日本の魅力や不満など、ウイグル族の中国人から聞いた話

 

中華人民共和国はとても謙虚な国で、「中国」と控えめに名乗っているけれど、大きさだけなら世界第4位の大国だ。(1位はロシア、2位はカナダ、3位はアメリカ)
国内でもっとも西にある新疆(しんきょう)ウイグル自治区だけで、日本とほぼ同じ面積がある。そこは本当に西の端に位置していて、中央アジアのキリギスやタジキスタンと接している。
最近、そんな地域にあるカシュガル市(喀什市)から、日本へやって来た中国人と話をした。

日本人が「中国人」と聞いて思い浮かべるのは、人口の 90%を占める漢民族で、50以上の民族が暮らす多民族国家である中国には、残りの 10%未満にさまざまな少数民族がいる。
今回話を聞いたのは、新疆で生まれ育ったトルコ系のウイグル族だ。ウイグル族はイスラム教徒が多く、独自のウイグル語を話しているため、文化的には漢民族とはかなり違う。
では、そんな日本では珍しい中国人(20代の男性)から聞いた話を紹介しよう。
ちなみに、彼は出身地のカシュガルを「カシ」と呼んでいたので、ここではそれを使うことにする。

 

・日本に行くまでが長かった。
まず、カシの空港から飛行機に乗って、4時間以上かかって西安に着いた。西安から上海までのフライトは約2時間半、上海から名古屋までの時間もそれと同じくらい。上海に着いた時には疲れていて、機内で寝てたらすぐに日本に到着した。
国内の移動で7割以上を使っているから、改めて中国の広さを感じたね。

・新疆には中央にタクラマカン砂漠(中国語で「塔克拉瑪干砂漠」)がある。これはサハラ砂漠に次いで世界で2番目に大きい。あそこは外から来た観光客が行く場所で、地元の人間が砂漠を目的に行くことはないね。

*タクラマカンは中国語で「塔克拉瑪干」と表記される。タクラマカン砂漠の由来には諸説あるが、「一度入ったら二度と出られない場所」という意味があるという。とにかく「死の砂漠」だ。その意味では青木ヶ原樹海と似ている。

 

・カシに比べたら、日本はきれいで便利で生活はとても快適。わたしにとってはそれが魅力で、今のところ不満を感じるのは果物。
新疆ではメロンやスイカ、ナシ、ブドウなどの果物がとてもおいしい。一年を通じて乾燥していて、寒暖差が大きいから、果実の中においしさがギュッと濃縮されている。
日本の果物も味は良いけど、私は新疆のものが上だと思う。それより、日本では果物の値段がすっごく高くて驚いた。こんなに果物を食べられなくなったのは人生で初めてだ。

*カシの7月の平均気温は 25.6度、1月はマイナス 4.8度と大きな気温差がある。
彼は「メロン」と言ったが、正確には「ハミ瓜」のことらしい。
飴ちゃんやケーキなどの「菓子」という言葉は果物に由来する。古代の日本ではフルーツや木の実などを「くだもの」と呼び、漢字が伝わるとそれを「菓子」や「果子」と表記するようになった。だから、本来の意味でのお菓子の味なら、日本のものよりも新疆の方がおいしいかもしれない。

 

・新疆では羊肉の串焼きが有名で、中国の各地で食べることができる。
漢民族と違ってウイグル族にはイスラム教徒が多いから、豚肉を食べる文化がない。だから、羊肉の食文化が発達した。
日本では羊の肉を食べる習慣があまりなくて、好物の羊肉が簡単に手に入らないのがつらい。

・ウイグル族には、昔は狼を崇拝する信仰があった。でも、今はイスラム教を信じる人が多い。

*新疆はシルクロード上にあり、古代には仏教文化が栄えていた。10世紀ごろからイスラム教が浸透し、現在ではそれが支配的になっている。
ネットで調べると、ウイグル族の間で「狼信仰」は今も文化として残っているらしい。漢民族の象徴が龍なら、ウイグル族の象徴は狼だ。
日本人のシンボル的な動物といえば、もちろんカッパだ。しらんけど。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。