あわや大惨事 韓国の優秀なハングル文字にも「弱点」がある

 

この前の10月9日は、韓国ではハングルの優秀性をたたえるための祝日、ハングルの日だった。
朝鮮国王の世宗が庶民でも読み書きができるように、簡単な文字を臣下に考案させ、それが1446年に「訓民正音」という名で発布された。
ハングルの日はそれを記念する日で、言ってみればハングル文字の誕生日だ。

韓国民はこの民族文字を愛し、誇りに思っていて、その態度は日本人も見習うところがある。ハングルより500年以上前にできた日本固有の文字「かな」をたたえる日があってもいい。

しかし、韓国ではハングル愛が強すぎて、盲目的になってしまうことがある。
国民日報の記事(2011年3月25日)

아리랑 이어 ‘세계서 가장 우수한 글자, 한글 선정’도 루머… 국정교과서, 검증 없이 실린다
(アリランに続き「世界で最も優秀な文字、ハングル選定」もデマ…国定教科書、検証もなく掲載される)

韓国国民なら誰でも知っている民謡のアリランについて、小学校の道徳の教科書に「世界で最も美しい曲の1位に選ばれた」と書かれていたが、それはインターネット上にあったうわさで、事実ではないことが判明した。(こういうミスは日本では考えられない。)
アリランだけでなく、小学生用の教科書でハングルについて、「世界中の言語学者によって、世界で最も優秀な文字と認められた」といった内容の説明があったが、それも間違いであることが発覚。
教科書でこんな誤記が記載されたのは、韓国社会で「ハングルはとても優秀な文字である」という先入観が常識化していたからだ。

ハングルは優秀な文字かもしれないが、完全無欠ではなく、弱点がある。それは同音異義語が分かりにくいということで、よく指摘される例として、「放火」と「防火」がある。
漢字なら秒で判断できるこの言葉は、ハングルではどっちも「방화(バンファ)」になるから、文字だけを見て区別することは不可能。
「はし」という文字だけを見て、その意味が「橋」か「箸」か「端」かを見分けることができないのと同じだ。
でも、韓国人に聞くと、同音異義語は基本的には前後の文脈から意味が判断できるから、とくに問題はないらしい。

 

しかし、15年ほど前にとんでもない出来事が起きたと、韓国メディアのSBSが報じている。(2009.02.17)

“균열 발견된 KTX 침목 15만 개 모두 불량품”
(亀裂が発見されたKTX 枕木、15万個すべてが不良品)

KTXとは韓国の高速鉄道のことで、日本でいう新幹線だ。
KTXの線路で約100キロメートルの区間に15万本以上の枕木が設置されたが、すべて不良品だったことが判明し、韓国で大騒ぎになった。
このままKTXを走らせていたら、大勢の国民の命が危険にさらされていた。

こうなった原因は、担当者が図面にある防水材を「吸収材」と誤解し、製品を納入したことにある。
防水も放水もハングルでは「방수(パンス)」になるため、内部の人間がその文字を見て防水材ではなく、吸水材と解釈し(水を含んで出すからか)、間違った枕木を納入してしまった。

 

ハングルが抱える同音異義語という弱点が、致命的な事故につながるところだった。枕木をしっかりチェックしていないまま、100kmも設置されたことも大問題だ。15万本以上の枕木を外して、新しい枕木を設置するためにはとんでもない時間と費用がかかったはず。
「世界で最も優秀な文字」というデマが教科書に掲載されたこともそうだけど、韓国では重要な事実確認がおろそかになることがある。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。