中国人さん、日本語の“エロゼリフ”で欧米を公式批判してしまう

 

「ところで兄ちゃん。『身体が火照る』って……なんか響きがいやらしいと思わない!?」
「思わねえよ!」
「だって『身体』が『ホテル』なんだよ!?」

アニメ『化物語シリーズ』で卑猥(ひわい)な方向へもって行こうとする妹の阿良々木火憐(かれん)に、主人公の阿良々木暦(あららぎ こよみ)が抵抗するシーンがある。
この妹はちょっとド変態な二次元キャラだからいいとして、中国の総領事館が公式にこんなことを言ったから日本人が食いついた。

「口が嫌だと言っても、体は正直なものだ」

日本人ならエロマンガやエロゲーのセリフで、この上なく下品なおっさんが若い女性に言うシーンが思い浮かぶのでは?
中華人民共和国の大阪総領事館が2021年に、ツイートでこんな発言をして物議をかもす。
これは「欧米各国は口が嫌だと言っても、体は正直なものだ」という文だから、おびえる女性ではなく、西側諸国に向けられたセリフだということが分かる。
このとき欧米はウイグル自治区に住む少数民族の人権問題を取り上げて、中国政府を厳しく批判していた。
でも、そんな状況にもかかわらず、中国のEUに対する輸出は前年の同じ時期に比べて131%、EUを脱退したイギリスでも192.2%増加していたという。
欧米は人権問題で中国を「中傷」するが、裏ではカネもうけをしている。
そんな二面性をついて「口が嫌だと言っても、体は正直なものだ」と中国の総領事館は言ったらしい。たぶんドヤ顔で。

 

中国語には「口嫌体正直」という表現があって、中国版ウィキベテアと言われる『百度百科』にもその項目が作られている。
口では嘘をついて、行動は心(本当の考え)を表しているといった意味らしい。
それをそのまま日本語にしたから、日本人の誤解を招く文になってしまった。

そもそもなんで、日本のエロゲみたいな表現が中国語にあったのか?
その起源をたどると、2~30年ほど前に中国へ入り込んだ日本のエロ漫画やエロゲーにいきつく。
これが元ネタになって「口嫌体正直」という表現が中国社会で使われ始めると、いまでは当初の アダルトコンテンツから完全に離れて、言ってることとやっていることが違うという意味で一般的に使われている。
「口嫌体正直」は主に若者のスラングになっているらしい。
上のツイートをしたのも、中国の若手エリート外交官と思われる。
これは日本人の感覚からすると、欧米の不都合な真実を暴いた中国が「エロゼリフ」を使って公式批判したようなもの。
だからそのギャップ萌え(?)に、ネットの反応を見るとむしろ中国の好感度が上がった。

・これだから中国は侮れない
・本来のエロい意味が薄くなって古事成語みたいになってるのなw
・中国語の文覚えた
勉強になったわ
・下半身親日
・中国さんかわいい
・エロゲが世界の共通語ってなんかヤダ

こんな反響はまったくの予想外だったようで、ツイートは高速で削除された。
「尖閣は中国のもの、蒼井そらは世界のもの」という言葉のある国の人でしか起こせないミスで、日本人としては日中の意外なつながりを再認識できて、さらにほっこりした。
ただ、アニメキャラが「身体がホテル」と言うのはいいとして、領事館の公式アカウントで「口が嫌だと言っても、体は正直なものだ」と言ってしまった外交官のその後が気になる。
更迭されて、どこかへ逝ってしまったということになってないといいのだけど。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。