【日本とドイツ】秋のイベントや風景、信仰の違いなど

 

友人のドイツ人(30代・男性)は日本に住んでいたことがあって、メロンパンの大ファンになった後、数年前に母国へ帰国した。先月、今でも日本語を学んでいる彼と話をしたので、今回はその内容を紹介しよう。

 

ーー日本ではもうすぐ11月で、明らかに秋なのに、このところ暖かくて何かおかしい。で、ドイツで秋といえば何があるの?

食べ物でいえば、カボチャ、きのこ、栗がとれるし、イベントでいえば収穫祭、オクトーバーフェストだね。

ーードイツの秋の風物詩はオクトーバーフェストか。あれって、「ビールチャレンジ」のイメージがあるけど、収穫を祝う祭りの意味もあったんだ。

*ドイツで秋といえばビールの季節。
1921年のきょう11月8日、ドイツのビアホールでヒトラーによるクーデター未遂事件が発生し、側近のゲーリングが「諸君! 心配するな。ビールがあるじゃないか」と言った。(ミュンヘン一揆)。

日本でも秋には、初穂を天照大神に捧げて感謝する神嘗祭がある。伊勢神宮が一年で行う行事の中で、いちばん重要なのはあの収穫祭なんだ。

伊勢神宮の「神嘗祭」が日本で最も大事な祭りである理由

私が子どものころに参加した祭りでは、農家の人たちが教会に作物や果物を持ってきて、聖職者といっしょに神に収穫した感謝した。紙で葉っぱの飾りを作って、窓にかけたのは懐かしい思い出だ。
でも、最近のドイツ人はキリスト教を信じない人が増えて、そんなミサも規模が小さくなっているけどね。

ーー日本のお寺や神社で、近所の子どもたちが参加して収穫を祝うというのは聞いたことがない。クリスマスにお坊さんがサンタクロースの格好をして、子どもたちにプレゼントを配ったという話なら聞いたことがある。

なにそのデタラメ。

ーー日本人は宗教におおらかなんだよ。日本では人のために神がいて、キリスト教では神のために人がいる気がする。
数年前に、お坊さんがクリスマスに、「仏式クリスマス法要」でサンタ菩薩を供養するという動画をアップしたら、ネットで注目されて80万回以上の再生数をゲットした。「のうまくさんまんだ ぼだなん メリクリそわか」と真言(?)を唱えているのは「やり過ぎじゃね?」とは思ったけど。

 

ーー教会の中で、十字架の前にカボチャやニンジン、ジャガイモが並んでいるというが、ドイツの秋の光景か。
「秋」という漢字の左側は穀物のことで、秋には収穫した穀物を干して乾かすから、「火」が使われているという説がある。田んぼで刈り取った稲を天日干ししているのは、まさに日本の秋の光景。

ドイツで収穫祭は「Erntedankfest」と言う。
「Ernte」は収穫、「Dank」は感謝、そして「Fest(フェスト)」はオクトーバーフェストと同じで「祭り」という意味。アルファベットと違って、漢字にはそれぞれ意味があって情景が思い浮かぶから興味深い。

 

ーーこの前、近所のスーパーへ行ったら、焼き芋を売っていた。日本でサツマイモは秋の味覚で、あれを見ると「秋がきたな〜」って感じる。

サツマイモか。ドイツでは昔は見なかったけど、最近サツマイモの人気が出てきた。

ーーそういえば、ドイツというとジャガイモが有名だけど、サツマイモのイメージはなかった。

歴史的には、アメリカ大陸から最初に伝わったのはスイートポテトで、ジャガイモは後なんだけどね。サツマイモは熱帯で育つ作物だから、ヨーロッパの風土は合っていなかったみたい。

ーー日本でもサツマイモは安土桃山時代のころに伝わって、わりと暖かい薩摩で定着したと言われている。

*15世紀末にコロンブスが新大陸でスイートポテトを見つけて、ヨーロッパに持ち帰ったが、あまり普及しなかった。でも、18世紀に伝わったジャガイモはヨーロッパの風土に合っていたから、広く栽培されるようになる。
最初は甘いイモ(サツマイモ)を「ポテト」と呼んでいたけど、甘くないジャガイモが一般的になるとそれが「ポテト」と呼ばれるようになり、甘いイモが「スイートポテト」になった。(サツマイモ

 

愛知県にある豊川稲荷
お寺の前に鳥居があって、「豊川稲荷」と呼ばれているけれど、ここはお寺。

 

ーーカトリックとプロテスタントって昔は仲が最悪だったよね。
16世紀には三十年戦争があって、数百万人が死んだ。今はその違いに関係なく、その収穫祭をするの?

収穫祭はカトリックでもエバンジェリッシュ(プロテスタント系)でもやるよ。って、三十年戦争っていつの話だよ。

ーーじゃあ、カトリックとプロテスタントの信者が同じ教会で、一緒に収穫祭を祝うこともある?

いや、それは聞いたことがない。仲は悪くないけど、基本的には別々だから。
私はプロテスタントの信者だったけど、カトリックの教会には友人の結婚式で一度しか入ったことがない。

ーー日本人の信仰は古代から、神道と仏教がごちゃ混ぜの神仏習合が基本だから、「人々の安全や健康な生活のため」という大義があれば、わりと簡単に宗教の違いを超えられる。
新型コロナが流行した時はカトリック、仏教、神道の聖職者が東大寺に集まって、終息を願って毎日祈りを捧げていた。違う宗教や宗派の聖職者7人が大仏殿の前に並んでいる光景は、ネットで「アベンジャーズじゃん!」と話題になったもんだ。
思えば、あれは本当に日本らしい光景だ。

そうそう。日本人はお寺でも神社でも平気でお参りに行くし、宗教の違いを気にしない。

ーー気がつかない、と言ったほうが実態に近いかも。これはドイツにはない光景だろうね。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。