生してしまった。そんな感じに、思っても見ないガッカリな結果になることを「コブラ効果」という。

【コブラ効果】日本・インド・アメリカなどであった事例

ロシアのウクライナ侵攻もコブラ効果の1つ。
ロシアが攻撃を仕掛けた理由は、ウクライナが欧米諸国がつくった軍事同盟「NATO」(北大西洋条約機構)へ加入することを防ぎ、NATOの東方への拡大を防ぐためだった。
そのためにロシアがウクライナへ侵略したを見て、それまで軍事的に中立の立場をとっていたフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟した。
ロシアはNATOの東方拡大を防ごうとしたのに、結果的に、それを加速させたことになる。

 

さて、きょう10月6日は、2001年にアメリカ軍がアフガニスタンへの侵攻を開始した日。
この年の9月11日、アメリカで同時多発テロ事件が発生すると、アメリカはそれを国際テロ組織アルカイダのしわざと断定し、それを支援していたアフガニスタンへ報復攻撃をおこなう。
この「不朽の自由作戦」によって、世界各国のテロ組織と戦うアメリカの「対テロ戦争」が始まった。
これでアメリカはアフガニスタン政権を崩壊させ、さらにアルカイダの最高指導者オサマ・ビンラディンを殺害し、一定の成果を収めることができたが、戦いは終わらなかった。
アメリカは、イラクが大量破壊兵器を保有していて、それがテロリストの手にわたる危険性があると判断し、2003年にイラク戦争を始めてフセイン政権を倒したものの、肝心の大量破壊兵器は見つからなかった。

「テロとの戦争」の人的被害はすさまじく、450万人〜460万人以上が死亡した。(直接的
な死が93万7000人以上、間接的な死が360万人〜370万人)。
これは複数の戦争にまたがる世界的な紛争で、冷戦に取って代わるものだと主張する研究者や政治学者もいる。

the most recent global conflict spanning multiple wars. Some researchers and political scientists have argued that it replaced the Cold War.

War on terror

 

「テロとの戦争」を始めてから、アルカイダよりも規模の大きいイスラーム過激派「ISIL」(アイシル)が組織されたり、テログループが各地に分散し、小さなグループや個人で襲撃するようになって、中東、アフリカ、東南アジアなどに広がってしまった。
米シンクタンク「戦略国際問題研究所」の報告書(2018年)では、活動中のテロ組織の数は1980年以降で最多水準となる67と推計され、戦闘員の数は同時多発テロがあった2001年から270%増加したと指摘している。

そんなことから、AFPの記事はテロとの戦争を「失敗」と言い切った。(2021年9月9日)

20年たった今、ジハード(聖戦)主義組織はその数を増やし、世界各地に拡散。戦いが失敗したことは、否定し得ない事実だ。

「完全な失敗」 9.11から20年、対テロ戦争が残したもの

 

アメリカの支援を受けて新しく成立したアフガニスタン政府はその後、ゲリラ化したタリバンとの戦いに負けて崩壊し、アメリカ軍も2023年にアフガニスタンから撤退した。
知人のアメリカ人の話では、その様子を見て、ベトナム戦争でアメリカ軍が敗北し、サイゴンから撤退する姿と重なって見えた人も多かったという。

アニメ風に言うと、人が最も残酷になる瞬間は悪者になったときではなく、「正義は自分にある」と確信した瞬間だ。正義の立場になって悪を叩きのめすと、理性や倫理のブレーキが効かなくなる。
テロとの戦争を開始してから、全体的に状況は悪化し、テロの問題はより複雑で解決困難になったように見える。
まったくの結局はコブラ効果だ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。