おにぎり(おむすび)の話 その語源と海外での知名度は?

 

今回の話は、いまNHKの連続テレビ小説で話題の「おむすび」。
別名の「おにぎり」は、文字どおりお米をギュッギュッと握って作ることから生まれた、と思っていたら、実はこれは鬼を退治するためのアイテムで、「鬼切り」が「おにぎり」になったという説もあると知ってビックリ。これがゾロの必殺技「鬼斬り」の元ネタか?

「おむすび」の語源は、日本神話に出てくる農業にかかわる神「神産巣日神(カミムスビノカミ)」が米(稲)に宿ると信じられたことにある。
神道には「むすひ(産霊)」という重要な概念があり、この「むすひ」の霊的な働きによって、あらゆる物が生まれると考えられた。息子や娘は「産(む)す」が語源になっていて、もともとは男児なら「産す子」、女児なら「産す女」だった。
国歌の「苔のむすまで」とは、岩に苔が産す(生える)までの長い長い時間を意味する。

話を戻すと、この「むすひ」が神格化されてカミムスビノカミという神様が誕生した。
「創造」を神格化した神(造化の三神)には、ほかに高御産巣日神(たかみむすひのかみ)がいる。
「むすひ(産霊)」に丁寧語の「お」をつけて、おむすびという言葉ができたといわれる。

話を戻すと、この「むすひ」が神格化されてカミムスビノカミという神様が誕生した。「創造」を神格化した神には、ほかに高御産巣日神(たかみむすひのかみ)がいる。
「むすひ(産霊)」に丁寧語の「お」をつけて、おむすびという言葉ができた。
*おむすびの語源にはほかの説もある。

 

ちなみに、おにぎりが三角形をしている理由も神と関係している。
昔の日本人は神様は高い山にいらっしゃって、自分たちを見ている(見守っている)と考えていたから、その形を模したという。
その形にすることで神の力が宿り、それを食すと「聖なる力」を手に入れることができ、健康や長寿になることを願ったのだろう。
三角を「聖なる形」とする考え方は、正月の鏡餅にも表れている。

 

 

ファミリーマートでは「人と人とをむすぶ」という意味で「おむすび」を採用しているが、海外では一般的には「オニギリ」か「ライスボール」か、下手したら「ドーナツ」だ。
米を握って作るから、ライスボールという訳語ができたと思われる。ちなみに、ライスボウルだと、アメリカンフットボールの日本一を決める大会になってしまう。

友人のイギリス人女性は日本人と英国人のハーフで、思春期のころから日本語を勉強していた。10年ほど前のある日、それを兼ねてアニメを見ていると、主人公がおにぎりを食べるシーンが出てきた。しかし、英語の字幕では「doughnut(ドーナツ)」となっていたから、「なんでや?」と疑問に思ったという。
当時のイギリス人が「オニギリ」と聞いても何のことか分からないし、「Rice Ball」なんて食べ物もイギリスにはなくてイメージがしにくい。だから、英語訳をした人がイギリスの食べ物の中で、おにぎりに一番近いのはドーナツだと考えて字幕にそう書いたのだと彼女は推測する。
アニメはスピード重視で、1つの単語に引っかかると置いてけぼりになるから、おにぎりの訳語としてはこれが最適解かもしれない。

 

しかし、時代は変わった。
いまでは世界中に日本料理が広がり、各国に日本のアニメやマンガのファンがいるから、「Onigiri」の知名度も上昇中だ。
日本の食文化に興味がある外国人なら、必ずおにぎりを覚えるし、知り合いのインド人やドイツ人はアニメを見ておにぎりを知って、「あれはどんな味なんだろう?」と興味を持った。
日本に住んでいたり、旅行できたりした外国人も「オニギリ」で通じる。日本にいる外国人が「ライスボール」と言うのを聞いた記憶がない。

ただ、アメリカ人から聞いた話では、日本にまったく興味のないアメリカ人が「オニギリ」と聞いても、どんなものかは想像できないから、「ライスボール」と言ったほうがいい。アメリカ国内ではそんな人のほうが多いらしい。
きっと世界的にそんな感じだ。

 

しかし、時代は変わりつつある。
最近、世界的に権威のある「オックスフォード英語辞典」に新しく23の日本語由来の単語が追加された。
それらは海外で有名になってきている日本語で、日本人として知っておいていいと思うので、ここですべて紹介しよう。

donburi(どんぶり)、hibachi(火鉢)、isekai(異世界)、kagome(籠目)、(以下日本語だけで)唐揚げ、カツ、カツカレー、金継ぎ、切り紙、漫画家、お好み焼き、おもてなし、三徳、しぼり、たこ焼き、特撮、トンカツ、とんかつソース、豚骨、とんこつ(タバコ入れ)、和紙テープ、焼肉、そしてオニギリ。

10年ほど前は無名すぎて「ドーナツ」にされが、いまではオックスフォード英語辞典に掲載されている。オニギリさんの今後の世界での飛躍が期待される。
神道の「むすひ(産霊)」に由来するというおむすびは置いてけぼりらしい。

10年ほど前は知名度がなくて「ドーナツ」にされてしまったが、いまではオックスフォード英語辞典に掲載されるほどビッグになった。オニギリさんの今後の世界での飛躍が期待される。
神道の「むすひ(産霊)」に由来するというおむすびは、きっと国内向けの言葉になる。

 

 

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6 件のコメント

  • > アメリカ人から聞いた話では、日本にまったく興味のないアメリカ人が「オニギリ」と聞いても、どんなものかは想像できないから、「ライスボール」と言ったほうがいい。

    まったく同じ話を私も聞いたことがあります。「ライスボール」と言う単語は、一部アメリカ人の間で結構ポピュラーなのかもしれません。アニメかなんかの影響でしょうか?

  • > どこで忘れたものでしょうか?

    私はすぐに分かりましたよ。tsunamiは、おそらく、食べ物以外でもっとも古くから英語にも取り入れられた単語の一つだと思います。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。