“世界一の火葬大国”で、宮城がイスラム土葬墓地に前向きな理由

 

SNSを見ていたら、興味深い投稿があった。
あるイタリア人の神父が戦後すぐの日本に派遣されることになって、母親が泣き出したという。
この母親は息子を溺愛していたのか、それともイタリア人にとって、日本に住むことは過酷な罰ゲームだったのか?

母親も、日本人にキリスト教を伝えるという仕事の素晴らしさは理解できる。しかし、キリスト教の文化圏にあるイタリアと仏教圏の日本では埋葬法が違って、日本では火葬が一般的。だから、もし息子が日本で亡くなって火葬されたら、肉体を失って彼は天国に行けなくなってしまう。
母親としては、息子がそうなることに耐えられなかった。

ある日本人が知り合いのイタリア人神父からそんな思い出話を聞いて、とても印象的だったのでSNSに投稿したらしい。
キリスト教の影響が強い国で50年以上前なら、遺体はほとんど土葬されていて、火葬はなかったか、あっても例外的だったはず。現在の欧米では、土地が足りなくなっているから火葬も増えているが、土葬も常識的に行われている。

 

「肉体が残っていないと復活することができず、天国へ行けなくなる」という事情はイスラム教徒も同じ。だから、彼らも死んだ後、遺体は土葬されることになっている。
しかし、神父のお母さんが泣いたように、日本は現在でも火葬が主流で、今それについてAIに質問したら、こんな答えが返ってきた。

「火葬と土葬の比率は、火葬が99.97%、土葬が0.03%程度です。日本は世界一の火葬大国といわれています」

ネットを見ていると、「日本で土葬は禁止されている」と誤解している人がいるけれど、実際にはそんなことはなく、土葬は合法だ。しかし、それを選ぶ人の割合は、銀行の普通預金の利息よりも低い。
日本国内にいる数十万のイスラム教徒に対して、土葬できるスペースはあまりに小さいため、いま彼らは土葬できる墓地を建設しようとしている。ただ、それには周辺住民の理解が必要不可欠だから、計画はなかなか前に進まない。

日本に住むイスラム教徒の「土葬できない!」問題をどうする?

イスラム教徒にとって、これはとても重要で、すぐにでも解決しなければならない問題になっている。

 

日本では、古墳時代には遺体は土葬されていたが、6世紀に仏教を受け入れたころから火葬に変わっていった。といっても、それは貴族などの上級国民の話で、庶民は相変わらず土葬が一般的だった。

 

いま日本では少子高齢化が進んでいて、このままでは労働者不足が懸念されている。地方では特にそれが深刻であるため、宮城ではこんな動きがあるらしい。

朝日新聞の記事(2024/12/21)

宮城県、土葬墓地を検討 インドネシア人材呼び込みのため 知事表明

インドネシア人を中心に、労働力としてイスラム教徒の外国人を呼び込むために、宮城県の村井知事が県内に土葬墓地をつくる検討を始めた。
県は昨年、インドネシア政府と合意を結んで、これから技能実習生などがやって来ることになっているため、イスラム教徒が安心して暮らせる環境を整えることにしたという。

しかし、朝日新聞の記事でも成功のカギとして「住民の合意を得られるか」が指摘されている。日本は「世界一の火葬大国」だから、土葬墓地の建設には高いハードルがある。その実現には、国民の広い理解と支持が必要不可欠だ。
県民に大きなメリットがあって、それをうまく伝えれば、これは成功するかもしれない。

 

 

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【文明の衝突】日本の盆踊りがイスラム教に“反する”理由

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2 件のコメント

  • この記事、決定的な間違いがあります。
    > 神父のお母さんが泣いたように、日本は現在でも土葬が主流で、・・・
    ⇒ 日本は、現在でも「火葬」が主流で・・・
    と言いたかったのでは?

    > 「日本で土葬は禁止されている」と誤解している人がいるけれど、実際にはそんなことはなく、土葬は合法だ。
    これも間違いと言えば間違い。全国レベルの法律(つまり国会決議を経て決まる法令)では禁止されていませんが、地方自治体の条例では実質的に禁止しているところもあります。地方自治体の条例も「法律」の一部です。日本在住の、イスラム教徒やキリスト教徒のように土葬を希望する人々に対してあまり希望的観測を煽るような記事を示すのは如何なものですかね?

  • 火葬が土葬に間違っていましたね。ご指摘ありがとうございました。

    日本で土葬は合法ですが、対応は地方によって違います。宮城県はそのハードルはすでにクリアしています。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。