昨年の10月、パレスチナのガザ地区を支配しているイスラム組織「ハマス」がイスラエルに奇襲攻撃をしかけ、1000人以上を殺害し、200人以上を拉致する。これで地獄の門は開かれた。
イスラエルはすぐに報復攻撃を開始し、戦闘は1年以上も続いてガザ地区だけで死者は4万人を超えたとされる。
*ガザ地区の広さは種子島と同じぐらいで、そこに約200万人が住んでいる。
この後、イスラエル軍はレバノンへ侵攻したり、イランがイスラエルへミサイル攻撃を行ったりして、パレスチナ・イスラエル戦争は拡大を続ける一方で不幸が終わる気配はない。
パレスチナ人(パレスチナに住むアラブ人)にとっての地獄の門は、1948年にイスラエルが建国されたことで開かれた。これによって、70万人以上のパレスチナ人が住むところを失い、難民化した。パレスチナ人はこの悲劇を「ナクバ」(大災厄、大惨事、大破局)と呼ぶ。
イスラエル軍がガザへ侵攻した際、攻撃を避けるために100万人以上の民間人が南部へ移動を強いられ、「第二のナクバ」と呼ばれた。
「世界で最も解決困難な問題」といわれるパレスチナ問題は、直接的にはユダヤ人国家イスラエルが建国されたことで始まったが、その間接的な原因にイギリスの判断ミスがある。
第一次世界大戦中、イギリスはお金がなくなってしまい、戦争を続けることが困難になった。
当時、ヨーロッパで迫害や差別を受けてきたユダヤ人はこの苦しみから解放されるには、自分たちの国家を持つしかないと考え、故郷であるパレスチナの地にそれを建設することを悲願としていた。エルサレムにあるシオンの丘の名前にちなんで、この運動は「シオニズム」と呼ばれる。
イギリスはシオニズムを支援する代わりに、ユダヤ系のロスチャイルド家から戦争の資金援助を求めた。ロスチャイルド家は、19世紀には世界最大の財産を持っていた伝説的な財閥だ。
1917年のきょう11月2日、イギリスの外務大臣バルフォアが、ユダヤ系議員のウォルター・ロスチャイルドに対し、それが明記された書簡を送った。
そのバルフォア宣言には、イギリス政府がユダヤ人の居住地(national home)の建設を支援することが明記されていたのだけど、この「ナショナルホーム」というのはちょっと意味不明。そこがユダヤ人の住むところなのは間違いないが、バルフォア宣言では「ユダヤ人国家」と表現されていなかった。
イギリス政府内にはシオニズムに反対する人たちがいて、「ユダヤ人国家の成立は支援しないが、自治政府は認めてもいい」ということで意見をまとめたから、こんなあいまいな表現になったと思われる。
しかし、アメリカにはこれを「Jewish State(ユダヤ人国家)」と表現するメディアがあったし、ナショナルホームを“国家”と解釈した人も多かった。そもそもイギリスは最初から、ユダヤ人国家の樹立を考えていたという説もあって、「national home」は具体的に何を指すのかはっきりしたことは分からない。
とにかくイギリスはパレスチナの地で、ユダヤ人とアラブ人が共存することは可能と考えていた。しかし、それを実現しようとしたら、両者の対立は予想以上に激しく、イギリスではコントロール不能になって、イギリスはこのやっかいな問題の解決を国連に丸投げする。
国連は1947年「パレスチナ分割決議」を行い、パレスチナの地をユダヤ人国家とアラブ人国家に分けると、それにもとづいて翌1948年にイスラエルが建国された。
するとパレスチナ人や周辺のアラブ人国家が反発し、イスラエルに攻撃をしかけて中東戦争が始まる。
イギリスはバルフォア宣言で、ユダヤ人の「ナショナル・ホーム」の建設を支援すると約束した。しかし、それが現実になると、中東におけるユダヤ人とアラブ人の対立を生み、それが現在に続くパレスチナ問題につながった。
そんなことから、この宣言はパレスチナにおけるイギリスの失敗と、パレスチナで争いが拡大したことの両方についての「原罪(original sin)」になったという評価を受けている。
It has been described as the “original sin” with respect to both Britain’s failure in Palestine and for wider events in Palestine.
パレスチナ問題の最終的な解決は、イギリスが目指したユダヤ人国家とアラブ人国家の共存なんだろうけど、それを実現できる人や国は今のところ地上に存在しない。現状はむしろ反対方向に進んでいる。
1917年11月2日にイギリスがパンドラの箱を開けてから、パレスチナの地ではナクバやテロ攻撃などさまざまな厄災が飛び出した。きのうはイランの最高指導者がイスラエルに対して、「間違いなく壊滅的な報いを受けるだろう」と声明を発表し、今も不幸を生み出し続けている。
2000年前ぶりの帰還:ユダヤ人はイスラエル建国をどう思う?
> 1917年のきょう11月2日、イギリスの外務大臣バルフォアが、ユダヤ系議員のウォルター・ロスチャイルドに対し、それが明記された書簡を送った。
>
> この「ナショナルホーム」というのはちょっと意味不明で、・・・
ん? 文章の繋がりが何か変じゃありませんか?
前の段落と後の段落の間に、「ナショナルホーム」の説明を入れ忘れたのでは?
おっと、すみません。
抜け落ちていた部分がありました。
ご指摘ありがとうございました。