日本人が韓国へ行ったらウォン、ドイツへ行ったらユーロ、エロマンガ島へ行ったらバツで買い物をすることになる。通貨単位は国によって違うから、それは仕方がないとしても、日常生活で使う基本的な単位が異なると割とややこしい。
紀元前221年、秦の始皇帝が周辺諸国を攻め滅ぼして天下統一を果たした後、それぞれの国にあった長さ(度)・体積(量)・重さ(衡)の基準も統一した。それをしなかったら、国民はいちいち換算しなければならず、不便で仕方ない。
さて、きのう12月16日、ジョージ州に住んでいるアメリカ人女性と次のような会話をかわした。
ーーこんばんは。
おはようございます。
ーーいま日本では夜の9時30分だから、そっちは朝の7時30分か。
そう。さっき起きたばっかりで、まだ頭がボンヤリしている。
ーーそういうときは窓を開けて、新鮮な空気を吸うといいと思うよ。
ところで、季節はもう冬になったけど、そっちの気温は今どんな感じ?
えっと、45度。
ーーは?
あ、日本では摂氏を使っているんだった。それだと7度。ごめん、まだ脳が寝ているみたい。
ーービックリした。
45度って、それはインドの中でも、特に暑いと言われるラジャスタン州の夏の最高気温のレベルじゃないか。ジョージア州で12月にそんな気温になったら、世界が終わる予兆だね。
アメリカでは華氏を使っているから、45度になるのか。
メンゴメンゴ。
こんな感じに(どんな?)、日本では摂氏で温度を表し、「℃」という記号を使う。
これは、18世紀に摂氏温度を提唱したスウェーデンの学者セルシウス(Celsius)の名前に由来する。セルシウスの名前を中国語に訳した「摂爾修斯」からセ氏と「℃」が使われるようになった。
一方、華氏(degree Fahrenheit)は、18世紀にドイツの学者ファーレンハイトが提唱したもの。個人的にはビッテンフェルトの方が好きなのだけど、とにかくファーレンハイトを中国語で表すと「華倫海特」になり、日本ではそれが華氏と表現されるようになった。記号は「°F」。
摂氏では水が氷になる温度が0℃、沸騰する温度が100℃になっていて、華氏ではその温度はそれぞれ32℉、212℉となっている。さらに、摂氏で温度が1℃上がると華氏では1.8度上がることになるから、32に摂氏の18倍を足すと華氏の温度になる。
ということで摂氏7℃なら、32+12.6で華氏44.6°Fとなって、おそらく99%のアメリカ人はそれを「45度」と言う。
ラジャスタン州の宿
風が入りやすく、開放的なつくりになっている。
数年前、アメリカ人を助手席に乗せてドライブをしていて、目的地まであとどのくらい距離があるか聞くと、彼が「ファイブ(5)」と言うのを聞き取れた。
でも、何かおかしい。なかなか目的地が見つからなくて、「もう5キロは越えているはず。途中で道を間違ったか?」とあせって、もう一度彼にたずねると、「あっ。さっき、マイルで言ってたわ。メンゴメンゴ」と言って謎が解けた。
「1マイル=1.6093440000391キロメートル」だから、5マイルは約8キロメートルだ。だから、アメリカ人に道路の最高速度を聞いて、「アメリカではそんなにスピードを出していいのか!」と正しくない衝撃を受けた日本人もいる。
ほかにも身長190cm超えのアメリカ人に靴のサイズをたずねたら、「12」と言うから、「ちっさ! それは、清王朝の中国で女性が足を布で縛って小さくしていた纏足レベルじゃないか!」と驚いたら、12インチは30センチを超えていたでござる。
男性靴の場合、センチで表示されている「10の位」と「1の位」を合計すれば、アメリカのインチになる。たとえば27cmの靴なら、2と7を足すから「9インチ」。
中国の天下人・秦の始皇帝を日本の偉人に“換算”すると、それは豊臣秀吉になる。
彼は信長の野望を引き継ぎ、1590年に天下統一を実現すると、始皇帝と同じように長さや量の単位を統一した。
アメリカ人と話をしていると、慣れないうちは単位の違いでビックリさせられる。でも、日米を統一する英雄が現れる可能性はゼロだから、スマホで換算するしかない。
> 摂氏で温度が1℃上がると、華氏では1.8度上がることになるから、32に摂氏の188倍の温度を足すと華氏になる。
??? これでは何が何だか。「摂氏を1.8倍して32を足すと華氏になる」の方がいいでしょう。
華氏100℉は人間の体温を元に、華氏0℉(ー32℃)はドイツの極寒の気温を元に決めたのが始まりだそうです。アメリカ北部やカナダの人が言うには、「華氏温度は体温からどれだけ離れているかを直感的に把握しやすい、それで服装を選ぶのが容易になる」のだとか。彼らは間違った服装で外出すれば凍死するかもしれないので無理もないですけど。
メートル法を考案したのは18世紀末のフランス革命政府であり、日本は明治18年にメートル条約に加盟したのが最初です。もしもメートル法を導入しなかったら、これほど急激な工業社会への発展はなし得なかったでしょう。
今でも北米の日常生活、及び航空、海軍、映画用機材、野球などアメリカが圧倒している分野では、ヤード・ポンド法(英語では帝国単位 Imperial Unit、大英帝国の単位)が使われています。華氏温度と同様に体感的に決められた単位が多く(例えばフィート[単数形フット]など)、12インチ=1フット、3フィート=1ヤード、1ポンド=16オンス、1ガロン=4クォート、のように12進法、10進法、その他いろいろな規則が入り乱れていて、もしも日本が一度にこんな単位系を導入していたら一般国民への工業知識の普及はとても無理だったと思います。
日本人は、日常的にメートル法を使っているのでその便利さがかえって分かりません。たとえば、水1リットル(=1辺が10cmの立方体)の重さは1kg、鉄塊だったら比重を掛けて7.9kgです。これをヤード・ポンド法で表すとどんな風になるか、覚えるのも計算するのも結果を書くのにも10倍の手間がかかりますよ。
>華氏100℉は人間の体温を元に、華氏0℉(ー32℃)はドイツの極寒の気温を元に決めたのが始まりだそうです〜
なるほど! 地域にあった単位は必要ですね。