外国人と日本人の「歴史や伝統文化を尊重する感覚」の違い

 

きのう、日本人は怒っていた。

・どれだけのことをしたかわかる?
・早く謝罪動画を出せよ。どんな教育を受けて生きてきたんだよ。
・円安でこんな迷惑な外国人が増えたのは残念。
・二度と日本に来るな。
・なにインスタのアカウントを鍵垢にして逃げてんだよ。

元体操選手でインフルエンサーのチリ人女性が日本を旅行中、自分の身長より少し高い鳥居を見つけると、それに跳びついて懸垂をやり始め、その動画をSNSで公開した。
無知とは罪。
これはすぐに拡散&炎上し、本人は高速でインスタグラムのアカウントに鍵をかけたから、日本人の批判は彼女のYouTubeチャンネルに殺到。
この愚行にはチリ人も怒っていた。

・日本文化を愛するチリ人として、日本人に心から謝罪したい。この人物はまったくわれわれを代表していない。🇨🇱🇯🇵
・彼女は海外でわが国の恥をさらしてくれた。
・お金で教育や尊敬は買えないという良い見本だ!

この「インバウンド公害」に、日本文化を愛するアメリカの世界的なギタリスト、マーティ・フリードマンさんも反応した。「X」で外国人観光客へ向けて、もし日本へ来たら、絶対にこんなことをしないでほしいと訴えた。

「I understand that things in Japan look different from where you live, and you are having fun, but remember that you represent your country by the way you carry yourself in Japan.」
(自分の住むところと日本が違って見え、旅行を楽しむのは分かります。しかし、自分は国を代表しているという自覚を持って日本で行動してください。)

結果的に、これでさらに多くの批判がチリ人女性に集まった。

 

鳥居で懸垂をしたチリ人に日本文化を傷つけようとする意図はなく、彼女はSNSで注目を集め、金儲けにつなげたかっただけだろう。
まったく違う文化圏から来たから、鳥居が何か知らなかっただけで、意味がわかっていればきっとこんな愚行はしなかった。大きな十字架やコーランを見つけても、それで懸垂をしたり、カップラーメンのふたにしたりすることはないはずだ。
しかし、日本人も海外へ行くと、そんな迷惑外国人にかもしれないから、注意が必要だ。と、そんな「どっちもどっち論」で記事を終えてもいいのだけど、経験的にきっとそれは違う。
日本人に比べて、東南アジアの人たちは伝統文化、イスラム教徒の人たちは宗教文化を軽く見る傾向があると感じる。

たとえば、タイ人2人とインドネシア人1人を連れて白川郷へ行った時、こんなことがあった。
合掌造りの家の中を歩いていると、タイ人が梁(はり:水平方向に延びた木材)を見つけ、それに跳びついて体を前後にブラブラ動かし始めた。ほかの2人はそれを面白がって写真を撮ろうとするから、「おいコラ!」とすぐにやめさせて、しばし説教をした。ここは日本の宝で、世界遺産にも登録されていると説明したはずなのに、そこでぶら下がってはいけないと誰も気づかなかったことがちょっと理解できない。
東南アジアから来た人とどこかへ行くと、こんなことが何度かあった。そのたびに彼らと話をすると、伝統や歴史に敬意を払って文化財を保護するという意識が薄く、「日本人とは感覚が違う」と感じた。

バングラデシュ人とインドネシア人のイスラム教徒と日本の古民家に行くと、そこの神棚に御神体として小さな日本刀が置かれていた。
バングラデシュ人がそれを見つけると、何も言わずにそれを手に取って、サムライを意識したポーズを決めて、インドネシア人に写真を撮らせようとする。「おい!」と急いでそれを止めさせ、日本でそんな行為は許されないと説教をした。
話をすると、彼らも日本では、日本の文化や価値観を尊重しなければならないとわかっている。頭ではそう理解しているが、イスラム教では「物に神が宿る」という考え方が禁止されているため、神道の御神体を見ても、それを大切にする気持ちがわいてこないという。それよりも、「SNS映え」が優先してしまう。

 

外国人と一緒にいると、悪意や敵意は1ミリもなく、「遊び心」から日本の文化を傷つけたり、侮辱したりするような行動をとる人がいる。こういった価値観や感覚は「人類みな同じ」ではなく、やっぱり日本人は特に敏感だと思う。

2018年にイタリアの世界遺産、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂で日本人による落書きが発覚し、大騒ぎになった。
批判が殺到したことで、当事者の大学生が自費でイタリアへ行き、関係者に謝罪したり、別の学生は停学処分になったり、高校の野球部の監督が解雇されたりした。
文化財への落書きはどこの国でも禁止されている。しかし、ぶっちゃけ海外ではわりと大目に見られている。だから、イタリアでは「日本の騒ぎは過剰だ」、「解任や停学はやり過ぎだ」と日本人の厳しさを批判的に見る人が多かった。

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この点に関しては、欧米人の常識はイタリア人に近い。
しかし、日本人の感覚では、海外に行って世界遺産に落書きをしたら、立場によってはこれぐらいの罰を受けるのは常識の範囲内にある。
歴史や伝統文化を尊重する感覚については、日本人が世界でもっとも強いとまではいかなくても、まず間違いなく外国人の平均よりは高い。

 

 

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1 個のコメント

  • > 頭ではそう理解しているが、イスラム教では「物に神が宿る」という考え方が禁止されているため、神道の御神体を見ても、それを大切にする気持ちがわいてこないという。それよりも、「SNS映え」が優先してしまう。

    ははは、そんなの言い訳にもなりません。たとえば彼らの目の前でコーランの聖典を粗末に扱ったらどういう反応を示しますか?(確か以前に、コーランを燃やしたイギリス人(だったか?)には暗殺宣言が出されたことを想い出します。)あるいは、 カーバ神殿の柱の前でSNS映えするようピースサインで記念写真を撮影したならどうでしょう?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。